【MOVIEブログ】東京国際映画祭 Day3

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『来るべき日々』Q&A
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25日、土曜日。今日も晴れ!やはり晴れると、全て上手くいくような気分になる!9時半に起きてヒルズに行くと、ハロウィン姿のキッズだらけだ!楽しいだろうなあ。僕の子どものころはハロウィンなんて無かったので(いや、あったのだろうけど)、ちょっと羨ましい。

今日の午前中はちょっとゆっくりできるはずだったのだけど、そういう時に限って予期せぬ事態が同時多発で押し寄せて、その処理をしているうちにあっという間に12時。

本日最初の司会業務は、コンペの『メルボルン』。事前に密かに評判を呼んでいたのか、それともやはり土曜日だからなのか、午前中の回にも関わらずシネマズで一番大きいスクリーン7が満席。素晴らしい!

登壇したのはニマ・ジャウィディ監督。この作品の着想を得たきっかけを語ってもらって、とても興味深い。まだ上映があるので、ネタバレになるからここでは割愛。外に出ると、やはりお客さんの反応がとてもいい。今のイラン映画は良い!と唸る中井圭さんや松崎健夫さんなどと立ち話で盛り上がる。

13時から、イタリアのテレビ(かな?)の取材で、ヒルズ内のオープンスペースの一角でインタビューを受ける。照明焚いて、立派なカメラを廻しているので、緊張する。コンペ作品の選定理由などについて、締まりのない英語で答えるわけだけど、我ながら情けない。もうちょっとアドリブできちんと伝えられないものかなあ。なんだか使っているフレーズがワンパターンだ。英語の引き出しが少な過ぎる…。

一瞬事務局に戻り、弁当を飲みこんで、劇場へトンボ返り。緊張物件。『紙の月』の上映前舞台挨拶司会で、登壇者は吉田大八監督、池松壮亮さん、そして宮沢りえさん!やはり緊張します。が、宮沢さんはとても穏やかな佇まいで、エラぶったところが1ミリも(本当に1ミリも)なく、本当に素敵だ!控室で横柄な面を見てしまって失望した女優さんも何人かいるけれど、宮沢りえさんはちょっと天使みたいな人だった…。

舞台挨拶は、つつがなく進行した、かな?僕が司会することの多いQ&Aなどは、台本はなく成り行きでやっているのだけど、配給会社がしっかりついている作品となると、事前に台本をもらって粗相のないようにしないといけない。今回は丁寧な台本を頂戴したので、これに沿って進行。おかげて、簡潔にして十分なコメントをゲストのみなさんから頂けたのではないかな?

続いて14時55分から、『来るべき日々』の記者会見。ロマン・グーピル監督に数年ぶりに再会!嬉しい。グーピル監督も『ハンズ・アップ』で来日したときの日本の印象がよっぽど良かったみたいで、本気で喜んでいるし、このように映画が取り持つ縁が続く、というのはなんと素敵なことだろう。

政治と映画の関係や、過去のフッテージの使い方を巡る映画作りの話など、グーピルワールドのコメント続出で、とても面白い。曰く、「映画は世界を変えない。幸いなことに。映画が世界を変える力があったら、独裁者が世界を変える映画を作り、それを子どもたちに強制的に見せてしまうから。幸いなことに映画は世界を変える力はないが、疑問を呈することはできる。私がするのは、質問を投げかけていくことなのだ。」これは意識的な監督たち、そして優れた芸術作品に共通するスタンスであり、昨日、若きエドモンド・ヨウも同じ発言をしていた。確かに、『来るべき日々』と『破裂するドリアンの河の記憶』を並べて考えてみると、かなり面白い。今気付いた!

事務局に一瞬戻ると、ロビーの当たりがざわついている。ああ、今日は北野武監督のトークイベントの日だ…。覗いてみたい誘惑に駆られるものの、どうやって入れるのか分からないし、そもそもその時間も全く無いので、断念(というかトライせず)。

16時過ぎから、『紙の月』のQ&Aへ。登壇は吉田監督おひとりで、監督とは先日アップルストアでトークショーをご一緒したこともあり、多少は気が楽だけれど、それでも現在最も重要な監督のひとりであり、緊張することには変わりない。ただ、ご本人はとても気さくな方で、話も面白いし、威圧的なところはなくて(現場は知らないけれど)素敵な紳士だ。いや、さっきの女優さんの話も一緒だけど、これだけ大勢の監督や役者に連日会い続けると、横柄で威圧的な方よりは紳士的で穏やかな方に魅かれるというのが人情というもので、特にこちらは体力的に弱っているということもあり、どうにも惚れやすくなる…。

余計なことを書いていないで先に進むと、『紙の月』のQ&A、とても上手く行ったのではないかな?最終的に女性の質問がなかったという監督の指摘を別にすれば(実際には手を挙げている女性はいたらしいのだけど、ライトの逆光で僕から見えなかった!)、的確で有意義な質問がいくつも出たし(原作との違い、女性観について、役者の演出についてなど)、僕には充実した時間でありました。でも僕が充実してもしょうがないので、お客さんはどうだっただろうか?そして配給会社さんの満足度は?

続いて、「日本映画スプラッシュ」に出品されている『百円の恋』の上映前舞台挨拶の司会へ。『百円の恋』、ちょっと真剣に凄い映画です。とにかく安藤さくらさんの演技が必見であるということと、そして安藤さくらさんの演技が必見であるということ、さらには安藤さくらさんの演技が必見であることなどで、本年見逃してはいけない映画のトップ級に躍り出ています。共演陣も素晴らしい。特に安藤さくらさんの姉の役の早織さんは、安藤さんを真っ向から受け止めて素晴らしい。早織さんが「あるシーン」で見せる表情の素晴らしさを、僕は忘れることがないと思う。

17時35分に終わり、1時間ほど事務局で休憩。何をしていたか、全く記憶にないのだけど、メールを書いていたかな?

18時半から、『ナバット』の記者会見。かなり記者の方の心に刺さったようで、反応がとてもいい。大絶賛する方も複数いらっしゃって、どうやら『ナバット』は全方位的に好評だ。嬉しい。

19時半から、『ロス・ホンゴス』のスクリーン7でのQ&A司会。ほぼ満席!ああ、これは嬉しい。コロンビアからの小さいおもちゃ箱のような作品だけど、その暖かさと真摯な姿勢、そして不思議にニュートラルで風通しのよい仕上がりは、客席にも確実に届いたようで、上映後に登壇した監督をウェルカムする雰囲気に会場が包まれている印象。音楽素晴らしいし、なんだか優しい気持ちになれる映画だし(こうやって字で書くと気持ち悪いけど)。

リアリズムとフィクションの間を揺れるようなタッチを、監督は「ドキュメンタリー・ドリーム」という言葉で表現していて、へえー、いい言葉思いついたね!と嬉しくなる。新しいジャンルの誕生?監督は答えが全部面白い。客席から最初に質問してくださったのが、毎年滋賀県からやってくるお馴染みのおじさまのお客様。大声の関西弁に最初は客席もびびるのだけど、やがて質問の内容がとても的確であることに客席が気付いて2度びっくりするという、お馴染みの展開が今年も炸裂!

でも、本当に質問は良くて、この映画に親近感が沸くのは監督の自伝的な内容だからか?(多少はイエス、全てではない)、ふたりの青年が素晴らしいが、プロ?素人?(プロの採用はゼロ、キャラクターは全員自分を演じている)など、作品の理解を深める会話が展開し、実に有意義。

欲を言えば、もっと音楽について聞きたかったけど、でも作品が観客から愛されているような雰囲気が伝わってくる気がして、とてもハッピー。今後が本当に楽しみな監督だ!

外に出ると、知り合いに次々と会い、少し時間もあったので、数名と会話。みんな映画祭を楽しんでくれているようで、よかった!が、作品がつまらなかったという人は僕に近づきづらいだろうし、いい話しか耳に入ってこないだろうことも自覚しているので、あまり調子に乗り過ぎてはいけない。一喜があると一憂があるというのが僕の映画祭での経験則なので、とにかく明鏡止水の心境で過ごすべし。

夜の弁当はオムライス。1分で食べ(本当)、22時10分から「ワールド・フォーカス」部門の『ヴォイス・オーバー』の司会へ。監督はこれがトウキョウ3度目の参加となるクリスチャン・ヒメネス監督で、今回はプロデューサーのジュリー・ガイエさんと、ナディア・テュランゼフさんも来日。昨日来日した彼らに僕は上映まで会うことができず、Q&Aもゲストは客席からの登壇だったので、まさに壇上で数年振りの再会。あまり壇上で盛り上がり過ぎても客席がシラケてしまうし、挨拶はそこそこにしてQ&Aへ。

ヒメネス監督は、1作毎に飛躍的に伸びている、というのが僕の実感で、本作で本格的に映画作家として確立された存在となったと確信するに至った。遠くない将来、大きい映画祭で賞を取ることは間違いない、と言い切ってしまいたい。

さて、東京国際映画祭が縁で、ヒメネス監督とジュリー・ガイエ達が製作チームを組むようになったのは紛れもない事実なので、その縁に無縁ではない僕がどうしても本作のQ&A司会をやる必要があるのだ!とこだわったところに落とし穴があった…。いや、あまりにも目に見えやすい大きい穴ではあったのだけど。

『ヴォイス・オーバー』のQ&A終了時間と、コンペの『来るべき日々』のQA&開始時間が非常に接近しており、両方の司会をハシゴするのはかなりミッション・インポッシブルであったのだ。でも、ヒメネス組をやらないわけにいかないし、『来るべき日々』はコンペのワールドプレミアだ。まあ、何とかなるだろう、と覚悟して臨んだら、なんとかならなかった!

今まで、綱渡り的な司会ハシゴを長年続けていたけれど、ついに、やってしまった。『ヴォイス・オーバー』のQ&Aが終わらず、このままでは『来るべき日々』に遅刻する。もうダメだ!というタイミングになり、意を決して「すまん、クリスチャン、移動せねばならんのだ」と壇上で告げ、司会退場!唖然と失笑の会場に頭を下げて、ダッシュで退場。ああ、本当に情けない。ごめんなさい。

「遅刻するゲストはいるけど、早退する司会は史上初じゃないか?」とアジア部門のプログラミング・ディレクターの石坂健治さんよりからかわれ、こうべを垂れて深く反省…。いや、本当に冗談では済まない話で、遊びではないのだ。猛省します。

幸い、『来るべき日々』にはギリギリ間に合い、少なくともその会場では何事も無かったかのような態度で通すことが出来たけど(たぶん)、内心はもうバクバクで大変でありました。

で、『来るべき日々』Q&A(写真)。簡単ではない作品だけど、大勢のお客さんが会場に残ったし、トウキョウには熱心な映画ファンがまだまだたくさん存在していることが証明されたような気がして、勇気を与えられる。ちょっと映画として高度だから受け入れられるかどうか、という僕の懸念こそが傲慢というもので、映画ファンを甘く見てはいけないのだ。この作品の画期的な面白さ、極上の上手さを、多くのお客さんと一緒に堪能できる歓びは何ものにも代えがたい。今日の深夜のスクリーン7は、映画村の幸せな住民だ。でもグーピル村長の映画は閉鎖的ではなく、政治的な視点をユーモアにくるんで世界に対する視野を広げつつ、自己を内省する深みも備えている。なんという奇跡的な作品!

と興奮しながら書いてしまうことをお許し下さい。本日もそろそろ4時。いい加減にキリ上げて、また明日に備えます!
《矢田部吉彦》

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