『めめめのくらげ』村上隆監督インタビュー 創作のヒントは「勘違いから起こる発見」

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『めめめのくらげ』村上隆監督
  • 『めめめのくらげ』村上隆監督
  • 『めめめのくらげ』 -(C) Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
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  • 村上隆『めめめのくらげ』×初音ミク「Last Night,Good Night(Re :Dialed)」-(C) Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
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「“村上監督”って言われるとすごく違和感があるんです」。そう語るのは自身初の映画作品『めめめのくらげ』の公開が今週末に控える、村上隆。2008年には米「TIME」紙の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、2010年にはヴェルサイユ宮殿での個展も成し遂げた“世界の村上”が、ここにきて“映画”という表現方法を選んだのは何故なのか? 創作の原点から映画に込めた想いまでたっぷりと話を聞いた。

東日本大震災後の日本を舞台に、少年・正志と大人たちには決して見えない不思議な生物“ふれんど”との交流を、渾身のビジュアルで描き出す本作。村上さんがデザインした数多くの“ふれんど”の中でも一際キュートなのが主人公・正志のふれんどとなる“くらげ坊”だ。

しかし、村上監督は「最初、くらげ坊は『ゲゲゲの鬼太郎』のネズミ男みたいに身長180センチくらいのすごく背の高い怪物だったんですよ」と衝撃の事実を明かす。「初めのうちはアニメーションで作っていたんですけど、ふんどしをして修行僧のような恰好をしていたので、スタッフの間でもさすがに気持ち悪いという話になって、あの可愛いキャラクターになりました。最初は気味が悪い存在として“くらげ坊”を作っていたんです」。

当初のコンセプトよりも、はるかにキュートな姿となって登場する“くらげ坊”。そもそもなぜ“くらげ”? と思うところだが、村上さんの長きにわたるテーマがくらげ坊誕生のきっかけとなったらしい。

「僕の作品のテーマってずっと“勘違いから起こる発見”なんです。つげ義春さんの『ねじ式』というマンガの中に『メメクラゲ』というセリフがあるんですが、つげさん本人は鉛筆で『××クラゲ』って書いたんですよ。それを編集者が写植屋さんに『メメ』って打ってしまったんですね。この“勘違いが起こす偶発的なもの”に注目して、目がいっぱいある絵画作品を作り、それに“めめくらげ”というタイトルを付けたんです。向こうの人に意味を聞かれたので“目と目のクラゲ”と伝えたら『JELLY FISH EYES』と付けてくれて。直訳なんですけど、専門家のアート関係者からは、『シュールレアルな言葉だね』と評判が良かった。“シュールレアルな現実とこの世の架け橋”が映画のテーマだったので、ジブリ風に“の”を足して『めめめのくらげ』となりました」。

タイトル一つをとっても、確固たる信念や思想が込められていることが伺える。それはもちろん登場人物やストーリーにおいても言えることであり、「この作品に登場する大人たちってみんな無能なんですよね」と村上さんは説明する。

「この映画の大人たちは、みんなどんどん失敗しているんです。でもバカな大人を見てるから子どもたちがバカになるかって言うとそんなことはなくて、子どもは自分たちで気が付き、自分たちで行動し始めることができるという対比を作ろうと思ったんです。僕たち大人にとっては『ということで、僕ら“オワコン(終わったコンテンツ)”だけどそれでいいのかな?』っていう問いかけを投げていて、子どもたちには『そういった大人がいても、自分たちで立ち上がれば何か変わるかもしれないんだぜ』と無責任ですがバトンを渡しているんです」。

そして、あえて舞台を震災後にしたことについてはこう述懐する。
「日本の社会は、震災前はあらゆる意味で表面を撫でつけることに成功していたと思うんですよね。でも、震災によって表層部分が全部剥がれ落ちて、日本の“生”の部分が出てきてしまった。それが日本に住んでる日本人が、『私たちはいま日本に住んでいる』ということを理解した瞬間だったと思うんです。“ボーイ・ミーツ・ガール”でコミュニケーション不全というものがあり、最終的にはそのコミュニケーション不全を補う役目として異世界の生物を真ん中に挟むという構想はでき上がっていたので、生の日本人同士が理解できなかったり、社会をこじ開けなければ未来がないとか、悲しいことですがそういうメッセージを共有できる社会になってしまった“現在”を舞台にしているんです」。

明確なコンセプトを基に作り上げられているため、撮影もさぞやスムーズにいったのでは…? と思いきや、実際は同じ創作活動ながら“映画監督”という初めての体験に苦労も多かったそう。

「自分が予想していたプロセスよりも、映画を作るプロセスがはるかに多くてビックリしました」。そして自身が“監督”と呼ばれることには違和感を感じると続けた。「僕は(スティーヴン・)スピルバーグのようにいろんなジャンルが撮れる監督ではないですしね。自分が立ち上げる企画を最後まで見せる媒体として映画がある。メッセージを伝える媒体として映画を使うっていう状況なんです」。

そして、村上さんは映画を“見世物小屋の延長線上”と独自の表現で説明する。
「芸術作品で、絵画とか彫刻というのは作者が死んだ後に見せるメディアだと僕は思っています。美術館で見てるピカソでもマティスでも、みんな死んでますからね。死者を見るメディアとして現代芸術はあるんですが、じゃあ映画ってなんだろうって言ったときに僕はやっぱり“見世物小屋”だと思っているんです。なので、その見世物小屋を貫徹している人、ピーター・ジャクソンやジェームズ・キャメロンたちを僕は尊敬しているんです」。

すでに続編の製作も進んでいるという本作。果たして続編でも“くらげ坊”を始めとするキャラクターたちは登場するのだろうか? そう尋ねたところ、続編について少しだけ詳細を明かしてくれた。「メインキャストはほぼ全員登場します。設定はこの2年後くらい。生きていたんだなぁとか、ああこいつらまだこういう行動するんだっていう、お客さん側で出てきた疑問を続編で一個一個答えていけるんじゃないかな」。
《text:cinemacafe.net》

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