『アップルシード アルファ』監督が語る“CGアニメの現在と未来”―後編―

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左)水島精二監督、右)荒牧伸志監督
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  • 荒牧伸志監督
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『アップルシード アルファ』が1月17日から日本版として全国公開となった。これに合わせて本作の荒牧伸志監督とヒット作『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の水島精二監督に現在のCGアニメについて語っていただいた対談の後編をお届けする。
お話は両作品から、さらに今後のCGアニメのあり方にまで及んだ。
[聞き手=数土直志、取材・構成=細川洋平]

■ 作り続けることで、大発明が起きるかも

―セルルック特有のタメやツメなどのアニメ的な表現は、実際の役者の動きをCGに移し替えるモーションキャプチャーでも考えるのですか?

荒牧
最初の頃はタメツメをかなりやっていたんです。ジャンプした時にゆっくりにしようとか。今回は役者の芝居中心です。アクションで時々使うくらいですね。役者を決めるためにオーディションをやるのですが、最近はこれが面白くて。いい役者さんを見つけると、彼に任せようという気持ちになる。絵の作り方も芝居中心です。

水島
『アップルシード アルファ』は『キャプテンハーロック』(*)に比べても圧倒的に実写っぽかった。荒野の感じとか「映画として勝負しよう」という絵作りになっている感じですよね。
*3『キャプテンハーロック』荒牧伸志監督、2013年公開

―現在、3DのCG作品にはお二方の作品だけではなく、例えば『シドニアの騎士』(以下、『シドニア』)のような様々なルックの作品があります。

水島
『シドニア』はポリゴン(ポリゴン・ピクチュアズ)さんのコストの考え方がすごく徹底していると思います。

荒牧
よくあの原作を見つけてきたなと思います。「クローン」「制服」「ヘルメット」。全てCGでやるための成功要素ですから。(笑)

水島
キャラクターのモデル数を少なくすませつつ、それが世界観に帰依していて、しかも宇宙船シドニアの中の集団だけ描けば成立する。モンスター(寄居子)が柔らかいのでその表現が難しいですけど、不定形だからモデルの転用とかできるはずです。企画を決める段階で勝算があるんですよね。

荒牧
しかもロボットが歩かない。宇宙しか飛ばないのは効率的です。

水島
シナリオ担当の村井(さだゆき)さんの話のまとめ方もうまいんですよね。あらゆる意味で、このタイミングであれが出て来たのはすごいなと思いましたね。

荒牧
ルックで言うと『楽園追放』でもっとCGぽい質感で作ろうとは思わなかった?できないことはなかったはずです。

水島
キャラクターはやはりセルルックから一気に表現を変えるとお人形が動いている感じがどうしても拭えないんですよ。アーハン(*)とかボディースーツはモデラーと一緒にこだわりましたね。とはいえそれもやり過ぎないよう気を遣いながらです。
視聴者には急激な変化を見せるんじゃなくて、時間をかけて新しいルック・映像を知ってもらう。振り返ってみるとすごく進化していた、という形がいいんじゃないかなと思います。あるいは、ものすごい天才が新しい表現を大発見するしかない(笑)。
*アーハン 『楽園追放』に登場するロボットの名称

荒牧
僕は表現よりもフローの大発明をしたい。日本のアニメはコンテがないと何も始まらないけど、そのフローを変えられたらおもしろいなと思っています。先に演技とアクションがあって、それに対してカメラが動いていくみたいな。
実写的だけど違う自由度につながる更におもしろいものがデジタルを使って作れそうな気がしています。それを作り続けると新しい才能が出たりするんじゃないかと思っているんですよね。

水島
3Dのアニメーターが演出的なノウハウを持っていて、一人一人がそれを元に新しい映像を作り始めると一番いい。それは本当にそう思います。

荒牧
言い方は違うかも知れませんけど、3Dにおける金田伊功みたいな人が出てくるべきなんですよ。
*金田伊功 アニメーター。エフェクトやアクション表現の先駆者。

■ 3DCGは長く続けるほど、クオリティもあがる

―2014年から2015年のCGアニメは、新たな動きを追う意味でどれも見逃せない作品ばかりですね。

水島
映像作品好きな人は、どれも見るといいと思います。特に海外と日本で方法論も明らかに変わってきています。もちろん海外と大きな差はありますが、そこと戦うための準備をしている状態だと思います。

荒牧
いまはテレビシリーズの数も多いしアニメーターも足りなくなってきています。その中で3Dが作られると、どこかで突然変異のようなおもしろいことが起きるんじゃないかとは期待しています。

水島
作品数を増やして少ない話数で作る、というのが今の方法論ですけど、本数が絞り込まれて一本単位の制作費が多くなれば、いろんなことができるようになります。やっぱりスタッフの熟練度を考えると、一作品13本じゃなくて26本。26本じゃなくて52本。
昔からあるアニメのフォーマットにいろんなものを盛り込んでファンに楽しんでもらえれば、業界全体で新しいおもしろいものが作れるかなと思います。

荒牧
確かに3DCGはシリーズが続けば、ストックが増えてどんどん効率が上がって本来の得意な部分が活かされて楽になるし、大変なシーンもできるようになる。いいサイクルにハマる可能性があるんですよ。

水島
アニメーターが共通で使えるモデルなどが多く持てるのでどんどん熟練していくのもありますよね。
『楽園追放』もモーションをライブラリー化して、他の時にそれを元にアレンジという効率化を図っていましたので、これは必要ですよね。そう考えると3DCGの方が長いシリーズに向いていますね。

荒牧
いまそれで一番成功しているのは『団地ともお』ですよ。最初見て、さらに半年後くらいに見たら、その間にすごいクオリティ上がっています。最先端の3DCGアニメですよ。

水島
そこまでですか(笑)。

■ CGアニメ、今後の行方は?

―フォトリアルは、文字どおりリアルなものを目指した映像ですが、今後はより実写に近づくんでしょうか、それとも別のものになっていくのでしょうか。

荒牧
ズルい言い方ですけど、それは作品によって変えていくべきだと思っているんです。『アップルシード アルファ』はテーマ的にもこういうルックに合うものにしようとやりました。カメラワークも自然にしたかったし、そのなかで最後に異質なものを出してショッキングにしたいなって思っていた。
ルックも含めて作品によってコントロールできるというのがフルCGのおもしろいところ。「全体がこっちに行かないといけない」というのは全然ないんです。

―逆にセルルックを突き詰めていった時に、これがいまの作画アニメにどんどん近づいていくのか、あるいは逆にそれ自体が自立して行き、別個のものになるという考えはありますか?

水島
別個のものになるのが理想だと思います。ただ今の3Dのセルルックの最終目標は2Dと同じことができることにあります。あまりそこだけを狙って行かないほうがいいとは思いますね。もちろん代替する作品もあった方がいいです。萌えものも、3Dでできると証明できたわけですから、キャラ崩れがないことが最優先の作品とかね。
メジャーではやれなかった表現をやれる場所が出てくればセルルックの2Dと3Dの表現に幅が生まれてくると思います。

―3DCGは昔は予算の高いものと言われていました。もし手描き2D並みのコストになったら逆に全部入れ替わってしまうという危惧はありませんか。

水島
手描き並みのコストに下げちゃダメです。手描きのアニメーターがいま豊かなわけでありません。CGの予算は昔よりは下げるべきだとは思いますが、ある程度は保つべきです。そして効率が上がった時に生まれた余裕は新しい映像表現のために使った方がいい。
そこを下げると結局はセルアニメと同じ事態になってしまうと思います。そこは予算をくんだり調達するの方々に頑張ってもらいたいですね。と、同時にセルアニメの予算も3Dアニメと同等に持ち上げる事も是非お願いしたい。

―最後に、改めて『アップルシード アルファ』の見どころを紹介していただけますか。

荒牧
まずは最後に大きなメカが出て来るところですね。じっくり描いたのでメカ好きな方は期待していてください。後はキャラクターの表情。キャラクターは、物語の中で見ている人がどこまで自然に共感できるようになるのか、というのがチャレンジでした。先ほど水島さんから「萌えを廃した」との言葉をいただきましたが(笑)。

水島
誉め言葉ですよ(笑)。相当度胸がないとできないじゃないですか。それでもデュナンはやっぱりチャーミングに、かわいく見えたりしますから。

荒牧
『アップルシード』は今までスケールの大きな話が多かったんです。人類の未来はどうなるのか、とか。そうしたレベルではない普通の2人のバディもので楽しめる作品になっています。物語を自然に見てもらえたらいいなと思います。

―水島監督には改めてCGアニメの面白さを伺えればと思います。

水島
映像作品としてCGを使ってこれぐらいのものが出て来るようになった現在はすごく豊かでいいなと思います。同時に進化を楽しんでもらえたらと思います。
いまある3DCGアニメをそれぞれの文脈で眺めると、どこで何が起こっているのか面白く見られる。単純に作品に没入してもらうのが僕らには一番ありがたいのですが、3DCGという流れで見ることも可能です。そうした見方もお楽しみください。

『アップルシード アルファ』
2015年1月17日、全国公開

荒牧伸志監督×水島精二監督対談“CGアニメの現在と未来”―後編― 「アップルシード アルファ」公開特集 

《animeanime》

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