『二流小説家』上川隆也 俳優人生24年分の“好き”で開いた映画初主演の扉

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上川隆也(赤羽一兵役)/『二流小説家 -シリアリスト-』
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  • 『二流小説家 -シリアリスト-』-(C) 2013「二流小説家」製作委員会
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  • 『二流小説家 -シリアリスト-』 -(C) 2013「二流小説家」製作委員会
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上川隆也──演劇集団・キャラメルボックスで舞台経験を積み、舞台はもちろん、ドラマ、映画、バラエティなど、さまざまなフィールドで活躍する演技派俳優のひとり。芸歴24年というキャリアを持つ彼にとっては少し意外かもしれないが、新作映画『二流小説家 -シリアリスト-』で“初”の映画主演を務めている。ただ、彼にとっては主演か、主演ではないかは重要ではなく、「どんな役柄と出会うかも含めてご縁」だと言う。そして2013年は、年明け早々に本作の撮影がスタート、同じ時期にバラエティ番組「ぐるぐるナインティナイン グルメチキンレース ゴチになります!」でのレギュラーが決まり、4月からは「遺留捜査 第3シリーズ」も始まるという、嬉しい“縁”が続いている。

「あっという間に半年が過ぎて…早いですね(笑)。でも、非常に密度が高くて、それでいてスピード感もこの上なくあって、新鮮です」。そんな風に多忙を満喫している上川さんに、“初”の主演となる映画『二流小説家 -シリアリスト-』について、また役者・上川隆也とは一体どんな人物なのかを語ってもらった。

「父親の影響もあるのかもしれないですが、物心ついた頃から家の中にある本をジャンル問わず読んでいました」。昔から本に触れてきた上川さん。本人曰く、読書家というよりも活字好きだそうで、今回の二流小説家・赤羽役はまさに打って付けの役。しかも原作は、海外ミステリー部門として初の三冠達成(※)となったデイヴィッド・ゴードン著のベストセラー小説だ。「それにしても、この原作は楽しかったですね」という言葉からも上川さんの原作、映画、役柄への愛が垣間見えてくる。

「僕はミステリーを読むとき、犯人探しをせずに読むタイプなんです。最後に犯人が誰なのかを明かされることを待ちわびながら1ページ1ページを丁寧に読み、騙されるというよりは感心するというか、意外性を楽しみたいんです」。自身も楽しめたという原作を基に作られた本作は、舞台を日本に移し、赤羽という売れない小説家が巻き込まれる連続殺人事件が描かれるわけだが、小説家を演じるにあたって上川さんが目指したのは、小説家らしさというよりは赤羽らしさ。そこに彼の演技に対するメソッドがあるようだ。

「これまでにも作家や漫画家の方と話す機会が何度かありましたが、小説家だからこう、漫画家だからこう、というのはないんですよね。“その人”なんです。なので、小説家らしさというよりも、赤羽らしさをどう表現するのか──。今回の赤羽という役柄は、秀でたものもない、エキセントリックでもないキャラクター。一人でいるときはのぺーっとしていて変化のない人物だけれど、誰かといるときに赤羽のパーソナリティは浮き彫りになる。言ってみれば、月みたいな存在です。自ら光を放つわけではないけれど、光を照らされたときに反応するというか」。

赤羽に光を照らす存在、赤羽を事件に巻き込んでいくキャラクターが、武田真治が演じる連続殺人犯の死刑囚・呉井大悟。「武田さんは、ツメの先まで呉井大悟を作り上げていたように思えました」と絶賛する。

「赤羽にとって呉井は最初の火種として存在する男でもあって、彼がいなければ赤羽の人生はそれほど変容をきたすことなく、ゆるゆると過ごしていたかもしれない。そんな赤羽に呉井がもたらした一つの転機。そういう起爆剤としての力を含めて、武田さんは実にエネルギッシュに呉井を演じていました。赤羽という役を離れた目で見ても、楽しかったですね」と撮影をふり返る。確かに、赤羽と呉井が拘置所の面会室で繰り広げる会話、演技バトルはこの映画の大きな見どころとなっている。

赤羽と呉井だけが存在する何もない殺風景な面会室とは対照的に、活字好きの上川さんが「あの部屋から離れがたかった」というほど印象深く記憶に刻まれたのは、8,000冊の本で埋め尽くされた赤羽の家のセットだ。

「8,000冊の中には、筒井康隆さんの全集があったり、赤羽が『男のゴールデン街』に寄稿しているエロ小説を書くにあたっての参考書籍があったり、シリアルキラーの伝記があったり…漫喫ならぬ、本喫のような感じでした。それらの本には、赤羽自身の世界観が反映されていますし、何よりも8,000冊という容易には集められない数を集めてきたのがすごい。しかもどれも面白そうな本ばかり。でも、女性があの部屋に入ったら、ちょっと引くかもしれないですよね(苦笑)」。

死刑囚・呉井が赤羽に「告白本を書いてほしい」、その書く条件として「自分のための官能小説を書いて欲しい」という依頼をきっかけに、赤羽は新たな連続殺人事件に巻き込まれていく。そこに登場する赤羽と呉井をとりまく女性たち──赤羽の母親、元彼女、姪を始め、赤羽と関わる女性たちは一様に女性の方から赤羽のもとを去って行く、その構図も赤羽らしさを引き立てていると上川さんは説明する。

「踏ん切りの良さというか、ちゃんと自分の環境に句読点が付けられるっていうことにおいても、女性の強さを端的に現わしているエピソードが描かれていると思うんです。よく恋愛において、“女性は上書き保存、男性は別名保存”とか言いますが、まさにそんな感じ。赤羽はきっとそれぞれに別名保存していると思いますけど(笑)。赤羽の魅力ですか? 男目線では見い出しづらいんですが、女性が何か感じるものを持っている男ではあるのかもしれないですよね。なかなか腰を上げない優柔不断さの中に、実は芯の強さがあったり。小説家であろうとするゆるぎない信念もあるでしょうし。表面的ではない何かに女性は惹かれるのかなと思います」。

上川さんが赤羽に向けた「芯の強さ」「ゆるぎない信念」という言葉は、そのまま役者・上川隆也にも当てはまるような。けれど、本人は役者としての才能があるわけではなく、面白い、楽しい、と感じたもの(=芝居)をただ続けてきただけだと、少し照れくさそうに回想し、自分を見つめる。

「僕に才能があるとしたら、(芝居を)好きでい続けるということなのかもしれないですね。役者を辞めたいと思ったことは一度もなくて、挫折とか転機というのもない。あるとしたら、たとえば『大地の子』(1995年の主演ドラマ)という作品を経て、演じることの好きの度合いがどんと大きくなったということはありました。もちろん、この『二流小説家 -シリアリスト-』という映画に出会ったことで、その度合いはまた大きくなりました。主演ということで得られてものもあるでしょうし、武田さんとの共演で得られたものもあるでしょうし、それらが好きの度合いを強く大きくしてくれたのは間違いないです」。

好きこそ物の上手なれ。デビュー当初から変わらずに“好き”という感情をそれぞれの作品に注ぎいできたということは、『二流小説家 -シリアリスト-』は、役者・上川隆也のフィルモグラフィーにおいて彼史上最大の“好き”が蓄積された作品ということになる。その“好き”から生まれた芝居がどれほどのものか、劇場で確かめてほしい。そして、心地よく騙されてほしい──。

(※「2011年週刊文春ミステリーベスト10海外部門第一位」、「2012年版このミステリーがすごい!海外編第一位」、「2012年ミステリーが読みたい!海外編第一位」)
《text:cinemacafe.net》

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