【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day7

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Deux jours et une nuit
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20日、火曜日。快晴復活!気温も上昇。ようやくセーター抜きで大丈夫そう。やっぱり天気がいいと気分もあがりますね。本日も6時起床、7時半に外に出て、屋台でコーヒーとパンを買って、会場へ。

1時間半並んで、9時からコンペ部門のダルデンヌ兄弟新作の『Two Days, One Night』(写真)。正直に言うと、カンヌ常連のダルデンヌ兄弟に対してはさほど事前に興奮していなかったのだけれど、少しでも軽んじていた自分を叱りたくなるくらい、やはりダルデンヌは素晴らしかった!

マリオン・コティアール扮するヒロインが、鬱病を患って仕事を休業した後、復職しようとする。しかし同時期にリストラ計画が持ち上がり、彼女のリストラに同意する代りに1,000ユーロのボーナスを受け取るか、それとも彼女の復職に同意してボーナスを放棄するかを、会社の方針によって職場の同僚たちが投票することになる。結果、多数決で彼女のクビが決まる。以上が、物語の前提。

映画は、投票に不正なプレッシャーがかけられていることが判明し、再投票の実施が決まった金曜の夜から始まる。再投票は週明けの月曜日。土日をかけて、ヒロインが自分の復職に好意的に投票してもらうべく、同僚を訪ねて回る様子を映画は描いていく。

こんな投票が労働法でまかり通るのかどうかに少し疑問はあるものの、それは些細なこと。失業の危機にあるヒロインを救うべきか、それとも他人の人生を犠牲にしてまでも自分の生活のためにボーナスを確保すべきか。つまりは、人間としての良心と、現実のニーズとをはかりにかけた選択が同僚たちに課せられており、ヒロインは様々な人間性に直面していくことになる…。

この設定は見事だ。心を揺るがす映画を作るには、必ずしも大きな予算が必須なのではないことを、ダルデンヌは改めて教えてくれる。シンプルな設定でシビアに人間の心理を描くダルデンヌの真骨頂がいかんなく発揮され、コティヤールの演技もまたもや見事で、上映時間も過不足の全く無い96分。まさに映画のお手本のような作品だ。ダルデンヌがカンヌの常連であるには、やはりそれなりの理由があるのだ。素晴らしい。

上映終わって10時半。マーケット会場のラウンジでコーヒーを飲んで、11時からミーティングを5件。6件目がキャンセルになったので、スーパーで水やらサラダなどを買っていったん宿に戻り、昨日知り合いの映画会社の方が差し入れて下さったおにぎりを感謝の思いにむせび泣きながら頂き、15時過ぎに再び外へ。

結果としてはすんなり入場できたので1時間前に行くことも無かったのだけど、まあ行ってみないと分からないのでしょうがない。というわけで16時から「監督週間」部門で、アルゼンチンのディエゴ・レルマン監督による『Refugiado』という作品へ。激しいドメスティック・バイオレンスに合っている妻が、幼い息子を連れて夫から逃げる様を描く物語。

悲痛で緊迫した内容であるのだけど、あえて夫を登場させず、妻と子供の視点だけで語る脚本がいい。結果として良い意味で映画から凄惨さが減り、アクセスしやすい映画に仕上がっている。DVが背景にはあるけれど、物語の軸になるのは母と息子の絆で、展開の起伏よりもエモーションの描写に重きを置く演出。子供の視点がここまで必要だったかどうかで、評価が分かれるかもしれないけれど、丁寧な感情の繋ぎはディエゴ・レルマンならでは。僕は評価したい。

ところで、途中入場してきて隣に座った人が、ずっと携帯をいじっているので腹が立って注意しようとしたら、注意する前に出て行った。マーケット上映は業界人向けだからしょうがない、と諦めがちだけど、本当にしょうがないのか?マーケット上映だったらスマホの画面をこうこうと照らしてもいいのか?いいわけないよ、もう。

話は少しずれるけれど、僕はいまだに携帯なんて無ければいいのに、と思っている古代人間のひとりで、でも日常生活の一部だから映画の中で携帯の場面が多く出てきても、それこそしょうがないとは思う。けれども、日常では携帯で話している人を見ることが必ずしも愉快ではないことなのに、どうして映画ではそれをたくさん見せつけられなければならないのだろうと、携帯のシーンが多い映画に対していつもイライラしてしまう。いつでもどこでも誰にでも連絡が取れてしまうという携帯電話の存在は、映画のドラマ作りを決定的に(たぶんあまりよくない方向に)変えてしまったと、今さらながらに思う次第。

閑話休題。18時から、「特別上映」部門で『SILVERED WATER, SYRIA SELF-PORTRAIT』という作品へ。内戦で揺れるシリアの人々が携帯などで撮影した映像を繋げて、現在のシリアが直面している過酷な情況を伝えるドキュメンタリー。もちろん、携帯すべてが悪ではないのだ。とても重要な作品であることを意識しつつ、次の予定があったので、1時間ほど見た後に後ろ髪を引かれる思いで途中退場。

向かったのは、カンヌ映画祭期間中にフランス大使館などが主催していた日本の若手監督たちのためのワークショップの打ち上げパーティー。顔見知りの方々と少しお話し。稲庭うどんがふるまわれていて、ツユを付けて食べるのだということを知らない西洋人が、ゆでただけのうどんをそのまま食べていたのが、少し哀しくて胸が痛んだ…。

続けて、会場を移動して、香港の映画会社が主催するパーティーへ。ジャン・ウェン(姜文)監督の新作のプロモーションが目的のパーティーで、まだ製作中の作品のフッテージを上映して、ジャン・ウェン監督がスピーチ。ここでも顔見知りの方数名にご挨拶して(ジャン・ウェン監督には挨拶できず)、滞在時間30分程度で退席。

本日最後は、22時15分から「監督週間」部門で、『Tu dors Nicole』というカナダの作品の上映へ。モノクロの画面を効果的に用いたアート風味のコメディー作品で、センスがとても良く、満足。

上映終わって0時。サラダ食べながらこのブログを書いて(何だかダラダラ書いてしまって、変な内容になってしまっていたらごめんなさい)、ああもう2時だ。寝ます…。

あ、そういえば、僕が今日見ることの出来なかった河瀬直美監督新作の上映が、かなり評判が良かったらしい!これは結果が楽しみ。とても見たいけれど、近日中の日本公開も決まっている日本映画を、僕がカンヌ出張で見ていいのか、という葛藤があって、んー、どうしよう。
《矢田部吉彦》

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