【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day9

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22日、木曜日。今朝もあたふたと7時半に外に出ると、かなりの強風で、荒れそうな空模様。

1時間並んで、コンペのケン・ローチ監督新作の『Jimmy's Hall』へ。1930年代のアイルランドを舞台に、庶民の憩いの場所となる多目的ダンスホールが、時代の荒波の中で理不尽な圧力を受けてしまう物語。かつてに比べると驚くほど作風は穏やかになったけれど、ケン・ローチの「抵抗の物語」節は健在で嬉しい。

ケン・ローチは本作で監督業を引退すると発言していたことでも話題になっていたようで、記者会見の模様を中継で見ていたら、やはり最初にこの点について質問をされていた。するとケン・ローチの答えは「本作を撮る前はもう無理かと思いましたが、完成した今は、また少し違う気分です。まずはワールドカップを見てから、どうなるか様子を見ましょう(笑)。辞めてしまうのが難しい職業ですね」とのこと。素敵だ!

上映中に外で雷がゴロゴロ鳴っていて、映画の中のアイルランドの風景とあまりにマッチしていたので気にならなかったのだけど、外に出てみるとかなりの本降り。ああ。

11時半から、イギリスの会社や、スウェーデンの映画祭のディレクターや、フランス人の監督などと、ミーティングを4件。これにて、今年のカンヌのミーティングは全て終了!

屋台でサンドイッチを買ってかじり、14時半から昨日観られなかったゴダールの追加上映にチャレンジすべく、13時半に会場へ。今回はすんなり入場。

ゴダール新作の『Goodbye to language』は3Dなのだけれど、でもやはり当然のことながら、あまりにもゴダールな作品だった…。

言語とコミュニケーションの不調、神、ナチス、戦争、森、犬、セックス、そして映画…。ゴダールの現在の頭の中にある物事が縦横に展開するコラージュ。タイトル文字の使い方もゴダールならではで、3Dと戯れながら、画調や色調を目まぐるしく変えてくる。人を食ったような表現もあれば、深淵な意図に裏付けされた描写もある。つまり、いつものゴダールだ。ただ、ここで安易に分析の真似事をすると色々な地雷を踏みそうなので自重するとして、とにかくまずはとても堪能したとだけ書くに留めておこう。

さて、今日から公式部門作品の再上映がぼちぼち始まっているので、見逃したコンペ作品でとても評判がよい『Wild Tales』というアルゼンチンの上映を選んで、16時に会場へ。1時間並んで、17時から上映開始。

なるほど、これは面白い! コンペで唯一のコメディーということになるのかな。五つか六つ(いかん、もう忘れた)の独立したエピソードが連なる構成で、爆笑系からブラック系まで(というか全部ブラックだけど)、シニカルでいるようで人間賛歌的でもある物語が並び、いやいやお見事。どうしても映画祭は真面目な作品が多くなりがちになるので、カンヌのストレスを発散するかのような場内の大爆笑が楽しい。やっぱりコンペにコメディーが1本は必要だなあ。

監督は本作が3本目となるアルゼンチン人のDamian Szifron。プロデューサーの一人にアルモドバルの名前も。なるほど。

19時に上映終わり、宿に戻ってサラダ食べて体制立て直し。20分間だけ仮眠してから、着替えて蝶ネクタイ締めて、21時半からのコンペの公式上映へ。20時から並んだので、まずまずの席を確保して、ひと安心。見るのは、早熟の天才、カナダのグザヴィエ・ドラン監督が念願のコンペ入りを果たした、『Mommy』。

ドランの名前は日本の熱心な映画ファンの間ではもはや定着したのかな? なんと言っても、25歳にして長編5本目。デビュー作がいきなりカンヌの「監督週間」に選ばれて話題になり、2本目と3本目が「ある視点」部門、4本目がベネチア映画祭のコンペ、そして5本目の本作がカンヌのコンペに入ったということで、自他ともに認める、世界で最も若い巨匠だ。

本作は、感情をコントロールできないメンタルな問題を抱える15歳の少年と、その母の激しい愛の物語。スタンダード・サイズというよりは写真のロクロク(正方形)に近い独特の画面サイズの中に、過激な罵倒の応酬が展開し、そして濃厚なエモーションが蓄積されていく。大胆なスローモーションに、音の洪水が重なり、激しくも甘美な世界が広がっていく。圧迫感と解放感が交互に訪れ、その快感たるや尋常ではない。あまりにも、あまりにも濃厚な2時間半。

本当にとてつもない才能だ。上映後のスタンディグ・オベーションの熱狂は、最近のカンヌで経験したことのないレベルのもの。若い観客も多く、メイン会場のパレは、まるでライブの後のような雰囲気に包まれた。もう、オッサンの映画はいいよ、とカンヌが言っているようだった。グザヴィエ・ドランは泣いていた。

ついに、ついに、カンヌが若返った瞬間として、今宵の上映は記憶されることだろう!
《矢田部吉彦》

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