【MOVIEブログ】東京国際映画祭 Day8

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『ザ・レッスン/授業の代償』のQ&A
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30日、木曜日。今日もまたまた晴れ!ここまで晴天続きの映画祭はちょっと記憶にない。毎日同じ書き始めで申し訳ないけれど、本当に心の底から晴れが嬉しい!

今朝は8時起きで、9時前に職場へ。急ぎのメールを書いているうちに、10時。大慌てでタクシーに乗り、またまた熟睡している間に日本橋に到着。10時半から、昨日に引き続きPFF受賞作上映の前説。

5分ほど話して、六本木にとんぼ返り。11時から某新聞社の取材を受ける。今年の総括のような話。コンペの作品選定の近年の傾向について。そして、映画祭で僕のやりたいことがあるとしたら何か、などについて。最後の質問はあまりに夢がありすぎて、興奮しながらたくさん話してしまう。ひとつでも実現するといいなあ。でもそれまで映画祭にいるのだろうか?

12時から、フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」からの取材。今年の日本映画の選定について。傾向と今後の見通し、など。好天のもと、オープンスペースでのインタビューで、気持ちいい。でもまわりに誰もいないので、海外プレスから取材を受けているカッコいいオレ、という周囲へのアピール目論見は不発(冗談です)。

12時40分から、『マイティ・エンジェル』の記者会見。一般上映の2回のQ&Aを経ての会見ということで、監督の説明もかなりこなれてきたようで、興味深い話がどんどん出てくる。どうしてアルコール依存症に関する原作を映画化しようかと思ったか、という問いには「今までの作品にもアルコールの問題は随所に出ていたが、そろそろその問題にケリを付けたくなったから」。そして、「時間が混沌とした感覚が、アルコールの酩酊に重なることに関心を持ったから」。

さらには、「アルコール依存は民主的である。つまり、全ての人に平等に訪れる。老若男女に共通する問題であり、その意味において民主的なのだ」。主人公の問題は「共産主義時代に送った青春時代に原因がある」。その他にもいろいろと発言して、いずれも映画の理解を助けるコメントであり、とても面白い。ヴォイテク、聞けば聞くほど面白い。底の知れないような雰囲気を身にまとうスマルゾフスキ監督の次回作は、「憎しみ」がテーマになるらしく(これは先日のQ&Aでの発言)、一体どういったものになるのか、今から楽しみでならない。彼のファンも増えつつあるのではないかな?

それにしても、『マイティ・エンジェル』はもっと賛否が分かれるかと思ったら、意外に(ということもないけれど)各方面で評判がいい。全く分からないものだなあ。

13時20分過ぎに終了し、13時55分から『草原の実験』のQ&A。こちらも1回目のQ&Aで慣れたのか、アレクサンドル・コット監督から興味深いコメントがたくさん出てくる。本作は宮崎駿の世界観に似ているという意見を耳にしたことがあり、それについてどう思うかを僕から聞いてみると、とても好きであるとは答えてくれたものの、世界観の共有についてはコメントしてくれなかった。

改めて影響を受けた監督や作品をお客さんから聞かれて、コット監督が挙げたのが、オランダのヨス・ステリング監督の『イリュージョニスト』(83)と、メル・ギブソン監督の『アポカリプト』(06)。へえー!

さらに驚いたのが、『草原の実験』を見た人の中で密かに話題になっている主演の美少女について。なんと韓国籍とのことで、韓国人の父親とロシア人の母親との間に生まれた少女で、撮影当時14歳、現在は15歳になっているらしい。ちょうど少女と大人の女性の間の時期にある娘を探していたということで、まさに奇跡のキャスティング。完璧であると思っている本作の唯一の瑕疵は、ヒロインが美少女過ぎて一瞬リアリティーがなくなることなのだけど、全体をファンタジー的なタッチで描く側面もあるので、それはそれでアリなのだ。そして、美少女、終末観、ファンタジー的風味、が宮崎駿を連想させるのかもしれない。僕は宮崎アニメについては門外漢なので、これ以上は分からないけれど、なるほど、という気もする。

覚えたてのツィッターで感想検索してみると、『草原の実験』を推している人がとても多い!

14時45分から『滝を見にいく』の2度目のQ&A。順調に楽しく進行していたのが、ここで今回の映画祭最大の失態を犯してしまった!いや、正面のライトがすごく強いことを言い訳にしたいのだけど、何かこう、頭をぼーっとさせて集中力を失わせる瞬間があって、その時に時空がねじれ、素っ頓狂な発言をしてしまった…!いや、魔が刺す、というのはああいうことで、本当に一瞬ブラックホールに堕ちたよう。うう。最終日に訪れた、ポカと呼ぶにはあまりに奇妙なポカ。自分でも何が起きたか分からない…。

事故にまではならなかったと思うので、とにかく目の前のことに全神経を集中させることにする!

15時半にJ-WAVEへ。16時から、レイチェル・チャンさんがナビゲートをする昼の番組「Gratitude」に出演。映画祭の総括的なことを6分間ほど話す。6分間で今年の傾向と、来年以降の目指す方向性をまとめなければいけないので、どこまでちゃんとしたことが話せたかどうか、結果については心もとないけれど、少なくとも頭真っ白のポカ発言は無かったはずで、まずは無難に終了。

17時から、『アイス・フォレスト』の2度目のQ&A。昨日に引き続き、クラウディオ・ノーチェ監督と、アドリアーノ・ジャンニーニさんの登壇。1度目の昨夜よりコンパクトな内容になってよかったのでは?みなが興味を持つエミール・クストリッツァ起用理由と裏話をたっぷりと語ってもらい、そして作品の核となる移民問題の現状にも解説してくれたので、親切なQ&Aになったはず。それにしても、カッコいいイタリア人って本当にカッコいいなあ。登壇前は、通訳さん達とジローラモ氏の話で盛り上がっていたようだけど、一体何を話していたのだろう?

17時50分から18時半まで、WOWOWが製作している映画祭密着番組に出演。コンペティションの総括的な話をするのだけど、ちょっと話が固くなってしまったかなあ。コンペにはヘヴィーな作品も少なくないので、その総括をテレビ向けに明るく話すのは、結構テクニックが必要なようで、僕にはまだまだ修行が足りない。

夜の弁当をありがたく頂く。美味しい!こうやって黙っていても食事が目の前にある状態も、あと2日か。映画祭期間中は、僕にとって1年で最も食のペースが安定している時期なのでした。

19時半からニマ・ジャウィディ監督を迎えて、『メルボルン』の2度目のQ&A。これが今期のベストQ&Aになった!僕がすぐにマイクを客席に渡すと、すぐに手が上がり、監督の回答は簡潔にして鋭く、そしてまた質問が間髪入れず繋がっていく。みなが気になっている事柄がほとんど語られたのではないか?スムーズで、簡潔で、テンポ良く、親密で、とても充実!最終日にベストQ&Aが実現して嬉しい!

「良い意味で後味の悪い」エンディングについて、国外移住の難しさについて、物語の着想について、タイトルの意味、などについて語られた後に、客席で作品を見ていたアミール・ナデリ監督が挙手をして会場も喝采!ナデリ監督は東京国際映画祭でイラン映画が上映される時は、必ずと言っていいくらい見に来られるので、主催側としてもとても有難い。さらにナデリ監督は必ず客席からコメントされるので、出品側の監督にとっても、観客にとっても、嬉しいプレゼントとなる。今回ナデリ監督は、ジャウイディ監督に対して、演出がポランスキーを彷彿とさせる、という最大級の賛辞が贈られた。

客席の作品に対する満足度もとても高いようで、いやあ、いいQ&Aだった!

事務局に戻り、明日のクロージングの準備で猛烈にバタバタする。決まっているべきことが決まっていない!時間は迫る!やばい。本当にやばい。

作業に集中していたら、ふと時間をしばらく確認していなっかったことに気付き、パニックになりながら時計を見ると、ギリギリセーフ。劇場へダッシュ。

22時50分から、いよいよコンペティション部門の最後の公式上映となる、『ザ・レッスン/授業の代償』のQ&Aへ(写真)。そして、早くも今期ベストQ&Aは更新された!映画祭の最後に逆転!

これで最後という気持ちを客席と壇上で共有しているような気がして(僕だけ?)、温かくリラックスした雰囲気が冒頭から流れて気持ちいい。作品で強いインパクトを残す主演女優のマルギタ・ゴシェヴァさんが目の前にいる、というのも大きいかもしれない。

質問もペースがいい。先生が黒板にチョークで字を書くシーンが冒頭とラストにあることの意味、映画音楽が付いていない本作の音設計について(女教師のキャラクター主観とするため、観客を誘導する音楽を排する決断をし、その分生活の音の重要性が増した)、実際の事件と映画との関連性、などについて語ってもらった後、僕から「そもそも諸悪の根源は夫にあって、あんな男とどうして結婚したのか?」と聞いたら場内が同意して笑い声が上がった。笑いの意味を聴いたマルギダさんが「あの夫役は、私の本当の夫なんです!」と発言し、場内は驚愕して爆笑!

いやあ、この瞬間は盛り上がった!マルギタさんの夫君はブルガリアで(マルギタさんよりも)有名な役者さんとのことで、まずマルキダさんの出演が決まり、その縁で夫も出ることになったとのこと。出番は少ないけれど、映画を転がす要因になる重要な役で、とにかく「いい父親」として描くことで設定に説得力を与えようとしたとのこと。

あとは、ヒロイン像についての考察が続く。彼女の行動はどのような心理に裏付けされているのか。最終的に自分の尊厳を守るため(売春をしないため)、極端な選択をすることになる。なので、尊厳の罪、プライドの代償、という言い方が出来るかもしれない。客席からもこの件についての確認があり、やはり映画の核をなすポイントだ。彼女は常に悪い選択をして、ドツボにはまっていくけれど、その場では他の選択肢がないと思わせるところが、この作品の脚本の上手いところだ。

これは面白いQ&Aになったなあと喜んだものの、もう23時半を超えようとしていたので断腸の思いでQ&Aの終了をアナウンスすると、突然マルギタさんが「一曲歌っていいかしら?」というので、「もちろん!」と答えたら、歌いだしたのがなんと「手のひらを太陽に」!最初のコーラスを完璧に覚えていて、会場も合唱。一体どこで覚えたのだろう!

というわけで、最高に盛り上がって楽しかったQ&A。最後の最後のQ&Aがベストとは、有終の美ってあるのだな!もちろん、どのQ&Aも面白かったし、作品理解が深まるし、なによりも作った人のナマの声を聞くことができる喜びは、何物にも替えがたい。

今年も60回くらい司会をしました。映画祭でたくさんの本数を見ている観客の中には、いつも同じ顔が出てきてうんざりしている方も絶対にいるはず。本当にごめんなさい。が、映画を作る監督と、映画を観る観客との、その中間に立って双方を繋ぐ役割ほど、僕が喜びを覚える業務はないのです。今年もお付き合い下さいまして、ありがとうございました!

というわけで、司会業務は終了。職場に戻り、クロージングの準備の続き。結局4時になる。全くもう。泣いても笑っても、あと1日!
《矢田部吉彦》

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