【インタビュー】桐谷健太 アンチ予定調和! ライヴに身を置き、流れ続ける男の矜持

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桐谷健太/WOWOWドラマW「埋もれる」/PHOTO:Naoki Kurozu
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桐谷健太は自分で出演作品を選んだことがない。「基本的に決めるのは事務所。自分が『やりたい』と思って選んだら偏りますよ。『これやればモテるだろ』とかね(笑)」。そんな風におどけつつ、「事務所が選んだ作品は全て『プチ挑戦状』だと捉えてますよ」と語る表情は最高に楽しそうだ。

そんな桐谷さんの最新主演作「ドラマW 埋もれる」がWOWOWにて3月16日(日)に放送となる。自身が演じた主人公を「正義に縛られた男」と表現する桐谷さん。「脚本の読み方はだいぶ変わってきた。ようやく演じることが面白くなってきた」と語る34歳はどのように本作に臨んだのか?

2013年の「第6回WOWOWシナリオ大賞」を受賞した脚本(香坂隆史)を映像化した本作。自社の食品偽装を内部告発したことで会社を追われ、妻子とも別れることになった北見。故郷に戻り、市役所に再就職するが、そこでも市長を中心に不正は存在し…。ゴミ屋敷に暮らす老婆の存在、初恋の女性との再会などを経て社会派のドラマに徐々にミステリーの様相が絡み合っていく。

本作のメガホンをとった吉田康弘監督と桐谷さんは、20代前半で井筒和幸監督の『ゲロッパ!』で助監督と俳優として現場を共にして以来、同い年で共に大阪出身ということもあり、十年来の友人関係。いつか一緒に現場を…という思いが本作で実現した。

「5~6年前かな? よっしー(=吉田監督)と電話で『人生で“代表作”と呼べるものを1本でいいから作らないといけない』という話をしたんです。それがオレの心にはすごく残ってて、今回、こうやって一緒にやることになったとき『よっしー、あのときの会話、覚えてるかな?』って思いました。彼はすごく才能があるので『あぁ、こいつ、アカンようになったな。『ゲロッパ!』の勢いなくなってるやん』とか『あのときと一緒やん』と思われたくなかった。いまのオレにしかできないこと――もうあの時のことはできないけど、あの時の自分にもいまのオレは出来ないから――いましかやれないことをやろうって思った」。

北見は「正義のため」に告発するも、結果的にそれは職場の仲間や家族の人生を狂わせることになり、苦悩と後悔を抱え続けることになる。桐谷さんは北見の行動について「傍から客観的に見たら正しいことをしている。こういう人がいるから世の中が変わっていく」と語るが、演じた“当人”の身としてまた違った感情をも持っている。

「自分の中の正義感、『正義でないといけない』という感覚に縛られている、固い男ですよね。『正義のために』と言いつつ、フタを開けてみたら誰のためのものだったのか? 誰のためにもなってなかったという。もちろん、こういう人がいないと歴史は変わっていかないんですが、『でも正義を貫いて傷つくのは自分なんだ』と気づいたときの怖さがありますよね。『そうすべきだ』と言ってた周囲の人間はふと見渡すと誰もいなくなってるときの絶望を北見は経験してしまうわけですから」。

演じる上では、あまり台本を読み込み過ぎず、ノープランで現場に入った。北見は、故郷へと帰り、新たな生活を営む中で徐々に自らの内にある“後悔”や“苦悩”といった感情に直面していくことになるが、桐谷さんも演じながら彼の感情を追体験していくようだったという。

「あのラストシーンも自分でも『どうなるんだろう?』と思いつつ、やってみたら初めてああいう感じになって、終わってからビックリしましたね。『なんや? あの感じは!』って(笑)。まさに北見がいろんな人と会ったり話をする中で『あれ? オレは後悔してるんだ?』と後から気づくように、演じながら『こういう感情だったのか?』とオレ自身が気づくような…それはすごく面白い経験でしたね。

やっぱり、『ここはこうしよう』という道筋を最初に立てていたら、“埋もれない”と思うんですよ。今回はあのゴミ屋敷を歩きながら『埋もれてもいいか』って思いながらやってました。撮影のスケジュールもタイトで、フラフラになりつつ、まさに呼吸するヒマもないくらいで濃い現場でしたね」。

まさにこの「あまり考え過ぎず、作りこまずに現場に入る」というのが、冒頭にも語っていた、若い頃と比べての脚本の読み方の変化、役柄へのアプローチの変化だという。かつては脚本を「ムチャクチャ読み込んでいた」という桐谷さんだが、「人生と同じでその瞬間、何が起こるか分からないという感覚でやった方が面白い」とニヤリ。“ライヴ感”が生み出す感覚に麻薬のようにどっぷりとハマり、魅了されてしまった。

「若い頃のやり方は、思い描いた絵に合わせてはめ込んでいくような感覚で、狙い通りにうまくいったこともあるし、そういう時期もあってよかったと思ってますが、それは自分の中で用意がないと不安だったということなんでしょうね。やっぱり考えてしまうと、作為的なものが見えちゃうんですよ。テストの方がよかったとか、本番で良いものが出せなかったとか、どこか穴に狙って入れるような感覚になって…。

そうなると、想像を超えないんですよね。最近は、相手に何か言われてセリフが出てこなくて(苦笑)、『うわっ! 何て言い返そう…』って思ったら出てきたり、そういうテンポが崩れた生々しさに喜びを感じます。そこでやってることを盗んで、撮ってもらうような感覚です」。

いままさに行なっているインタビューという作業も、その場で生まれる“生”の言葉が出てくるからこそ面白い。こちら側の話で恐縮だが、事前に用意してきた質問への答えよりも、相手の言葉に反応して引き出した答えの方がずっと面白かったりする。

「そうなんですよ。家で質問を考えてくると、その場の状況によっては聞かなくてもいい質問のはずなのに、ボールを持ってるとどうしても『投げなきゃ!』って気持ちになって聞いちゃったりするものでしょ(笑)? 芝居もそう。用意して来ると『出さなきゃ』って思いがちだけど、それが邪魔だったりするんです。最近では、トーク番組でも事前には一切、質問の内容とか聞かないようにしてますね。その方が嘘もないし、自分でも『うわっ!』って思うような面白い答えが出てくるんですよ」。

正義に、自分自身に“縛られた”男を演じたが、「オレ自身は新しいこと、変わっていくことにビビらないで生きたい」と何にも縛られることなく自分の道を歩む。

「東京に出てきて16、7年。気づいたら平坦になっている瞬間というのがあるんですよ。でもそこで埋もれたくない。安心できる場所の方が人間、落ち着くものですが、そこにずっといたら肩凝るし(笑)、滞るでしょ? 子どもの頃に持った『絶対、ビッグになってやる!』という思いや『やってやるぜ!』という強い気持ちはずっと抱えつつ、常に流れていきたい。人間、こっちを選べばあっちは取れないって思いがちですが、僕はそうやって、死ぬまで全部取りに行きたいです」。

まさに“転がる石に苔むさず”――。この格言をバンド名に冠した平均年齢69.5歳の悪ガキ「ザ・ローリング・ストーンズ」が先日、来日しパワフルなライヴを繰り広げたばかり。桐谷さんが彼らの年齢に達するには、これまでの人生の倍以上、35年ほどの時間があるが、ずっと転がり続ける姿を見せ続けてほしい。

■Hair Making
Tastuya Nishioka(vitamins)

■Stylist
Yusuke Okai
《photo / text:Naoki Kurozu》

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