【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day2

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事務局を訪れてくれたエレーナ・コッタさん
  • 事務局を訪れてくれたエレーナ・コッタさん
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8時半起床。5時間も寝られるなんて奇跡だ。今年は出だしがスムーズで逆に心配。一種の貧乏性か? 油断しないように、油断しないように。

事務局に行くと、昨日のオープニングの裏に隠れた小さなトラブルがいくつか耳に入ってきて、こんなことがあったのか、と今さら驚く。全く問題のないゲストが多い一方で、何かと手がかかる作品もあるわけで、人間を相手にしているのだからそれは当たり前と自覚しつつ「お・も・て・な・し」は口で言うほど簡単ではないのだ。こちらも人間だし。というわけで、毅然とすべきところは毅然と対応し、でも丁寧な対応は絶対に忘れない、というスタンスで臨むべし。まだまだ始まったばかりだ。

そんなことを思いながら、本日は11時50分から『シチリアの裏通り』(ワールドフォーカス部門)のQ&A司会でスタート。ゲストは、本作でベネチア映画祭の主演女優賞を受賞したエレナ・コッタさん! 1931年生まれとのことだから、御年82歳。いやあ、なんと素晴らしくチャーミングな女性!

『シチリアの裏通り』でベネチア映画祭の最優秀女優賞を受賞したコッタさんから、女優としての心構え(観客のことをまずは気にする)から、作品のメッセージ(実は反戦映画である)まで、実に明快に、そして魅力的に語ってくれる。こんな作品とゲストに朝から出会える映画祭って、やっぱりいいなあと自分も観客になって喜んでしまった。んー、それにしても時間が足りないっ。

12時半に終了し、事務局に戻って明日のイベントの打ち合わせを30分。それから楽しいお弁当。

少しだけ目の前の時間が空いたので、シネマズ内で行われている提携企画「8Kスーパーハイビジョン スペシャルプレゼンテーション by TIFF × NHK」を覗いてみる。「現行ハイビジョンの16倍の超高精細映像と22.2チャンネルの立体音響を誇る8Kスーパーハイビジョン」の上映、と言われても、もう何が何だか分からない。だからこそ百聞は一見に如かずということで「8K上映」というものを見てみようと思ったのだけど、まあ確かにすごいですな。紅白歌合戦やロンドンオリンピックの開会式の模様が8Kで上映されて、北島三郎の迫力に感動してしまった。

全体で20分くらいのプログラムなので、よい気分転換になった(まだ気分転換している場合では全くないのだけど)。15時から「日本映画スプラッシュ」部門の『FORMA』のQ&A。坂本あゆみ監督の、渾身のデビュー作。最近改めて見直して、この作品の面白さを再確認していたところなので、司会という身分を忘れてどんどん質問をしてしまう自分を抑えるのが難しい。

坂本監督はとても緊張されていたのだけど、4年間かけた脚本、そして完成まで6年間かけた製作過程について語ってもらううちに徐々にリラックスしてきて、いくつもの驚愕エピソードを語ってくれる。この作品は、見れば見るほど面白く、全てのシーンに伏線があり、見直すたびに発見がある。その秘密は、30分のQ&A時間では全く足りない。でも、演出術のエッセンスは伝わったのではないかな。監督の今後から目が離せないと、観客の誰もが思ったはず。観客の反応がとてもよく、外国人観客からも評価のコメントが出て、これは僕もとても嬉しい。とにかく、坂本監督、演出の追い込み方が、生半可ではないのだ。緊張感の持続が、尋常ではない。『FORMA』の今後の展開に、本気で期待したい。

坂本監督にきちんとご挨拶する間もなく、ただちにスクリーンを移り、コンペティションの『ドリンキング・バディーズ』のQ&Aへ。今年のコンペティションで最もフィールグッドな作品(いや、『ウィ・アー・ザ・ベスト』という対抗馬がいるな)なので、Q&Aへの足取りも軽くなる。ゲストは、プロデューサーのアリシア・バン・クーバーリンクさん。アメリカの挑戦好きな若手女性プロデューサーとあらば、話がつまらないわけがない!

そして、ラブコメがコンペ? と思った人たちも、今日見て納得したはず! 客席のお客さんの顔に「面白かった!」と書いてあるのが読めるくらい。面白いだけでなく、独自の演出を施すジョー・スワンバーグという監督の魅力も十分伝わったはずで、上映後に知り合いに会うと皆が口を揃えて「サイコー!」。やったね。

とてもとても聞きたい質問があったのだけど、またまた司会の僕がたくさん質問してしまった感があったので、最後に自重してしまった…。後で見た人にその話をしたら、「それを聞いて欲しかった!」と言われて、うーむ。何年やってもQ&Aの司会は難しい(もうかれこれ数百回はやっているのに!)。聞きたい質問はヤマほどあって、それはお客さんも聞きたいはずだとの思いはあるけれど、でもせっかくの映画祭の場だし、お客さんから発言の機会を奪うことは許されないし…。まあ、いいや。次回のQ&Aに取っておこう!

ビール飲みてー、と(『ドリンキング・バディーズ』を見たお客さん全員と同様に)思いながら、ロビーに出ると、久しぶりに会う面々が続々と現れ、やあやあと立ち話の連続。するとあっという間に19時になってしまい、事務局に戻ってお弁当。

19時半から、コンペティションのワールドプレミア『ある理髪師の物語』のQ&A! ジュン・ロブレス・ラナ監督による映画製作背景の説明も興味深かったけれど、何と言ってもユージン・ドミンゴさんの魅力が素晴らしい。彼女がいかにして本作の製作に関わったかの経緯の、その茶目っ気たっぷりの説明に、会場中がほっこり。その分、質問を受ける時間が少なくなってしまったのだけど、もう今日は彼女のあの魅力に接することが出来ただけでも幸せでしょう!

外に出て元同僚や、知り合いや、お客さんと話していると、かなり反応がいい! というか、相当にいい。いやあ、素晴らしく嬉しい。

みんなと映画の余韻に浸っている時間はなく、ダッシュでパーティー会場へ。コンペのゲストが中心に集っている居酒屋さんに行き、バタバタとご挨拶。全くゆっくり座って話している時間がないので(こんなことではいけないと毎年思うのだけど)、滞在時間1時間程度で切り上げて(もちろん1滴も飲まず)、劇場へUターン。

22時から、「日本映画スプラッシュ」の『自分のことばかりで情けなくなるよ』Q&A。最後に見てから1か月以上経っているので、最近久しぶりに見直してみたら、やっぱり同じところで泣いてしまった。映画館ならともかく、職場でパソコンに向かって泣いているのは、かなり恥ずかしい。なので、しばらく疲れたフリをして目をつぶっていた…。

という記憶も新鮮な中でのQ&A。松井大悟監督とクリープハイプの尾崎世界観さんとのライバル的共闘関係な映画作りの話が面白い。音楽に負けない音楽映画ってどうやって作るのだ、ということが話のテーマとして集約できると思うのだけれど、今や日本インディーズの最重要祭典の一つである「Moosic Lab」企画が投げかけているこの命題は実はとても重くて、かなり現在の日本のインディーシーンへの本質的な問いかけが含まれたトークだった…、ということを考えながら聞いていたのは僕だけかな。もう少し発展させたかったけど、今日はクリープハイプのファンの方も大勢いたし、日本のインディーシーンについてディープに掘り下げるのは別の場を待った方がいいかもしれない。

松井監督が言葉を選びながら、同じことをいくつもの側面から語ろうとする姿勢が好ましく(「同じことばかり言ってすみません」と言っていたけど、全然そんなことはない!)、僕は初対面だったけど松井さんの誠実さに感動してしまった。ああ、しつこいけど、時間が足りない!

もう少しアフタートークをしたかったのだけど、次があるので即移動。23時から、コンペ部門で『ルールを曲げろ』のQ&A司会。ゲストはベーナム・ベーザディ監督と、主演のネダ・ジェブライーリさん。

23時を過ぎたというのに、シネマズ最大のスクリーン7は、人でいっぱい。Q&Aにもほとんどの人が残った。これは感動的だ! やはり、ちょっと監督の話が聞いてみたい、と思わせる映画だったはず。いや、もう、朝からホメてばかりで信用を失いそうだけど、ベーザディ監督ほど話しやすいイラン人監督は、実は初めて。

イランの監督としては珍しく英語が流暢ということもあるけど(Q&Aはペルシャ語だったけど)、全くそれだけではなくて、極めて温厚で、ウィットに富み、フランクに何でも話してくれる。そして、何と言ってもチャレンジャーである。現在のイランの映画製作についても包み隠さず話してくれて、僕はこの出会いを神様に感謝したいくらい。

壇上では、イランの世代論や、コミュニケーション論が多くなり、少しだけ話が固くなってしまったかな。僕はもっと緊張を伴った長廻しや、その中の役者の動かし方などの、演出面での質問がしたかったので、上手く誘導できなかった自分を反省。次回で挽回しようと思えど、今日のお客さんは次回のトークにはいないわけで…。ああ、トークは難しい。そしてひたすら楽しい!

終わってから、また監督と話し込んで、職場に戻って1時。メール書いて、ブログ書いて、そろそろ3時で、そろそろ限界。ああ、実質初日にして、何と濃い1日なのだ…!

(写真は、事務局を訪れてくれたエレーナ・コッタさん!)
《矢田部吉彦》

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