【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day4&5

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White God
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17日、土曜日。今日も晴れ。今年は散々悩んだ末にランニングウェアとシューズを持参しなかったことを激しく後悔しながら、7時半に外へ。

1時間列に並び、9時からコンペでベルトラン・ボネロ監督の『Saint Laurent』へ。今年はイヴ・サン・ローランの映画が2本競作のような形で作られていて、僕はまだもう一本の方を見ていないけれど(カンヌで上映されるわけではない)、見比べるのも話題になりそう。で、そのもう一本の方は、サン・ローランの長年のパートナーであったピエール・ベルジェの視点から描く内容とのことで、コマーシャルな作りになっていると聞いているけれど、こちらボネロ版は、実に徹底して作家映画になっていた!

客観性を保って人物像を描く試みと言ったらいいだろうか。観客がサン・ローランに感情移入する余地はあまり与えられていない。というのも、サン・ローランが酒や薬物に傾倒する過程は描かれるけれど、どん底状態は描かれない。自分のクリエイティビティを脅かすほどの恋人との深い関係の過程は描くけれど、破局時の修羅場は描かない、など、徹底して安易なクライマックスを避けたストイックな姿勢が徹底しているのだ。

背景説明も極力排されている。しょせん修羅場は映画的な想像の産物なのだから、外から伺うことのできる過程を丁寧に描くことでボネロなりのリアリズムを追求した、ということだろうか。美術や、音と音響が素晴らしいのはボネロならでは。自分の才能の囚人となってしまったサン・ローランの闇をいかに描くか、その演出の意図などを考えながら見ると一層面白い。凡百のエンタメ伝記映画の上を行く、ピュアな作家映画だ。

2時間半を堪能し、11時半から5社とミーティング。

屋台のバゲットサンドイッチをかじって、14時から「ある視点」部門で『The disappearance of Eleanor Rigby』というアメリカ映画。主演にジェイムズ・マカヴォイ、共演にイザベル・ユペール、ウィリアム・ハートなどを迎えた、新人監督ながら豪華キャストで、内容は若い夫婦がある危機を乗り越えようと、もがくドラマ。

要所に気の効いた描写があって、好きになる人もいるのだろうけど、僕は人物設計を含めてどうにも類型的でシラけてしまった(ユペールがフランス人の母親役で、片時もワイングラスを手放さない設定ってどうなのよ、とか)。

続けて16時半からから、ハンガリーのコルネル・ムンドゥルツォ監督新作で『White God』(写真)という作品へ。ムンドゥルツォ監督は過去に2作がコンペに入っていたけれど、今作は「ある視点」での参加。で、結論から言うと、僕は今作が1番好きだ!

いたいけな少女が、愛犬と引き離されてしまい、少女と愛犬のその後の日々を暖かく見守る作品…、と途中まで思わせながら、突然作品はとんでもない方向に転換する!もう、びっくり仰天。口をあんぐりと開けたまま、見入ってしまった。これは面白い。今まで見たことのないものを見せてくれる映画に出会える歓び。今年最大のサプライズのひとつだ。いやはやもう、文字通り理屈抜きで素晴らしい!

夜は、日本の配給会社の方が主催するディナーに招待して下さったので、久しぶりに美味しい食事を頂く。従って、夜の上映はパス。そして、ワイン飲み過ぎで、0時過ぎに宿に帰って即ダウン。

明けて18日、日曜日。本日も快晴なり!本当に去年と大違いだ。ただ、毎日書いているけど、風が冷たくて結構寒い。劇場内も超寒いので、セーター持って来てよかった。

今朝も7時半から並び、9時からコンペ部門でトミー・リー・ジョーンズ監督新作の『The Homesman』に入場。アメリカの開拓時代を背景にした時代劇で、3人の精神に異常をきたした女性を遠くの土地に送り届ける仕事を請け負ったヒラリー・スワンク扮するヒロインと、彼女の旅を助ける流れ者のトミー・リー・ジョーンズの物語。

西部劇特有の広がりのある映像も素敵だし、役者がいいので見応えがある。ただ、映画の肝となる、ある出来事に納得がいくかどうかがこの映画の評価の絶対的な決め手で、これは絶対に書けないので難しいのだけど、僕はあまり説得されず…。むむー、と考えながら外へ。

それにしても朝のこの臨時上映の会場の寒いことといったら。凍えてしまう!外は素晴らしい青空で暖かいのだけど、風は冷たいし、日陰に入ると寒い。なかなか体温調整が難しい…。絶対に風邪をひくわけにいかないので、とにかく油断しないように気合いを入れ続けるしかない。

11時半から、欧米系の会社8社と連続でミーティング。

16時半に上映に戻り、コンペのイタリア映画で『The Wonders』へ。監督はアリーチェ・ロルヴァケル。ちなみに、女性監督でカンヌのコンペに入っているのは、彼女と河瀬直美監督のふたり。今年の審査委員長はジェーン・カンピオンで、彼女はカンヌのパルムドール(最高賞)を受賞した唯一の女性監督だそうな。え、ホント?と疑ってしまうのだけど、本当かな?で、そろそろ二人目を、と彼女が考えるかもしれず、河瀬さんとアリーチェにチャンスがあるかも、と噂する人もまわりにチラホラ。もちろん、映画の出来に女も男もないとは思うけれど、過去66回の歴史でパルムの女性が1人だけというのがいささか異常に思えるのも確かで、さて、どうだろう。

『The Wonders』、パルムドールに届くかどうかは微妙なところだけれども、十分に個性的な仕上がりで、監督の個人的な経験に基づく視点と、普遍的な家族の物語がうまく融合し、独自の世界が展開する秀作であると言ってよさそう。

上映終わり、19時にフランスの映画会社が主催する小規模のカクテルに顔を出してみる。目的はアルゼンチンのディエゴ・レルマン監督に再会することで、彼は「監督週間」に新作が選ばれているのだ。ディエゴは、『隠れた瞳』で2010年の東京国際映画祭のコンペ部門に参加してくれて(それ以前から知り合いであったけれど)、新作が楽しみなひとり。やあやあと久しぶりの再会を祝して、僕は5分ほどで退出。

19時半から、韓国の映画会社の人たちと韓国料理屋さんでディナー。通常カンヌの夜は上映に専念することがほとんどの僕としては極めて珍しいことなのだけど、とてもお世話になっている方々であり、こういう場は絶対に必要なのだ、と今さらながら改めて痛感。とても有意義な時間になったし、何よりもプルコギがとても美味しくて幸せ!

辛くておいしい韓国料理を目の前にしてビールが我慢できるほど僕は人間が出来ていないので、小瓶を2本ほど頂く。そのまま22時の「ある視点」部門の上映へ。ほろ酔いでごめんなさい…。

見たのは『Beautiful Youth』というスペインの作品。監督は07年に『La Soledad』でカンヌに参加していたJaime Rosales(ハイメ・ロザレス、でいいのかな?)。現代スペインを舞台にした若いカップルが経験する物語。貧困層ではないものの、かといって将来の夢を描ける金があるわけでもない二人が、ポルノビデオに出演し、そして女性は妊娠して出産する…、という展開。残念ながら、僕にはいまひとつ響かず。

0時に上映終了。外に出ると、寒い!と天気の話ばかり書いてますな。明日は雨らしい…。宿に戻り、これ書いて、今日も1時半だ。そろそろダウン。

さて、カンヌも序盤が終わり、そろそろ中盤戦に入ります。気合い入れて行こう!
《矢田部吉彦》

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