【MOVIEブログ】30日~2日:ロッテルダム、ヨーテボリ、パリ

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Stella Cadente
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週末にかけて2回移動があったので、簡単にその記録を。

【30日(木曜日)】
朝イチの9時から、ロッテルダムのコンペ部門の『Falling Star(原題:Stella Cadente)』(写真)というスペイン映画へ。19世紀後半にイタリアからスペインにやってきて王位に就いたアマデオ1世の姿を描いたコスチューム・ドラマ…、ではあるのだけれど、実体はほとんど実験映画の佇まい。

というのも、ほぼ政治をさせてもらえず幽閉に近い状態だった王のフラストレーションを、カラヴァッジオ的というかなんというか、ともかく絵画的な構図と色とで淡々と描いていく実験的な作品で、メタファー的な性器の露出も厭わない下ネタも満載、そこにフレンチポップスはガンガン流れるし、ミニマルだけど奇妙奇天烈な世界が展開する…。

これを正しく評価するのは大変だろうなあと思いつつ(そして審査員の杉野希妃さんに心の中でエールを送りつつ)会場の外へ。本当にあっという間だったけれど、僕の今年のロッテルダムはこれでおしまい。楽しいことは、あっという間に終わってしまう…。夏休みの無い僕にとっては、ロッテルダムが実質的な夏休みなので、ああ、本当に悲しい。

ようやく改修工事が終わったロッテルダム駅(6年くらい工事していたのではないか?)から、アムステルダムのスキポール空港に行き、15時の便でスウェーデンはヨーテボリへ。

ヨーテボリに16時45分着。雨が多かったロッテルダムとは違い、雪景色だ! やっぱりこうではなくてはね。気温はマイナス5度くらいとのこと。ヨーテボリ映画祭に併設されている「北欧映画マーケット」が用意してくれた車に相乗りして、ホテルへ。

19時から、マーケットのオープニングレセプション。あまり知っている人がいないなあ、とぼんやりしていたら、日本の某宣伝会社の某女史を発見! どうしてもパーティーが得意になれない僕としては、心の底からホッとした…。が、夜はホテルで仕事をするつもりだったので、あまり深酒も出来ず、早々に切り上げて、部屋へ退散。

【31日(金曜日)】
6時起床。昨夜やりきれなかったパソコン仕事をバタバタと続け、朝食をはさんで、8時45分には外へ。

ホテルから歩いて5分もかからない場所にあるシネコンに行き、マーケット試写で9時からノルウェイ映画を1本、そして11時からスウェーデン映画を1本鑑賞。

僕は北欧映画がとても好きなので(もっとも、好きでない地域や国などないけれど)、もうかれこれ6~7回(もしかしたらそれ以上)ここヨーテボリの「北欧映画マーケット」に参加していて、その最大の目的が「Works in Progress(=現在仕上げ作業中の作品)」のプレゼンテーションを見ること。今年の東京国際映画祭に、出来たてホヤホヤの状態で招待したくなるような作品が出てくるかどうか、もう楽しみでたまらない。

北欧5か国(デンマーク、ノルウェイ、スウェーデン、フィンランド、そしてアイスランド)から、監督やプロデューサーが登壇して、1組15分の持ち時間の中で、現在仕上げ作業中の作品のクリップを見せたり、解説したりして、完成予定時期や公開時期をアナウンスする。彼らの目的は、海外販売代行を請け負ってくれるワールドセールス会社を見つけることや、映画祭プログラマーなどに興味を持ってもらうこと。なので、僕も真剣にならざるを得ない、というわけだ。

で、今日はそのプレゼン企画の第1日。13本の企画がプレゼンされる予定の中、それはいきなりしょっぱなに来た! 2011年に東京で監督賞を受賞したスウェーデン映画の『プレイ』の衝撃を覚えている人も多いのではないかな? そのルーベン・オストルンド監督の新作がもうすぐ完成する!

『プレイ』が観る者に与える不快感のインパクトは強烈で、その不快感が映画の肯定に繋がってしまう離れ業を達成したオストルンド監督の才能に、誰もが驚愕したはず。彼の映画の不快感の始末が悪いのは、暴力などの激しい描写を見させられるのではなく、自分の心の中の触れて欲しくない部分を剥き出しにされてしまう気持ちになってしまうからで、新作も全く例外でない…。数分の映像を見ただけで、ああこれはヤバい、とつぶやいてしまう。

完成にはもう少し時間がかかるみたいだけど、カンヌに間に合うのかどうか、といったところかな。えー、ここに書くのは完全にフライングだけど、僕の中ではもう決定。ハハハ。

続々とプレゼンが行われていく。いやあ、今年はどれもこれも面白そうで、これは困る! 例年、これは追わなくていいや、という作品も多いのだけれど、今年は追いたくなる作品ばかり。んー、これは大変だ。

僕は北欧映画が好きだ、なんて書きつつも、各国の文化の違いなどを知っているわけでもないし、正直言ってフィンランドとノルウェイの区別なんてひとつもつかない。けれど、今年のプレゼン作品の中で、スウェーデン人になりたがっているノルウェイ人のコメディーとか、ノルウェイとスウェーデンの力関係をネタにした会話で爆笑を呼ぶスウェーデン映画とか、この地域の微妙なヒエラルキーやコンプレックスみたいなものが垣間見える作品が何本かあるようで、とても興味深い。

例えば、ある作品の抜粋シーンで、今やスウェーデンより勢いがあると言われるノルウェイに関してどう思うかを聞かれたスウェーデンの女性の答えは、「嬉しいわ。メンタルのハンディがある従弟(いとこ)が、宝くじに当たった気分よ(Mentally challenged cousin who won the lottery)」。もちろん、場内爆笑。とても勉強になるし、むしろスカンジナビア地域以外の人が見るべきなのかもしれないな。

そういえば、『Beatles』というノルウェイ映画のプレゼンがあり、この作品はビートルズの「サージャント・ペッパー」の原曲を使用しているのだけれど、監督が登壇してプレゼンして曰く「ビートルズの原曲を利用するのは映画界で不可能とされていましたが、唯一の例外が日本の『ノルウェイの森』で…」と発言したのは妙に嬉しかった!

夜は19時半からカクテル・パテーィーがあったので、午後にプレゼンした人で興味あった人に話しかけたりして、22時には部屋に引き上げて、久しぶりに湯船に浸かったりしてのんびり。今年あてがわれた部屋は、湯船があるので嬉しい反面、外に面した窓がない(窓は廊下に面している)ので息が詰まる…。どんなに眺めが悪くても、外の光が入る窓が欲しい…。

【2月1日(土)】
昨夜は雪だったのに、今日は雨。気温も確かにちょうど0度。雨は嫌だなあ。

今日は朝の9時15分から、「Works in Progress」プレゼンテーションの2日目。今日は7企画。追わないでいいやと思った企画が2つだけで、相変わらず今年はレベルが高い。そんな中でも、やっぱりスウェーデンとデンマークに追いたい作品が多い。さて、何本秋の東京で紹介できるだろうか!

11時にプレゼンが終わり、マーケット上映を見ることにして、まずはデンマーク映画『The Cartel』へ。公共事業入札への談合に参加しない建設会社経営者の苦悩を描く告発ドラマで、まずまずの出来。主演はデンマーク映画でしょっちゅうお目にかかるアンダース・W・ベアテルセン(『幸せになるためのイタリア語講座』『ミフネ』などでお馴染みですね)で、手堅い演技で退屈させない。

続いて13時から、ごちゃごちゃしてサッパリ話が分からないスウェーデンのスリラー。ある強盗事件の後日談を描く内容なのだけど、肝心の強盗事件の内容が全く説明されないので、なんだかもう全然分からない。なんだったのだ、これは。

15時から、昨年のモントリオール映画祭で審査員特別賞を受賞している『A Thousand Times Good Night』というノルウェイの作品で、主演はジュリエット・ビノシュ。ビノシュが演じる、恐れを知らない有能な戦場カメラマンが、彼女の身を案じる家族の気持ちを大事にして仕事を辞めるか、それとも自分の信念を捧げた仕事を優先するか、そのジレンマに悩むお話し。

あくまで僕の極端な印象論だけれど、世の中のドラマ映画の80%くらいが家族を巡る物語であり、その99%が、家族以上に重要なものはない、というテーゼの上に成り立っている。その点、本作は「家族以上に大事なものは存在するかもしれない」というテーマを提示している点で極めて新鮮なのだけれど、肝心のドラマのおぜん立てにリアリティーがなく、見ていていささかシラケてしまうのが残念。

17時に終わって外に出ると、また雨。でも、今日はもうこれで終わりなので、時間が出来た!ということで、おみやげ買いたいと思って商店街に行ってみると、ほとんどの店が土曜日は17時で閉店!まったく、ヨーロッパってこれだからなあ!

【2日(日)】
本日は朝イチで見る作品がないので、朝はパソコンに向かって少し仕事をしたりして過ごし、10時半にホテルを出て、空港へ。

ヨーテボリ空港で、去年の東京国際映画祭で監督賞を受賞した『馬々と人間たち』のベネディクト監督とようやく再会! 会えるかなあ、と思いながらニアミス続きだったので、ああ、良かった。ヨーテボリ映画祭でも観客賞と国際批評家連盟賞の2冠に輝いたとのことで、素晴らしい。

あ、そうだ。『馬々と人間たち』は、2月8日から渋谷のユーロスペースで開催される「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル2014」でも上映されるので、見逃した方はこの機会に是非! 8日(土)15時半、12日(水)13時半、14日(金)19時、の3回上映!

15時に、パリはシャルル・ドゴール空港に無事到着。荷物が出てくるのを待っている間、アメリカのトライベッカ映画祭のプログラマーと立ち話。アート系映画の未来について、あまり楽観的になれない話を10分ほど交わし、少し気分が暗くなる…。

気を取り直して、宿へ行き、それから友人と合流して、お互いの近況報告をしながら18時から21時くらいまでゆっくりと夕食。まともに夕食を食べるのは、日本を出て以来だから、えー、12日振りだ!

いささかお酒を飲んでしまい、ゆらりと帰ってパソコンを開いたら、フィリップ・シーモア・ホフマンの訃報に接して愕然。なんということだ…。信じたくない…。
《矢田部吉彦》

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