【MOVIEブログ】沖縄国際映画祭(下)

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桜坂劇場
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24日、日曜日。7時半起床で、午前中はまたホテルでパソコン仕事。外を見ると、今日は雨だ…。毎年この時期は天気があまり良くない印象があるので、やはり昨日は奇跡的に幸運だったということかな。とにかく最高のオープニング日でした。

11時半にホテルを出て、今日は作品を観るべく上映へ。で、今年の沖縄国際映画祭の最大の驚きのひとつが、(一部旧作企画を除き)作品上映が全て無料になったこと! 入場料が、タダです、タダ。昔風に言うと、ロハ。

過去4年、僕もこのブログで指摘してきていることだけれど、沖縄映画祭は、人気タレントが登場する野外イベントは人が殺到するけれど、映画が上映される劇場への入りはかなり厳しい、という傾向が続いていました。吉本芸人目当てで集まった人々に、映画(祭)を好きになってもらい、映画人口の裾野拡大を狙うという、とても重要な試みの行方を見届けたいがために、僕は毎年沖縄映画祭に足を運んでいるわけですが、映画祭という場に人は集まるけど、肝心の映画をなかなか観てくれないというのが去年まででした。

入場料無料が、この状況に対する映画祭の対応策なのかどうかは、僕は直接聞いていないので分からないです。上記「試み」云々も、僕の勝手な解釈だし、この映画祭の運営に関する主催者の実際の意図も僕は知りません。なので、イベント目当てに訪れる人々をいかにして上映にも来てもらうか? という問いに対する答えが「映画の入場無料」という「禁じ手」だったのだ、というのはあくまで僕の勝手な(迷惑な)想像であります。

いや、「禁じ手」とは言葉が強いですかね。「劇薬」とか。一緒か。とにかく、若い人たちに、「タダで映画を見てみたら面白いから、次回はお金を払ってでも映画を見てみよう」と思ってもらえるか、それとも「タダでないなら映画は見ない」と思われてしまうのか…。沖縄国際映画祭は、またまた大胆な試みに踏み切ったわけです。

で、結論から言うと、僕が受けた印象は、「去年より劇場にいるお客さんが確実に多い」です。日曜日の1日だけの印象ですが、コンベンション・センターのホールでこんなにお客さんが入っている状態を過去4年間で1度も見たことがない。ということは、チケット無料の「即効性」はあった、ということがまずは言えるのだと思います。当たり前だ、との意見もあるかもしれませんが、僕は密かに、無料でも人が来なかったら映画は終わりじゃないかとさえ思っていたので、ともかく安堵はしました。

一方で色々なことを考えさせられたのも確かで、その辺りのことは今後整理していきたいです。ともかく、5回目の節目だから、沖縄映画祭通いも今年で終わりにしようかと思っていたのに、これではやはり来年もまた来ることになりそうだ!

さて、観たのは、まずは国際通り近くにある桜坂劇場で、コンペティション出品の台湾映画。会場の桜坂劇場、本当に素晴らしく雰囲気の良い劇場ですね。グッズ販売コーナーやカフェがあるロビーに流れる空気がとても快適で、ここで一日中過ごしたくなる。なんて素敵な映画館!(写真)

続いて、宜野湾のコンベンション・センターに移動して、「地域発信型プロジェクト」と題された部門の短編を連続して鑑賞。この部門は、文字通り地域性を反映した短編を特集する部門で、吉本興業のタレントを役者に起用しつつ、気鋭の若手監督がメガホンを取るというなかなかナイスな企画です。

地域性のアピール、吉本タレントの起用、そして上映時間の上限は35分、という3重の縛りに対して、いかに作家性を打ち出していくかが監督たちの腕の見せ所になるはずで、少なくとも僕はそういう見方で臨みました。結果、全部で11本あるこの部門のうち、4本しか見ることが出来なかったけれど、その4本はいずれも上々の出来でありました。

静岡県河津町を舞台にした『ハアドボイルド漫談師 大風呂屋エイジ~河津桜よ永遠に~』は、さむい芸を繰り返す漫談師と、彼をサポートする羽目になった地元の観光振興課の職員たちとの交流を描くコメディー・ドラマ。映画の間の取り方がとても上手いので、くくっと笑えるし、観光課の職員役に、「知っている人は誰でも知っているけど知らない人は誰も知らない」インディー界のスター、前野朋哉君が扮しているところで、僕はもうオーケー。

そして、何と言っても前野さんの妹役の古泉葵さんという女優さんが、光り輝く素晴らしさ。僕は市川美日子さんの大ファンなのですが、その市川さんと美月ありささんを足したような魅力で、ちょっと不機嫌そうな表情がスクリーンにとてもよく映える。彼女を発見できたことだけでもオキナワに来た甲斐があった! 監督は、河原康臣さん。演出のテンポがいいし、女優の魅力を撮れる監督はそれだけで只者でないはず。追いかけます。

『歓待』で東京国際映画祭とも深い縁が出来た深田晃司監督もこの企画に参加していて、製作されたのは三重県いなべ市を舞台にした『いなべ』。

さすが深田監督というべきか、見事に観光地も名産品も何も出てこない潔さ。人間の命のあり方を見つめる真摯なドラマであり、短期間で企画製作されたとは思えない深みを備えた作品でした。内容についてはあまり書けないのだけど、映画的に甘美なショットが随所にあり、監督の個性が存分に発揮された「作家映画」と呼んで差支えないでしょう。このプロジェクトでここまで冒険できるのはすごい。

後から監督に聞いたところによると、いなべ市の方々とは、観光地も名産品も出てこなくて構わない、とにかく映画の出来を大事にしよう、ということで事前に意見が一致していたそうです。見事ですね。映画で町おこしをするとなると、いろいろと展開したいのが地元の本音でしょうから、潔く芸術性を優先することは並みの度量ではできないはず。そんないなべ市であるなら、僕もいつか行ってみようと思わされます。

さて、19時10分からもう1本長編を観て(これも僕が立ち会った中では最高に近い大入り)、あっという間に僕の沖縄は終了。地域発信型プロジェクト関係者たちが飲んでいる場に合流して、深田監督や戸山プロデューサーなどと団らんし、22時半くらいにお開き。

明けて、26日月曜日。5時起床で8時の便で羽田へ。羽田から職場に直行。本日、日中は多少ボーっとしてしまったけれど、ともかく「ジャカルタ⇒香港⇒沖縄」と続いた春のミニ・アジアン・ツアーも無事に終了!
《text:Yoshihiko Yatabe》
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