【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day3

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Blue Room
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16日、金曜日。6時起床で、パソコン叩いて、7時半には外へ。カンヌは今日も晴れで、気持ちがいい! ただ、気温は低めで、長袖は欠かせない。

8時半の上映に7時40分から並んだものの、定刻になっても列は動かず。結局、今日は横の会場で行われる9時からの臨時上映に誘導されることになった。やっぱりこういうことなのだな。

そうやって観た本日の1本目は、コンペ部門でアトム・エゴヤン監督の『Captives』で、子どもの誘拐監禁事件を背景にした被害者家族と警察官たちの、長年に渡る苦悩を描く痛ましいドラマ。スリラーというよりは、それぞれの心理を描く人間ドラマで、白く寒々とした風景の中で起きる子供の悲劇という点ではまさに『スウィート・ヒアアフター』の世界。ちょっと不満な点があるにはあるのだけれど、何と言っても犯人役が気持ち悪くて非常に不快なので(映画としては成功という意味)、ぐいぐい見せてくれる。

ダッシュで会場を移動し、続いて11時から「ある視点」部門でマチュー・アマルリック監督新作の『The Blue Room』(写真)。ジョルジュ・シムノン原作の事件もので、マチュー扮する主人公の男性が不倫の果てに起きた出来事で警察に尋問されていく物語。果たして彼は何故尋問されているのか…?

事前に予想されたエロチシズムは一部だけで、情念の行方を冷静にふり返る大人のスリラー。下手したら火サスになってしまう内容が、ヒッチコック的でシャブロル的な格調の高さが漂う演出がさすがだ。マチューの大人の演出とキレのいい編集(上映時間76分)を堪能し、クラシカルで洗練された映画の醍醐味が味わえる1本。

マーケット会場に行き、アジア系の会社とミーティングが3件。いずれも重要な相手なので、腰をすえてじっくり話をする。かなりそそられる映画の話がいくつかあり、上手く進みますように…。

今日のミーティングはこの3件だけで、15時から上映に戻り、コンペでヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『Winter Sleep』へ。堂々3時間15分に渡る、壮大な会話劇。ジェイラン特有の粘り腰な演出がいかんなく発揮された、あまりにも濃密な3時間15分だ。一瞬たりとも飽きることがない…。

山中でホテルを営む元俳優で資産家の初老の男性を中心とした愛憎のドラマ、と要約するのは乱暴か。登場人物間の果てしない会話が中心で、軽い会話がいつしか理屈っぽい言い合いとなり、本音が剥き出しになり、やがて人間の本性が露呈していく展開。究極的には人間のエゴを問い詰めていく内容で、いやはや、滅多にお目にかかれる映画ではない。ジェイラン、まさに鬼才と呼ぶにふさわしい。

上映終わって18時半。よろよろと外に出ると、知り合いの配給会社の方に会ったので、しばし立ち話。そして朝から何も食べていないことを思い出し、宿に戻ってサンドイッチを頬張って、また会場へ。

19時45分から、「アウト・オブ・コンペ」と呼ばれる特別上映的なカテゴリーに入っている『Red Army』というドキュメンタリー映画へ。ソ連時代のアイスホッケーの大スター選手へのインタビューや記録映像を中心にした構成で、共産主義体制に翻弄されたアスリート達の姿を紹介する一方、見事に現代史の1面を切り取っており、実に面白い。

続いて22時から、「ある視点」部門で『Amour Fou』というオーストリアの作品。監督のジェシカ・ハウスナーは『ラヴリー・リタ』や『ルルドの泉で』などが日本でも公開されていて、新作があれば、僕もやはり観たくなる注目監督のひとりですね。

19世紀初頭と思われる時代を背景にした、何とも個性的な時代劇で、女性に心中を迫る男と、それに応えようとする女との、不思議な物語。パステル調の淡い色彩やシャープな画面作りに気を取られ、そして文学調のセリフ回しに戸惑っているうちに、気づいたら監督のワールドに取り込まれてしまう。

それにしても、朝からエゴヤンに、マチューに、ジェイランに、ハウスナー。全く何とも贅沢だ。それぞれが比類のないスタイルを確立していて、作家主義カンヌの神髄を味わったような1日だった…。

0時に宿に戻り、サラダをポリポリかじり、ちびっとビールを飲んで、これ書いて、ああもう1時半。寝ます。
《矢田部吉彦》

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