【MOVIE BLOG】コンペ作品紹介(4/5)

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ドリンキング・バディーズ
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東京国際映画祭のコンペティション部門作品の紹介第4弾は、前回の「実績豊富な実力派監督」に対抗し、「個性派新鋭監督」による作品で攻めてみます。

まずはアメリカのジョー・スワンバーグ監督(81年生)による『ドリンキング・バディーズ』。スワンバーグ監督はアメリカのインディペンデント界ではもはや有名な存在ですが、日本ではほとんど紹介されていないので、こうしてコンペで上映できるのは本当に興奮します。

スワンバーグは役者としても活躍していて、近いところだと『サプライズ』(11月14日公開)の長男役で主演していますね。これは僕の想像なのですが、役者業で稼いだお金を自分の映画の製作資金に充てるという、米インディペンデントの伝統である「カサヴェテス方式」で監督しているのではないかと思います。

通常は、フットワークの軽いクルーを率いて、最小限のシナリオを元に、現場で役者と一緒に映画を組み立てる即興スタイルを得意としています。『ドリンキング・バディーズ』では、プロダクション規模が大きくなったこともあり、ある程度の脚本は存在していたとのことですが、それでも即興的で自然な雰囲気に溢れた空気はまさにジョー・スワンバーグの世界。カサヴェテスやジャームッシュなどの系譜に連なる、アメリカンインディーの粋が全開です。

僕が作品に付けたキャッチコピーが「飲み友以上、恋人未満」なのですが(ちょっと痛いですかね?)、ビール工場勤務の男女の同僚同士による、キャッチコピー通りの関係を描くもので、ロマンティック・コメディーと呼んでいいでしょう。ロマンティックで、でも少しビターで…。オリヴィア・ワイルド(『トロン:レガシー』)を軸に、ジェイク・ジョンソン(テレビの「New Girl ~ダサかわ女子と三銃士」で人気急上昇中)、アナ・ケンドリック(『マイレージ、マイライフ』のジョージ・クルーニーの相手役が印象的)などの新進気鋭が醸し出すナチュラル感が堪らないです。

とにかく見どころは、役者たちの絶妙な存在感と演技。そして、それを引き出すための環境を整えているスワンバーグの演出力。さらに、全体を包むユーモアのセンス、とても身近なリアル感、そして見終わったあとの至高のハッピー感!

素直にデートムービーとして、描かれる人間関係に感情移入しながら楽しめますし、一方でスワンバーグ監督を「発見」する映画ファン的歓びも味わってもらいたいです。いや、まあ、もう理屈はどうでもいいです。楽しんで、笑って、ビール飲んで!

続いて、イギリスのリチャード・アヨエイド監督(77年生)による『ザ・ダブル/分身』。2011年にTIFFで上映した長編デビュー作の『サブマリン』で、アヨエイド監督のセンスに惚れ込んだ人は、僕だけではないでしょう。『サブマリン』は、少しダークでとてもキュート、そしてキッチュな風味も備えた個性的な青春映画で、アヨエイドは一気に次作が楽しみにされる監督のひとりに躍り出ました。

そして、長編2本目にして、ジェシー・アイゼンバーグを主演に迎えたビッグ・プロダクションを任されることになり、業界のアヨエイドに対する期待の大きさが伺えます。アヨエイド監督はその期待に応えたどころか、自分の独創的なワールドを存分に展開し、圧倒的な個性を爆発させながら、それを独りよがりの自己満足映画ではなく、高いレベルで多くの観客にリーチできる作品として成功させました。これはもう、とんでもない実力です。

見どころは、アヨエイドが構築した、不条理に貫かれる近未来的なルックに尽きます。ゴダールの『アルファビル』やリンチの『イレイザーヘッド』を本人は引き合いに出していますが、僕はそこに『未来世紀ブラジル』を加えたい。カフカ的世界(原作はドストエフスキーですが)におけるドッペルゲンガーの純愛物語、と聞くとちょっと難解に響くかもしれませんが、もちろん心配無用の面白さとインパクトを、100%保証します。

不条理でねじれた奇妙な世界を象徴するような演出として、日本人が驚愕する展開があるのですが、それは観てのお楽しみに、ということでここではカット!

ジェシー・アイゼンバーグの2役は、彼の能力の高さを証明する出来であるし、ミア・ワシコウスカのイノセントで罪深い存在感も素晴らしい。不穏で、ダークで、時折ユーモラスで、時折とてもとてもロマンティック。この作品で、リチャード・アヨエイドという名前は日本ではもちろん、世界的にもブレイク必至と断言します。

そして、「個性派新鋭監督」枠での紹介、日本からは、深田晃司監督(80年生)!東京国際映画祭「日本映画・ある視点」作品賞を皮切りに、世界中の映画祭を牛耳った感のある『歓待』(10)の深田監督を、今度はコンペティション部門でお迎えできることに無上の喜びを覚えます。

『ほとりの朔子』は、深田監督の映画への愛がスクリーンから溢れて外へこぼれてくるような作品です。フランス映画のような日本映画。こう言ってしまうと身も蓋もないですが、完璧にヨーロッパ映画を吸収消化していないと、ただのだらしない作品で終わってしまう。深田晃司は、エリック・ロメールに対する愛を隠さず、堂々とオマージュを捧げていますが(『ほとりの朔子』と『海辺のポーリーヌ』というタイトル比較からして楽しい)、それは自分の演出にかなりの自信を持っていないと出来ない芸当であり、まぎれもない深田晃司印の作品です。

二階堂ふみさん扮する朔子が過ごす、ひと夏の物語。浪人生という宙ぶらりんな立場での夏休み。朔子の心情もやはり宙ぶらりんで、人との出会いによってその気持ちが揺れていく様子を、繊細なタッチで描いていく青春映画です。恋愛の予感や、社会とのスタンスなどを、抑制を効かせて挿入していくセンスが素晴らしい。

見どころは、第一には二階堂ふみさんの抜群の演技力を上げたいですが、大人の女性の爽やかな魅力を備えた鶴田真由さん、そして太賀さん、TIFFでもおなじみの古舘寛治さんや、プロデューサーも兼ねる杉野希妃さんなどのアンサンブルキャストも大いに注目であります。

さらに、1日ごとにチャプター分けがなされて、日々の些細な展開を少しずつ見せていく編集のセンスが素晴らしく、まさに深田監督の面目躍如たるところ。夏の光線も、とてもいいのだよな…。とにかく、日本の新鋭の中でも独自のポジションを獲得していくであろう監督であり、より広い範囲の映画ファンに深田ワールドを体験してもらいたいです。そのきっかけとしてのTIFFコンペティション参戦。どのような展開になるのか、僕もとてもワクワクしています。

ということで、「個性派新鋭監督」3本でしたが、それにしても、ジョー・スワンバーグ、リチャード・アヨエイド、深田晃司。3人並べると、なんと面白い!
《矢田部吉彦》

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