※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day5

21日、月曜日。天気は回復。いつまでもつか。台風、来るな! と祈りつつ、8時半に起きて10時に職場へ…

最新ニュース スクープ
注目記事
【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day5
c2013 TIFF 【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day5
  • 【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day5
  • 【MOVIE BLOG】東京国際映画祭 Day5
21日、月曜日。天気は回復。いつまでもつか。台風、来るな! と祈りつつ、8時半に起きて10時に職場へ。

4時には寝たので僕の睡眠時間はOKなのだけど、朝5時に羽田空港に到着するゲストがいたりするので、ホスピタリティーチームは大変だ。徹夜もしているはずで、これはまさしく羽田が便利になることの副作用だ…。

かなり溜まったメールを読んだり、お礼のメールを書いたりして、午前中は静かに推移。12時にとても美味な「鳥久」のお弁当を頂く。嬉しい。

そして12時30分から、コンペティションの『ある理髪師の物語』の2度目のQ&A司会。主演のユージン・ドミンゴさんは残念ながら帰国されてしまったけれど、その分監督の話がじっくり聞けたので、今日のお客さんの満足度もとても高かったはず。

特に、ドミンゴさんが演じたヒロインのマリー・ルーが、映画で描かれる状況の前にどういう人生を送ってきたかを、監督がマリー・ルーの日記として書いてドミンゴさんに渡していたというエピソードがとても印象的。キャラクターの掘り下げ方の王道なのかもしれないけど、こういう話が聞けるのはとても楽しい。ジュン・ロブレス・ラナ監督は、コメントに淀みがなく、スムーズに語るのだけど、かといって機械的な印象はないどころか誠実な姿勢がひしひしと伝わる。この人は、どんどん大物になっていくのではないか。

上映終わってロビーに出ると、お客さんが話しかけてきて、「涙が止まりませんでした。隣の人も泣いていました。こんなに勇気の出る作品を選んでくれてありがとうございます」。僕はお礼を言われる立場ではないので、監督に伝えますね、とお答えしたものの、涙がこみあげてきて困った。

映画祭中は神経が過敏になっているので、涙もろくていかん。

事務局に戻り、打ち合わせが3件。そして、取材が1件。

16時から、コンペティションの『オルドス警察日記』の2回目のQ&A司会へ。控えスペースに行ってみると、『自分のことばかりで情けなくなるよ』の登壇準備をしている大東駿介さんがいらっしゃったので、(僕が今日は司会を出来ないこともあり)ここぞとばかりにご挨拶。『旅立ち~足寄より~』の大東さんが本当に良かったので、以来、作品があれば必ず見るようにしている追っかけの僕としては嬉しい限り。

『オルドス警察日記』のQ&Aは、女優さんが遅れてきたり(本人はとても謝っていたけど、Q&A最中に遅れて入ってくるのはハプニング演出みたいで楽しいので、むしろ歓迎)、野上照代さんが客席にいらっしゃって発言なさったり、賑やかでとても盛り上がってよかった。

続いて、17時半から19時まで、マチュー・アマルリックの記者会見と、お客さんへのサイン会。さすがに昨日の興奮は収まったけど、やはり普通にマチューが「ここ」にいることが不思議でならない…。バタバタの中の決定と告知になってしまったけれど、今年はファンへのサイン会も実施することが出来て、本当にマチューとそのファンに感謝。

さて、記者会見は終始和やかに進んだものの、最後に、アラン・ドロンが極右政党を支持する発言をしたことに対し、何らかの抗議行動を取るつもりがあるか? との質問が出た。マチューはにわかに顔色を変えて、怒りを露わにし、極右政党に対する非難のコメントを発した。そして会見が終わると、にこやかにフォト・セッションに応じ、愛想よくサイン会に臨んだ。気分を害しながら無理やりの笑顔ではなく、普通に、瞬時に切り替えが出来ている。

映画祭に政治が絡むことのややこしさに対しては、東京国際映画祭も極めて敏感であるけれども、そもそも映画(祭)と政治は切り離せない側面もあって、ナイーブでばかりいることも難しい。マチューの瞬時の対応は、成熟した大人のそれであり、日本人で同じことをするのはなかなか簡単ではない。この話を書くと長くなるのでやめるけど(という書き方自体が既に一種の逃げであって、つまりは「簡単ではない」)、なんというか、記者会見でこういう話題が出ることは普通のこととして受け止める姿勢くらいは最低でも持っていたいと思う次第。

猛烈に頭を切り替えて、19時25分から、PFFグランプリ受賞作品の舞台挨拶司会へ。作品は『夜とケイゴカー』。10分程度で終えて、スクリーンを移動。

19時45分から、コンペティション作品の『馬々と人間たち』の上映後Q&A司会。この作品について話を聞ける日が、ついに来たのだ!登壇者は、ベネディクト・エルリングソン監督と、プロデューサーのフルズリク・ソール・フリズリクソン氏(彼は永瀬正敏さんが主演した『コールドフィーバー』の監督)。

もう何から聞いたものやら。なんだか、会場もうずうずしているのが伝わってくる感じ。やはり、何かすごいものを見てしまったな、という空気が蔓延している。Q&Aに臨む観客の顔の力が違うのが、司会席からよく分かる。これは素晴らしい。僕の期待以上だ!

馬にどのように演技をつけたのか? という完璧な導入質問が出たり、「もう訳が分からなくて困っちゃう」という女性客の心の叫びがあったり、北欧からの移住者(特に女性)がいかに馬との社会で重要な存在であるのかを説明したり、そして死に対する監督の考え方を問う質問があったりと、とても充実の内容であったのではないかな?

しかし、30分足らずのQ&Aでは全く到底足りない。監督の頭の中の片隅が少し覗けたに過ぎない。あのエピソードの数々はどうやって生まれたのか? 実話はあるのか? 役者たちは何者なのか? あのギャロップ(?)は何なのか??もう無数にある。あとQ&Aを5回くらいはやろう。でも、Q&Aを何十回やったところで、本質的なことに迫れるわけでもなく、ともかく大スクリーンで馬々の魅力に浸ることが理解への一番の近道のはず。日本の配給会社さんの英断を待つのみ。

終わってダッシュでPFFグランプリ上映会場に戻り、『夜とケイゴカー』の上映後Q&A司会へ。登壇者は、市川悠輔監督、俳優の板倉武志さん、活野創さん、富永茜さん。板倉さんと活野さんの活発なやりとりが楽しく、物静かな市川監督とコントラストが出来て、司会をやっていてとても楽しい。少し悪ノリして突っ込んでしまったりして、監督ごめんなさい。でも場内とても暖かく、とても成功した上映会だったのではないかな? また是非東京国際映画祭に戻ってきてください、とお願いし、QA終了。

それから、現代のインディペンデント映画製作勉強会とも呼ぶべき「独立映画鍋」とのコラボイベントで、「クラウドファンディング・リアル」というイベントが行われたので、その導入の司会を担当。土屋豊監督や、深田晃司監督といった東京国際映画祭と縁の深い監督たちや、先日終了したばかりの山形国際ドキュメンタリー映画祭の藤岡さんなどのトークに続き、「ネット上」のクラウドファンディングの「リアル」なプレゼンテーションを行う試みで、誠に残念ながら僕はプレゼンは見られずに移動。

プレスと海外ゲストとの交流パーティーが催されていたので、少しだけ顔を出してみる。馬々監督のベネディクトともう少し突っ込んだ話をしたり、『ルールを曲げろ』のベーザディ監督から同年齢であるアスガー・ファルハディー監督との縁の話を聞いたり、とても有意義ではあったのだけど、それ以上はあまりたくさんの人と話せず、少し無念。もちろん、僕は1滴も飲まず。

23時から、これまた本日待望の、『ブラインド・デート』のQ&A司会。レヴァン・コグアシュビリ監督の感じの良さは、本年ゲストのベスト級。めちゃめちゃ良い人オーラ発散。知的で、英語も的確、落ち着いていて、優しい。質問への回答も過不足なく、Q&Aにお迎えする人としては、完璧だ。

『ブラインド・デート』の「おかしな悲しみ」に会場全体が反応したようで、会場の一体感というか、雰囲気の良さは、今年1番ではないかな? 小さな作品だけれども、中身は極めて豊潤で、ユーモアを備え、そしてとても美しい。今回のQ&Aでは以上の側面は網羅された。

ショットの美しさと、テンポの良い脚本のバランスを保つ秘密についてさらに聞いてみたい。そして、作品に底流するグルジアの社会問題、特に日本人にとっては知識の無いグルジアの難民問題に触れずに本作を本当に理解することはできないはず。次回でどこまで迫れるか?(迫れたらブログで報告します)。

主役のアンドロさんも、映画からたった今抜け出してきました、という感じで、いるだけで不思議。劇中ではニコリともしないので、たまに壇上で笑うとそれだけで客席がほっとして、これでまた会場の雰囲気が良くなるという、素敵な時間だったなあ。

全て終わって0時過ぎ。事務局戻って、弁当を2個連続で食べて、少しダラダラして、ブログ書いて、現在3時半。引き上げよう。

(写真は、『馬々と人間たち』のベネディクト監督)
《矢田部吉彦》

関連記事

特集

【注目の記事】[PR]

特集

page top