【インタビュー】アカデミー受賞作『それでも夜は明ける』監督が明かす…「不思議な縁」

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スティーヴ・マックィーン監督『それでも夜は明ける』/(C) KaoriSuzuki
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  • キウェテル・イジョフォー/『それでも夜は明ける』-(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.
  • マイケル・ファスベンダー/『それでも夜は明ける』-(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.
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  • ルピタ・ニョンゴ/『それでも夜は明ける』-(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.
  • ブラッド・ピット/『それでも夜は明ける』-(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.
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  • ベネディクト・カンバーバッチ/『それでも夜は明ける』-(C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.
秀作がひしめき、いつになく混戦模様だった第86回アカデミー賞で、見事「作品賞」を受賞した『それでも夜は明ける』。黒人監督の作品が、「作品賞」を受賞するのは史上初とあって、アカデミー賞の歴史を塗り替えたとも言われています。スティーヴ・マックィーン監督は、いかにしてこの快挙を成し遂げたのか。作品に込められた想いを聞いた。

本作は、自由の権利を得ていた黒人音楽家ソロモン・ノーサップが、1841年のある日突然誘拐され、奴隷として過ごした12年の歳月を記した回想録を映画化したもの。観ているのが辛くなる場面も多い作品だ。

「作る必要がある映画だった。奴隷制度についての映画を作る必要があると決断したんだ。ホロコーストについての映画を作る決断をするように。そして、自分の目的は何かを決める必要があった。僕の目的は、映画のために、そして実在したソロモン・ノーサップのために、僕ができる限りの最善を尽くすことだった」。

この映画を作る前から、奴隷制度についての映画を作りたいと思っていたというマックィーン監督。

「映画の歴史には穴があったから、奴隷制度についての作品をとても作りたかったんだ。それで、僕は自由な男が誘拐されて、奴隷にされるというアイディアを考えた。すると何が起きたかというと、僕の妻が『なぜ奴隷制度に関する本当の話、歴史的な話を探してみないの?』と言ったんだ。僕たちは2人でリサーチをして、妻が『12 Years A Slave』という本を見つけた。本を開いて読み始めると、ページを繰る度に、僕にとって驚くべき新事実が明らかになっていった。そして、本を読み終えるや、僕は怒りを覚えたんだ。自分自身に対してね。何故、この本のことを知らなかったのかって。それから、誰もこのことを知らないことに気づいたんだ。それがこの本を映画化する理由になった。僕の情熱になったんだよ」。

主人公との出会いには、不思議な縁を感じたという。

「突然、数年間考えてきたことが、僕の手の中にやってきたんだ。最高だったよ。ある意味、ソロモンが僕のところにやって来たと思っている。奇妙だけどね。何故なら、時々、人間が何かをものすごく欲しいと思ったら、それを引きつけることになると思うからなんだ。向こうからやって来た、そういう風に感じるんだ」。

本作で語られている事実の重要性についてはこう話す。

「まだほとんど語られていない歴史のある部分。北部から誘拐された自由の身のアメリカ人についての話なんだ。アフリカで誘拐されたり売られたりして、アメリカに連れて来られた人についてのストーリーは以前語られている。でも当時、北部にいるアフリカ系アメリカ人の10%が、自由の身分で生きていたことを知らなかった人は多いんじゃないかと思うよ」。

主人公であるソロモンというキャラクターについては、どう考えているのだろうか?

「ソロモンが素晴らしいのは、彼には美しい人間性があるということだよ。彼は、限りなく非人道的な状況の中、それを持ち続けなくてはならなかったんだ。しばらくすると、それは主演のキウェテル・イジョフォーにとってとても重い負担になってきた。とても、とても骨の折れることだった。とても、とても疲れることだったんだ。彼には、ただ僕たちみんなができるサポートと愛が必要だった。彼が目標にフォーカスし続けることができるようにね。彼はこの映画を背負わないといけなかったんだ。彼は、彼の顔と、目と、ソウルでこの映画を背負っているんだよ。彼は、彼の魂でこの映画を背負っているんだ。難しいことだね」。

マイケル・ファスベンダーとは、デビュー作から常に組んできた、まさに盟友。今回で3度目の仕事となる。

「マイケルは僕の兄弟だし、素晴らしい俳優だ。僕はどの映画も、彼と一緒に作る。それにエップスは彼にぴったりの役柄だった。彼にはいつも新しい発見がある。彼は、驚かせることをやめない。彼はミュージシャンみたいなんだ。『OK! その演技から抜け出して』と言うと、彼はすぐにそれができる。一体どうしてそんなことができるんだ? という感じだよ。彼は本当にすごいよ。とても尊敬している。彼は天才的な役者だよ。彼に映画の中で最も難しい役を与えると、彼は美しいものを返してくれる。本当に素晴らしかった」。

今回、出演者のひとりであるブラッド・ピットも製作に参加し、作品の実現に大きく貢献した。

「僕が初の長編映画HUNGER/ハンガー』を作った頃から、彼の製作会社(Plan B Entertainment)が僕との仕事に興味をもっていてくれたんだ。とても熱心だったから、奴隷制度についての映画を作りたいというアイディアを話した。彼の反応は“どうしてホロコーストについての映画はあるのに、奴隷制度についての映画はなかったんだろう”というものだった。そして『やりましょう!』と言ってくれたんだよ」。

撮影期間中、最も大変だったのは「人々をまとめ続けることと、強烈な暑さに対応すること」と話す監督。「実在の大農園で、凄まじい暑さの中、毎日20時間、綿を摘む仕事をしていた人々のことを考えた。凄いことだ。同様に全員をまとめ、グループをひとつにし、撮影の間中彼らの正気を保つ。良い時も悪い時も、全員をひとつにまとめることが最大の試練だったよ」。

多くの困難を経て生まれた本作が、アカデミー賞で「作品賞」を獲得したことは記憶に新しいが、受賞前、「勝利について言えることは、我々が自分たちの映画を作ったことがすでに“勝利”だということだ。作るのは不可能な映画と言われていた。だから実際に映画を作れて、配給元を得られたことに勇気づけられた。ほかのことは考えてもいないよ」と語っていたマックィーン監督。

「人々はこの映画を受け入れる準備ができていると思う。黒人少年トレイヴォン・マーティン君が自称・自警団に射殺された不幸な事件もあるし、いまは黒人のオバマ大統領の時代でもある。多くのイベントや、多くの記念日、奴隷制度の廃止記念、ワシントン大行進記念もある。だから人々はこれまでになく活気づいていると思う。我々がこの映画にその機運を活かすことができ、人々がそれに反応してくれることを願っているよ」。
《text:June Makiguchi》

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