【シネマモード】『華麗なるギャツビー』 A little chat with Dir. BAZ LUHRMANN

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『華麗なるギャツビー』バズ・ラーマン監督
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  • 『華麗なるギャツビー』 -(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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まばゆい。そして、かっこいい。レオナルド・ディカプリオ演じるギャツビーの開演後30分もしてからの登場シーンといい、もう、いちいちいかしているのです。もう何の話かお分かりですね。バズ・ラーマン監督の『華麗なるギャツビー』です。

プラダ、ミュウミュウ、ブルックス ブラザーズ、そしてティファニー。いずれも、舞台となった1920年代の華麗で退廃的な時代性を表現するために、集められた本物ばかり。謎の男ギャツビーの、贅の限りを尽くした暮らしが、3Dでも体験できるとなれば、もうそのゴージャスな世界に浸るしかありません。

日本では6月14日に初日を迎えましたが、遡ることその前日、来日したバズ・ラーマン監督に会いに行ってきました。初日を前に、「日本の観客たちのリアクションが楽しみ」と興奮気味の監督。「みんなが楽しんでくれるといいんだけど。『華麗なるギャツビー』と日本とは特別な結びつきがあるからね。このプロジェクトにGOサインが出た理由のひとつに、村上春樹氏の存在があるんだ。ハリウッドで、映画化について話していた時、スタジオのある人物が“そうは思わないな。米国以外ではそれほど知られていないから”と言うんだ。でも、村上氏の『ノルウェイの森』では主人公が『華麗なるギャツビー』を読んでいるし、彼自身、作家になった大きな理由の一つがこの作品だったと語っていることを話したんだ。村上氏は、バブル経済を経験してきた日本人はこの作品の本質的なテーマを理解できるはずだとも言っている。美しいものに囲まれ、素晴らしいシャンパンを楽しむことは楽しいさ。でも、バブル崩壊を経験した人々は、物質がすべてではないことを肌で感じているはず。この原作にはそれが具体的に描かれているんだ。それに、レオナルドも『タイタニック』の時と同じぐらいロマンティックだ。悪くないだろ(笑)」。

1974年の『華麗なるギャツビー』も大好きだという監督は、多く映画化されてきたものの、どれが正しいバージョンかという議論には興味がないと言います。「70年代に撮られた『ハムレット』と、80年代、90年代に撮られたものは違って当然だ。人は物語を通して、自分に問いかけをし、自分を見つけていく。時代によって、語る者によって、変わって当然だからね」。

確かに。良い物語と言うのは、素晴らしいクラシック音楽と同じなのかもしれません。指揮者や演奏者は変わっても、ベートーベンの音楽は時代を超えても変わりないもの。「まさにそうなんだ。本質は同じで、何度も何度も繰り返し観客を楽しませる。ヘルベルト・フォン・カラヤンが振った音楽を、シャルル・デュトワが違う解釈で奏でるだろ。ある偉大な作曲家が言っていたよ。素晴らしい作品と言うのは、あらゆる方法で、幾度も幾度も、違った場所で再演されると。それでもなお、どれも同じ作曲家の作品なんだと。これぞ、『華麗なるギャツビー』が何度も映画化される理由だ。これは競争じゃないんだ。ここで、ひとつの疑問が生まれる。F・スコット・フィッツジェラルドの『華麗なるギャツビー』はTRUE CLASSICなのかどうか。僕が考えるCLASSICとは、時を超えて、国境を越えて、人の心に訴えるものだ。実際に、村上春樹は日本という原作が誕生した米国とは遠く離れた場所でこの作品にインスパイアされた。そして、多くの人が違った解釈、アプローチでその作品を楽しんでいる。F・スコット・フィッツジェラルドはなんて素晴らしい作品を残してくれたんだろうと思うよ」。

とはいえ、それを理解しない人もいます。作品同士が比べられることについてはどう思っているのでしょう。「もちろん、批判されるのは怖いよ。“俺のギャツビーが一番正しい!”なんて思わない。例えば音楽。原作には、アフリカン・アメリカン・ストリート・ミュージックというものがあり、“JAZZと呼ぶ”と書いてある。モダンだが、流行だと。それを現代におきかえれば、ヒップホップだろう。そこで今回はJAY-Zたちの音楽を取り入れた。もちろん、批評家のなかには、懸命になって批判する人もいる。でも、それには慣れているんだ。批判されることに、傷つかないとか、気にしないとか、そんなことを言っているんじゃない。古い考えの人々は、僕がリスクを冒していると言う。でも、僕がやらなきゃだれがやると言うんだ。これまでも、数々のリスクを冒してきたから、それができるんだからね。発売から90年も経った原作を1億ドルもの予算をかけて映画化することを納得させられる人物が、そうそういるとは思えない。難しいよ。でも、自分にはそれができる。もちろん、成功するかどうか、怖くないわけじゃないけれどね(笑)」。

偉大なるアートとは、常に、議論の的になる宿命を持つといえるのかもしれません。「そうだね。僕は映画だけに興味があるわけではなく、アートに興味を持っているんだ。僕が心を動かされた偉大なクリエイションにはすべて、議論がつきまとっている。大好きな映画のひとつ、『アラビアのロレンス』は公開時、NYタイムズ紙に、“キャメル・オペラだ”と酷評された。映画を批評するのはかまわない。でも、この仕事をしていると個人攻撃をされることも多いんだ。“この映画の意味がわからない、好きじゃない”と言われるのはしょうがない。ただ、自分が求める映画的表現をしていない作品が成功するのを許せない人がいる。でも、そんなことをしていたら新しい作品は生まれないと思う。僕の知人は、もう引退すると言っているよ。あまりに気苦労の多い仕事だからとね」。

映画監督の苦悩を告白してくれた監督ですが、実際のところ、彼の評価は揺るぎないものと言えるでしょう。それは、映画に喜んで協力した老舗高級店たちの顔ぶれからもよくわかります。「すべてのラグジュアリーグッズは、本物を使う意味があったんだ。F・スコット・フィッツジェラルドは実際にブルックス・ブラザーズとティファニーの顧客だった。このブランドには素晴らしいアーカイブがある。ポスターにあるデイジーの髪飾りは実際にティファニーのアーカイブから借りたものだ。妻(製作・衣裳・美術担当のキャサリン・マーティン)が少し手を加えたけどね。このギャツビーの指輪は僕がデザインしたんだよ(と、はめている指を見せる)。コスチューム・ジュエリーを使うつもりはなかった。やはり美しく映らないんだ。ティファニーもBBも、劇中に登場したモエも、プロダクツ・プレイスメント(企業がPRのためにお金を払って商品を映画に登場させること)だと思われているけれど、実は違うんだ。純粋な協力関係にある。いずれも、綿密なリサーチに基づき、原作とのコネクションを大事にしながら登場させた。実は、ティファニーの株価は、この映画の公開の直後から上がったんだ。理由は『華麗なるギャツビー』だと新聞に載っていた。とにかく、このニュースにはびっくりしたね」。

各社は、この作品公開に合わせて、さまざまなイベント、プロモーションを企画。本作に参加した多くのクリエーターたちによる、『華麗なるギャツビー』を軸にしたさまざまな動きも、留まるところを知りません。 「すでにサントラが発売されているけれど、来週には、映画に参加してくれたブライアン・フェリーによるJAZZのCDが発売される。ヒップポップのCDも別に登場する予定だ。映画を発端に、多くの独創的な試みが広がりを見せている。僕が考えていた以上のことだね。バイナル盤(一般的なアナログレコード盤)に夢中なジャック・ホワイトは、ゴールドとシルバーのサントラを個人的に6枚だけ作って、一組を僕にくれたんだ。今じゃ、みんなが欲しがっている(笑)。本当のゴールドじゃなくメッキだよ。でも、手袋をしなきゃね(笑)」と手袋をはめて、持参したレコードを嬉しそうに見せてくれている。「こんなこともあったんだ。ステラ・マッカートニーが、自分のカントリーハウスで、『華麗なるギャツビー』の上映会をするというんだ。ドレスコードは、1920年代のファッション。凄いと思わないかい?」

3D版もあり、その独特の世界にどっぷり浸ることのできるバズ・ラーマン版『華麗なるギャツビー』。ドレスアップして観に行くというのも確かに楽しそうです。「とにかく、これが『華麗なるギャツビー』のなせる業なんだ。人々のアート心を刺激するんだ。人々に、創造的になりたいと思わせる。フィッツジェラルド本人は、晩年、作品が売れず、自らの著書を本屋で購入していたとも言われている。アルコール依存症だったし、悲劇的な人生だったかもしれない。でも、素晴らしい作品を残してくれた。それだけは確かだね」。
《text:June Makiguchi》

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