【MOVIEブログ】正月休みに至福の映画本を(上)

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「ルイス・ブニュエル」(四方田犬彦著/作品社)
  • 「ルイス・ブニュエル」(四方田犬彦著/作品社)
  • 「マイケル・ムーア、語る。」(マイケル・ムーア著/満園真木訳/辰巳出版)
  • 「ファントマ 悪党的想像力」(赤塚敬子著/風濤社)
  • 「映画宣伝ミラクルワールド 東和・ヘラルド・松竹富士 独立系配給会社黄金時代」(斉藤守彦著/洋泉社)
  • 「アジア映画で<世界>を見る 越境する映画、グローバルな文化」(夏目深雪 石坂健治 野崎歓 編/作品社)
ブログの更新が滞ったまま、年末を迎えてしまった…。書きたいことはいろいろあれど、時間の使い方が下手で情けなくなります。個人的年間ベスト10も作らなくなって久しいし…。ということで、映画はキリがないので、正月休みに是非!なオススメ映画本について書いてみます。

「ルイス・ブニュエル」(四方田犬彦著/作品社)

まずは大著。四方田氏の超人的な執筆力(量)には圧倒されてばかりだけれど、そのどれもが読み応えがありすぎるほどあるので、新刊が出る度に手を伸ばさずにはいられない。今回は、ルイス・ブニュエルの全て。全ての作品を丁寧に解説するブニュエル入門書としても機能しつつ、詳細な伝記であり、そしてもちろん鋭利な映画批評の書でもある。とにかく、情報量の多さは圧倒的。まだ読了できていないので、感想を書くのは反則かもしれないけれど、とにかくブニュエルを知ってもらいたい!という四方田氏の愛が溢れる文章にあてられて、僕はもう今年の正月休みはブニュエル祭りにすることに決定。未見の作品を方々から入手して、散財中…。

「マイケル・ムーア、語る。」(マイケル・ムーア著/満園真木訳/辰巳出版)

最初はなにげなく手に取ってみたのだけど、これが読み応え抜群の傑作本だった!マイケル・ムーアの自伝なのだけれど、映画作りに関する本ではなく、彼が映画監督になるまでに送ってきた人生を語るのが主な内容。抜群の行動力と正論の理屈を振りかざして「大人」をやり込める性格(傍で見ている分には喝采を送るけど、絶対に部下に持ちたくない)がどのようにして形成されたか、その波乱万丈の展開が極めて面白いのに加え、本書は第一級のアメリカ現代史のドキュメンタリーたりえているのが素晴らしい。マイケル・ムーア(54年生)世代がどのような環境に育ち、そしてどのようにベトナム戦争やニクソンに対峙したかが、目に見えるかのように伝わってくる。そこはさすが映像作家。文章から映像が立ち上ってくるかのよう。やはり、いろいろな意味で、この人は不世出の天才なのだと思う。今年の目うろこ本。

「ファントマ 悪党的想像力」(赤塚敬子著/風濤社)

映画本のネタは、まさに無尽蔵なのだなあと感心した1冊(もっとも、本書は当初は学術論文だったのかな?)で、ファントマというのは、フランス映画で繰り返し描かれてきたダークヒーロー。僕は幼少の頃に見たルイ・ド・フュネス主演でジャン・マレが演じるファントマがトラウマ的に印象的で(おそらく『ファントマ ミサイル作戦』だと思う)、だいぶ後になってからファントマというキャラクターが映画史に持つ意味を知ることになるのだけれど、ともかく本著は徹底的に映画とファントマの歴史を追っていく内容。僕のようなファントマに興味のある人にはたまらないのだけど、そんな人が世の中に(日本に)どれほどいるのだろう?でも、そんなことは構わん!とばかりにファントマ研究に猛進する著者の徹底ぶりには脱帽だ。ダークヒーローはどうして人の心を惹きつけるのかという社会心理的(?)考察、あるいは、ベル・エポックの時代とファントマの姿の審美的な相性の分析など、多面に渡って見事な内容。赤い装丁が素敵で、手に取らずにいられない。僕の今年の映画本装丁大賞!

「映画宣伝ミラクルワールド 東和・ヘラルド・松竹富士 独立系配給会社黄金時代」(斉藤守彦著/洋泉社)

本著は外国映画が大元気だった70年代後半から90年代初頭にかけて、破天荒な宣伝戦略が展開された映画業界の舞台裏を取材したルポルタージュ本で、一気読み確実!あまりに面白くも懐かしい内容に、なんと時代は変わったことかと嘆息する暇もない。映画宣伝史上、最も有名なコピーかもしれない「決してひとりでは見ないでください」(『サスペリア』)がいかにして生まれたかを始め、あの映画この映画のエピソードが縦横無尽に語られ、各社のしのぎ合いや、今や伝説の宣伝マンの方々の奮闘ぶり(落胆ぶりも)もたっぷり。しかし、ただのエピソード集ではなく、本書はビジネス書と呼んでいいくらいの冷静な業界分析が行われている点で、真面目な必読本でもあるのだ。とはいっても、爆笑エピソードも満載で、マイケル・ホイが高木ブーに似ているから邦題がMr.BOOになっただなんて、知らなかったよ!で、本書が今年発表されたことは決して偶然ではないはずで、あの熱い時代を懐かしむと同時に、現在の映画業界で生きるヒント(と励み)ももらいたい!ちなみに、僕も『メガフォース』を見て、あまりのつまらなさに愕然としたひとりです…(この意味は本書を開けばすぐ分かります)。

「アジア映画で<世界>を見る 越境する映画、グローバルな文化」(夏目深雪 石坂健治 野崎歓 編/作品社)

本書は本日入手したばかりで、読むのはこれからなのだけれど、目次を見ただけで必読であることは一目瞭然。現在のアジア映画を3.11後の世界でいかに見るか(語るか)という主題を掲げつつ、基本的には現在のアジア映画をあらゆる側面から考察して紹介して語ってしまおう、という本であるからして、これは一家に一冊だ。執筆陣に(敬称略で)、四方田犬彦、市山尚三、石坂健治、野崎歓、宇田川幸洋がいる時点で既に必読であるし、気鋭の批評家萩野亮、インド映画はこの方を抜きにしては語れない松岡環、トルコ語通訳でもいつもお世話になっている野中恵子、さらには日本とイラン映画を結ぶ架け橋であるショーレ・ゴルパリアンまでもが参加とあっては、もうお見事。当面の間、アジア映画の地図として本書は必携となるはず。って、読まずにこんなに書いたらいけないですね。でも賭けてもいいけど、間違いないです。

(本稿、次回に続く!)
《矢田部吉彦》

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