【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day4

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20日、日曜日。雨だ! 台風が去って、もう今年は晴れ続きと思っていたのに…。しかも、また大きな台風が接近しているらしい。んー。天気悪いから映画でも見るか、と思ってもらえたらいいのだけど。映画ハシゴ日和ということで!

8時に起きて、バタバタと支度。ん? 体調は万全なのだけど、ちょっとだけ腰に違和感がある…。今年は7月にかなりしんどいギックリ腰を経験しているので、何とか映画祭中だけでも再発を防がねば! 今歩けなくなったらと思うと恐ろし過ぎる。とりあえず、慎重に動こう。

夜のイベントの準備や確認などしているうちに10時になり、大物ゲストがホテルに無事到着の報せが携帯に入る! 素晴らしい! 実現した!

12時になったので、劇場へ。コンペ作品『ルールを曲げろ』の2度目のQ&A司会。暖かい笑みを備えたベーナム・ベーザディ監督と相変わらず美しいネダ・ジェブライーリさん。最初に長廻しと役者の演出について語ってもらい、次にイランのフェミニズムについて。そして客席にいらっしゃったアミール・ナデリ監督が発言され、にわかにナデリ監督とベーザディ監督のクロストークの場と化した。これは映画祭らしくて楽しい! ナデリ監督らしく、ミゾグチやクロサワに関する会話が飛び交い、そしてベーザディ監督の少年時代のイランにおける日本文化の影響の浸透が伺えてとても興味深い。が、予定の時間を15分もオーバーしてしまい、非常に焦った!

急いでコンペティション部門の日本映画『捨てがたき人々』の上映前舞台挨拶司会へ。榊英雄監督、三輪ひとみさん、そして美保純さんがご登壇。外は冷たい雨にも関わらず、客席がいっぱいなのが何よりも嬉しい!

舞台挨拶は15分ほどで終了し、外へ。うわあ、さっきよりずっと気温が下がっている! これは寒い! むむー。何とか回復してほしい…。事務局に戻り、サンドイッチを食べ、夕方のイベントの準備の詰め。今日は緊張物件がまた多いので、何をやっても気がそぞろになってしまい、作業の能率が上がらん。

さて、15時45分から『捨てがたき人々』の上映後Q&A司会。榊英雄監督と、脚本の秋山命さんが登壇。作品のインパクトが十分に会場に伝わったようで、客席から熱気を感じる。榊監督と秋山さんのツーショットはかなりの迫力で、横に座った僕は気圧されてしまう。映画化の経緯、大森南朋さんとの長い縁、役者との接し方について。榊監督は自身が役者でもあるので、役者へ接するスタンスの話がとても面白い。この話をさらに発展させたい、と思ったら、ああ、時間がなくなってしまった。2回目のQ&Aで聞いてみよう。

ところで、この回がそうだったということではないのだけれど、映画の生まれたいきさつについて最初に聞くのは、Q&Aへの導入がスムーズになる反面、そこが長引き過ぎると周辺の話に終始してしまい、肝心の映画の中身の話が薄くなってしまう危険性がある。そこをコントロールするのは不可能に近いのだけれど、それでも司会の僕に出来ることがもっとあるのではないかと、今年は余計なこと(かもしれない)を随分と考えてしまう…。

16時半に終わり、劇場のカフェバースペースに移動し、黒沢清監督と打ち合わせ!

去年、『サイド・バイ・サイド』のトークイベントに黒沢監督をお招きしたとき、「こんな大人になりたい」と思ったということをブログに書いた記憶があるけれど(僕もそんなことを言っているトシではないのは承知の上で)、本当に黒沢さんのお人柄の素晴らしさを、どう形容したらいいだろう? 威厳があるけど威圧的でなく、偉いのに丁寧。こんな大人になりたい。

17時から、東京国際映画祭と田辺弁慶映画祭のコラボで「東京シネマナイト」と銘打ったイベントを企画していて、僕はその前半のシンポジウムの進行を担当。日本の若手監督に海外展開のお手伝いをしたいとの思いから、「How to 国際映画祭」という内容にして、まずは僕と、エージェント業務を手掛ける高松美由紀さんとで、海外展開の最初の一歩となるような基本的な事項を、40分間ほどお話し。

そして、黒沢監督にご登場頂く。いつ頃から海外の映画祭を意識したか(「当初は全くしていなかったが、青山真治監督達が海外に出るようになって意識し始めた記憶がある」)、最初の国際映画祭は何か(「実は東京国際映画祭である」)、そして、その後の海外展開について。さらに、『アカルイミライ』と『トウキョウソナタ』がカンヌ映画祭に出品された経緯、『贖罪』の極めて意外な成功例など、裏話も交えて、極めて面白い。

感動的であったのは、国際映画祭を意識する意味について語ってもらった時。僕の「海外を意識する若手監督が減っているようなことも言われますが、黒沢監督からメッセージはありますか?」との質問に対する黒沢監督の答えは:

「国際映画祭になぜ出品するのか、という問いに対する僕の答えは明快です。それは、楽しいからです。映画を当ててお金を稼ぐという目的を持っていてもいいし、キネ旬ベスト10入りを目標にするのもあっていいと思います。それと同じレベルで、国際映画祭に行くこと自体が目的であってもいいのです。行けば楽しいし、こんな楽しい思いができるならもう1本頑張って映画を作ろう、という気持ちに繋がることもあります。映画祭に行ってビジネスチャンスを広げようとする監督と、参加することを楽しむ監督の2種類がいるでしょうけれど、どちらかといえば僕は後者だと思います。映画祭は楽しいから参加するのだ、という目的があっても、全然構わないと思うのです」。

なんというか、僕はちょっと涙が出そうになってしまった。尊敬する黒沢監督から、このような純粋な映画祭に対する思いを聞けるとは思っていなかった。若い監督たちに対し、これ以上響くメッセージはないはずだ。

そして、まだ終わりではなかった。映画会社に就職が内定したという大学生から、「海外の映画祭で通用する普遍性を映画に持たせることと、日本で当たる映画を作ることは両立できるでしょうか」という意味の質問に対して:

「(長く考えて)とても難しいですね…。(さらに長く考えて)とにかく、面白いものを作ろうと必死に考えて、一生懸命作ることを続けることだと思います。一生懸命作り続けると、否が応でも自分の個性が出てきます。それは、どうしても出てきてしまうものなのです。それが個性です。その個性が、どこかの映画祭のディレクターの目に留まることがあるのです。映画祭は個性に注目しているはずですから。ですから、面白いものを作ろうと必死に考えて、一生懸命作る。それに尽きるのではないでしょうか」。

これほどシンプルで強固で明解で感動的なメッセージがあるだろうか? 僕は進行役ながら言葉を失った。会場にいる若い監督たちに、このメッセージはどのように突き刺さっただろうか。僕は感動で全身が突き刺されたようだった…。

僕はコンペティションのディレクターとなって、今年が7年目。色々な考え方を経てきたけれど、最終的に決め手となるのは監督の個性がフィルムに刻印されているかどうかだという思いが、昨年から揺らがなくなってきた。映画祭は作家を擁護するためにこそ存在するとの思いも、年々強くなる一方だ。が、「作家を擁護」というフレーズなんて、昨今の日本ではまるで流行らない。なんだか無駄な抵抗をしているのではないかとの気持ちに負けそうになってしまうことも、しょっちゅうだ。「メジャー」な東京国際映画祭において、僕のようなものがいつまで現在のポジションを続けられるのか、全く分からないけれど、黒沢さんの言葉を聞いて、少なくともそんなに僕は間違っていないのかもしれないと思えた。

と甘ったれた感傷に浸っている場合では全くなく、ダッシュで劇場に行き、『エンプティ・アワーズ』の2度目のQ&A司会。大きいスクリーン7がいっぱいで嬉しい。このような小さな作品で劇場が埋まると嬉しさもひとしおだ! そして、終了後に外に出てみると、何人もの知り合いに会い、みなとても気に入ったみたい。やはりこういう丁寧な良作は伝わるのだなと実感。小さいからといって臆することはないのだ。当たり前のことを、当たり前に確認する。

続いて、先ほどのシンポジウムの会場がパーティーの場に転換されたので、そこに顔を出してみる。東京国際映画祭の出品作品を中心とした日本映画の関係者が溢れるように集まっており、そこに海外の映画祭のプログラマー達も合流したので(というか「合流させた」のだけど)、ネットワーキングでごった返している。素晴らしいことだ! もっと場を効率的なものにする工夫は必要だけれど、でもこういう場は絶対に必要で、これはさらにパワーアップさせて来年も続けたい!

僕もたくさんの人と話し、名刺を交換し、動き回っているうちに、緊張の時間がやってきた! 22時過ぎにパーティーがお開きになり、一瞬事務局に戻って体制を整え、深呼吸をしてから、劇場へ。

コンペ部門、『ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム』のQ&A司会。ゲストはマチュー・アマルリック!

もう、この作品のゲスト来日は無理かもしれない…、と諦めていた9月下旬。ラリユー兄弟監督の来日が正式に不可能となり、激しく落ち込んでいた僕らに、一筋の光が差し込んできた。なんと、マチューが日本に来てもいいと言っているらしい! 僕ら作品部全員がどよめいた。

一生感謝してもしきれることはないだろう方に仲介してもらい、マチュー来日が正式に決まった。映画祭開幕数日前のこと。こんな奇跡があるのだ!

壇上から、客席にいるマチューの名前を高らかに呼び上げた瞬間の高揚感は、今まで経験したことのない種類のもの。Q&Aの内容は、ちょっと興奮して覚えてないけど、明日冷静になって思い出そう。ここでくどくどと(もう今日はすでにくどくどと書きすぎた)マチュー・アマルリックに対する思いを語っても仕方がないのだけど、司会をしている僕が興奮しすぎて客席がひいちゃってないだろうかということだけが心配だった。どうだったかな。

まあ、それにしても、なんと素敵な人でしょう。なんと飾り気のない、なんと自然な。大スターなのに。20年近く彼の作品を見続けている者にとって、常に彼の出演作に刺激を受け続けている者にとって、これ以上感動的な夜はない。

感動にインフレはない。黒沢清にマチュー・アマルリック。なんという一日だ!
《矢田部吉彦》

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