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【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day10

23日、金曜日。今朝は気持ち良く晴れ…

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23日、金曜日。今朝は気持ち良く晴れ。

今朝もコンペの作品を見るべく7時半に会場に着いて並んでいると、9時からの追加上映でなく、8時半のメイン会場上映に入ることになった。それは悪いことではないのだけど、9時からの方がいい席で見られるので心配したら、案の状メイン会場の端の見切り席になってしまい、いささか不満。

画面が建物の一部で遮られてしまうことを我慢しながら観たのは、オリヴィエ・アサイヤス監督新作の『Clouds of Sils Maria』(写真)。ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュアート、クロエ・グレース・モレッツ出演。

ビノシュが大物女優に扮し、クリステンはそのアシスタント、という設定。映画や芝居の役柄への取り組み方に関するディスカッションを通じて展開される心理ドラマ、という要約はあまりに乱暴だけど、ビノシュとクリステンの絡みが見どころと言っていいかな。

大物女優の人物像にはビノシュ本人が反映されているだろうし、劇中劇の設定が映画の人物たちにも重なっていくので、複雑な三重の入れ子構造の作りになっているのが面白い。スイス湖畔という舞台が『感傷的な運命』を思い出させるし、ベテラン監督が死去することからスタートする展開は、「親しい者の不在」というモチーフを好んで描いた90年代後半の頃のアサイヤスも思い出させる。

もしかしたら、本作はアサイヤスのキャリアのひとつの句読点になるのかもしれないな…、などと考えながらいったん宿に戻り、出張中にたまった資料をまとめてマーケット会場に行き、国際宅配便で日本へ送付手続き。

12時15分から、アウトオプコンペの『The Owners』というカザフスタンの作品へ。貧困地域で理不尽な仕打ちを受ける兄妹の姿を、ちょっとシュールなユーモアを交えて描くもの。しかしどうにもキレが悪く、僕はイマイチ。もっとも、カザフスタンは近年映画に力をいれているので、引き続き注目が必要。

14時前に終わったので、ビュッフェ形式中華に行き、クイックランチ。

急いで上映会場に戻って列に並び、15時からこれも特別上映で、トニー・ガトリフ監督新作の『Jeronimo』へ。フランス南西部のサン・ピーエル地区のトルコ系住民コミュニティーにおける、敵対する家族間の禁断の愛が引き起こす悲劇を描くロメオとジュリエット的物語。いや、音楽がふんだんなので、むしろウェストサイドストーリーかな。

音楽やダンスがいいのはさすがトニー・ガトリフなのだけれど、暴走する青年たちが揃いも揃って幼児並みの脳ミソで行動するので、かなりうんざりしてしまった。これが現実なのだと言われればそうなのかと答えるまでだけど、んー、なかなかラクではない。

続けて「ある視点」部門に出品された、ライアン・ゴスリングの監督デビュー作、『Lost River』。小会場での追加上映で長蛇の列が出来ていたけど、ギリギリで入場(数日前の公式上映の際には、あまりの混雑に入場時に小競り合いがあったらしい)。

作品は、架空の設定にも見える(よくは分からない)過疎が進む田舎の町を舞台に、行き詰まった状況でサバイブしようとする母と息子に起きる事件を描くもの。

エンタメに目配せすることは全く無く、ライアン・ゴスリングが自分のアート性向を純粋に追及した作風。いまが旬のメジャー俳優の監督作としては、珍しいのではないかな。レッドフォード的正統方向ではなく、かといってショーン・ペン的なカサヴェテス的インディペンデント方向とも少し違う。完成度は粗いけれど、描きたい世界観は分かる。今作というよりは、次作が楽しみ。

そして本日最後は、22時から、いよいよ今年のカンヌの最後のコンペティション部門の作品となるロシアの『Leviathan』へ。20時15分から並んで、割り当てられたメイン会場上階のブロックエリアでは最良の席を確保。

が、しかし、残念ながら映画は退屈してしまった…。ロシア北部の小さな町で自動車修理会社を営む男性が、地元の有力者から圧力を受けために弁護士を雇った結果、妻を巻き込んだ悲劇へと展開していく物語。絵はきっちりしているし、演出も奇をてらわない真っ当なものなので正面から向き合える作品なのだけど、いかんせんこの内容で2時間越えは長すぎる。90分で充分に語れる物語が、どうしてこんなに長くなってしまうのか。

もっとも、上映後の会場の反応はとても好意的だったので、僕の好みが合わなかっただけかもしれない。そういうこともあるさと思いながら、眠い目をこすって0時半に宿へ。

さて、コンペの公式上映はこれにて終了で、明日はいよいよ各賞の発表!

他部門は既に発表されていて、前半に熱狂した『White God』が、「ある視点」部門の作品賞を受賞。そして、後半の爆弾『The Tribe』は、これまた「批評家週間」の作品賞受賞。いずれも大納得。

そして明日発表のコンペも大納得と行くかどうか…。僕の予想は、最高賞のパルム・ドールは、もうずばり、グザヴィエ・ドラン! 25歳でパルム取っちゃったら今後どうするのだ、という気もするけれど、今年のコンペでは圧巻のインパクトなので、やはり『Mommy』がふさわしい。

2等賞の「グランプリ」は、ジェイラン。パルム・ドールに推すつもりだったけれど、ドランの出現により、グランプリ。主演男優賞はティモシー・スポール。女優賞はマリオン・コティヤール。監督賞と審査員特別賞は、どうしようか…。『FOXCATCHER』や『Wild Tales』も何かに絡みそう。そして見ていないのだけど、やはり河瀬直美作品も評判がなかなかいいので、絡むかも。

新人監督賞の「カメラ・ドール」は、これはもう絶対に『The Tribe』でしょう。

んー、予想をしているとキリがない! でももうそろそろ2時。明日も上映があるので、寝ます!
《矢田部吉彦》

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