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【シネマモード】感覚で心を刺激する…音楽とファッションの関係『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』

残暑が続いていますが、ときおり感じる秋の気配に、ほっとできる頃となってきました。となると、疼いてくるのが秋ファッションへの関心…

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『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』- (C) FINDLAY PRODUCTIONS LIMITED 2012
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残暑が続いていますが、ときおり感じる秋の気配に、ほっとできる頃となってきました。となると、疼いてくるのが秋ファッションへの関心。夏は、カリフォルニアや南フランスなどを思い浮かべつつ、リゾート系ファッションを堪能していても、秋ともなると気になってくるのがブリティッシュトラッドなどと言う方はいませんか? そんなあなたにぴったりな作品『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』が絶賛公開中です。

どこか物足りない青春を送っていた、スコットランドはグラスゴーに暮らす20代の男女3人が、音楽を通して出会い、恋と友情を育み、大人への階段を上っていく…という物語。『ハイ・フィデリティ』『プラダを着た悪魔』『JUNO/ジュノ』『(500)日のサマー』など、映像と音楽の素敵な融合が印象的な映画のサウンドトラックに関わり、世界的バンド「ベル・アンド・セバスチャン」のフロントマンとしても活躍するスチュアート・マードックが脚本と監督を務めているのも話題です。

誰もが通るほろ苦い“青春”の日々を、切なくも鮮やかに映し出した物語もさることながら、それをご機嫌な音楽に乗せて…というか、音楽で描ききったミュージカルは、音楽映画と言うよりも、長編ミュージックビデオというおもむき。映像と音楽がどちらもどや顔で主張してくる絶妙さが、今、音楽業界の第一線で活躍するミュージシャンだから作り得た作品と言える秘密。音楽を先に作りはじめ、脚本とサントラ制作を同時進行させたと聞けば、映像と音楽の見事な融合、揺るぎない世界観に納得できることでしょう。

さらに、音楽とは切っても切り離せないファッションも本作の見どころです。主人公たちは70年代風のスタイルで決めているのですが、それが何ともキュート。60年代後半に流行したサイケデリックなテイストも時折チラ見せしつつ、帽子、タイ、眼鏡などのトラッド小物、英国らしいタータンチェックやストライプ、ロマンティックなフラワープリントなどが華やかで目にも楽しいのです。

参加ブランドは、「フレッド・ペリー(FRED PERRY)」、「トップショップ(TOPSHOP)」、「アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)」、「アメリカン・アパレル(American Apparel)」、「ヌーディージーンズ(Nudie Jeans)」、「クラークス(Clarks)」などの定番の若者ブランド。かっちりとしたトラッドファッションにも、丈やフィット感で遊び心を加え、わくわくするようなおしゃれ感を加えていて、とても若々しくて素敵。これも、ミュージックビデオっぽいスタイリッシュさを支える要素のひとつなのでしょう。

何かに何かを加えたのではなく、すべてが主役。そういう意味で本作は、物語、音楽、ファッションとそのすべてが同じくらい大切な存在で、それらの要素が互いに作用し合って独自の世界を生み出す。そうしてはじめて、ひとつのメッセージを伝える準備ができるという発想は、やはり映画業界では難しいもの。理屈ではなく、感覚で心を刺激されるような作品の魅力の一端は、そこにあるのかもしれません。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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