【MOVIEブログ】カンヌ余波の雑感

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カンヌの余波が何となくまだ持続していて、映画業界の方にお会いすると、どの作品がどの会社に売れたらしい、などの噂で盛り上がったりします。

日本ではどうしても是枝さんの話でもちきりで、僕も総括記事をある媒体に寄せたところ、是枝さんに対する記述を増やしてほしいとの依頼を受け、書き直したりしていました。受賞した作品の製作国が、自国の作品について盛り上がるのは当然で、それはオリンピックでもサッカーW杯でも一緒なわけで、どの国でも自分のことに一番興味があるのは当たり前です。

が、日本のサッカーファンが、自国チームのW杯行き決定を歓びながらも「どうやらバルセロナはすごいらしい」とか「今年はドイツが強い」などとサッカー競技における世界水準の高さに自覚的であるのに比べると、日本の映画界の海外に対する興味は、いささか低いように感じられます。

月曜から本日までの3日間に渡り、某新聞に「世界における日本映画」と題した総括記事が連載されており、それは今年のカンヌ映画祭における日本映画のプレゼンスの高さを評価するとともに、海外を意識することの意義や現状などを分析する貴重な内容でありました。

そのこと自体に僕は何ら異議を挟むものではないのですが、日本映画の海外進出の重要性を説きながら、肝心の進出先である「世界映画」のカンヌ映画祭におけるレベルについて全く触れられていないのが非常に残念であり、一方でこれはまさしく象徴的であるとも思いました。

世界の中の日本映画を論じる中で、日本のことのみ語られる。自国の産業を報道することを目的とした新聞においては決して不思議ではないスタンスであるとは思いますが、それでも、おそらく、世界中の新聞で、今年のカンヌ映画祭について3日間の連載のスペースを与えられたとして、アブデラティフ・ケシシュ監督について一文字も触れないような記事は存在し得ないのではないかと思います。

海外に住む知人からは「報道を見ていると、84年にヴィム・ヴェンダースが『パリ・テキサス』で受賞した時のような熱狂を感じる」とのメールを受け取り、僕は深く納得したのですが、それほど、今年のケシシュ監督作は、単に毎年選出されるパルムドールの1本ではなく、時代を画する可能性があると筆を滑らせるほどのインパクトを伴った作品であるはずです。

日本の読者は日本のことに関心があるため、新聞社としては当然なのかもしれません。外を向こうと仕向けようとしても、外の様子にはなかなか興味を持ってもらえない。海外進出の重要性を語る文章自体が海外に目が向いていかないという、日本が抱える内向き構造の底深さを痛感させられる思いです。

でも、バルセロナやスペイン(バイエルン・ミュンヘンやブラジルでもいいけど)の強さを日本人サポーターは堪能しており、ナダルに歯が立たずとも健闘した錦織の成長を喜ぶ心を日本人は持っていることを考えると、(スポーツと映画を比べるヤボを承知で言うならば)ケシシュとコレエダの距離は何だったのかを知って楽しむ人はいるだろうし、もう少し海外を知る努力が、送り手と受け手の双方にあっても罰は当たらないのではないかと思います。

同記事において、日本は映画祭ディレクターも国際的な存在感が薄いと指摘されており、自意識過剰を承知で言えば、僕もそのひとりに含まれる可能性が多分にあるわけで、耳がとても痛いし、がんばらなくてはいかんなあと素直に思います。

日本映画を海外に紹介すること、そして同等の重要性を持って外国映画(外国文化)を日本に紹介すること、その双方において、僕も何らかの役割を果たし得る立場にいるわけなので、意識的に日々の業務に取り組みたいと思った次第であります。
《text:Yoshihiko Yatabe》

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