【MOVIEブログ】2015東京国際映画祭 Day8

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【MOVIEブログ】2015東京国際映画祭 Day8
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29日、木曜日。5時間熟睡できて、生まれ変わった気分。曇りだけど天気も良くて、今年は本当に素晴らしい。

10時半に事務局に行き、クロージング関連業務を詰め始める。もうクロージングの準備だなんて! 今年は、ここ数年で一番早い。こんなに早い映画祭は、ここ数年ではじめて。どうしてだろう。序盤にかなりバタバタしたからか、毎日が異常に早く過ぎてしまった。なんだか、噛みしめていない感じで、もう終わってしまうのが残念でならない。

準備作業をしつつ、11時から新聞社の取材。ありがたい。今年のコンペに対する現在の考えなどを聞いてもらう。会期中の感触などを交えて話すので、会期前の作品紹介時期とはまた自分のトーンも違ってくる。話してみて初めて気づくこともあり、面白い。というか、やっぱりちゃんと寝てると頭の回転が違うね!

取材終わって、楽しいお弁当タイム。チキンカツ。ペロリ。

1時に劇場に行き、コンペ『残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-』の2度目のQ&A。中村義洋監督をお迎えして、たっぷり充実Q&A! 100人規模の距離の近い環境で、日本を代表するヒットメーカーのひとりである中村監督に直接質問できるなんて、本当に貴重な機会だ!

予想通り、会場からは質問が途切れない。最初に僕から中村監督に「ホラーや恐怖映画は、機会があれば撮りたいと思っていたのか、それともあえて距離を置いていたところに、今回小野不由美さんの原作に出会って変わったのか」という質問をしたところ、「距離を置こうと思っていた」とのお答え。中田秀夫監督や清水崇監督の作品を見て、こういう怖がらせ方は自分には出来ないだろうと思って距離を置いていたところ、小野さんから直接『残穢』の映画化を打診されて、新たに取り組み直そうと思ったとのこと。中村監督が過去に手掛けた「本当にあった 呪いのビデオ」シリーズの、フェイクドキュメンタリーで過去の出来事をさかのぼって調べていく演出を小野さんが好きだったらしく、小野不由美と中村義洋の世界が共鳴した、というわけで、とても興味深い。

竹内さんの体温の低そうな声と演技について、佐々木蔵之介さんの起用理由、監督の好きな恐怖映画について(日本では『回路』、外国映画では『アザーズ』とのこと。そう言われてみると、『アザース』のニコール・キッドマンと、『残穢』の竹内結子の雰囲気はちょっと似ているかもしれない)、劇中の誰に「アタック」(穢れの被害が及ぶこと)するか検討したことについて、恐怖映画における美女のヒロインについて、恐怖映画を克服するためには自分で作ってみるのが一番ある、などなど、とても面白い! 充実のQ&A。お客さんにとっても、とても貴重な機会だったはず!

いやあ、よかったなあと中村監督とのトークをかみしめながら事務局に戻り、14時から新聞の取材が1件。朝の取材ではコンペについて語ったけれども、今回は別の新聞社に対してスプラッシュ部門について語る。日本映画をいかに映画祭で見せていくかについて、理想論と現実論を交えて記者の方と語り合うことになり、お祭り気分をいったん封印しながら思いを巡らせてみる。

15時からクロージングの準備をまた続ける。

16時に劇場に行き、コンペの最後の登場となる『家族の映画』のQ&A司会。まだ明日の上映があるので、ここで内容を書くのは控えよう。

17時に事務局に戻り、夜の弁当が到着したので、早速の早弁。本日は喜山飯店の中華弁当! 本当にキザンは美味しい! エビチリ弁当を感涙にむせびながら頂く。

18時からミーティングが1件。

18時40分に大慌てで劇場にダッシュしたら、予定を間違えていて、司会登壇時間ではなかった。焦って損したけれど、予定を忘れるよりはマシ。もはや終盤、集中していかなければ。

19時20時から、コンペ『ガールズ・ハウス』のQA&司会。シャーラム・シャーホセイニ監督に加え、今回は昨日来日した俳優のハメッド・ベーダッドさんも参加。ヘヴィーな後味を残す作品なだけに、上映終了直後の雰囲気は固くなりがちなのだけれど、イランから戻ってきたばかりという日本のお客さんの明るい発言に場内の緊張が解け、監督も中盤からリラックスして、いい雰囲気になってきた。

監督の企画の意図などを聞きつつ、作品のラストシーンの意味について監督から謎めいた答えをもらい、僕がムムーっと考え込んでしまうと場内から笑いが起きる。ちょっと一体感を味わえた瞬間で嬉しい。みなさんはどういう解釈をしたのだろうか…? 客席のイランの女性からは、「イラン社会のどの部分を批判しているのか?」という指摘が入るが、監督は軽くいなしてかわす。ベーダッドさんによれば、「イラン国内でQA&をする場合は激しいやりとりをすることが多いが、それは文化を共有しているからこそできること。日本でのQ&Aは、まず文化の発見のという段階から始めるから、最初に尊敬があり、まずは落ち着いた議論になる。そこが興味深い」とのことで、これは国際映画祭の意義のひとつを言い表しているような気がする。いいQ&Aだ。

続けて19時20分から、スプラッシュ『スプリング、ハズ、カム』のQ&A。吉野竜平監督チーム総勢9名の登壇で、とても賑やか! 現場の雰囲気が伝わってくるような和気あいあいの空気がとても楽しい。細かい配役に至るまで魅力的なキャストが揃ったのは吉野監督の人徳なのか? について、あるいは、現場の雰囲気について、あるいはラサール石井さんへの監督の演出について、などなど、楽しい話題が相次ぐ。本当にこのチームは和むなあ。

事務局に戻り、ミーティングを2件。2個目の中華弁当をペロリ。

22時半に事務局に行き、コンペ『ルクリ』のQ&A。ヴェイコ・オウンプー監督、主演俳優のユハン・ウルフサクさん、女優のミルテル・ポフラさん、プロデューサーのティーナ・サヴィさん。

今回のコンペティションでもっとも賛否両論を呼んでいる『ルクリ』。ツイッターを見てみると、やはりかなり評が割れており、評価する人と、全くダメ、という人とに分かれている。しかし、「否」が多いのはある程度予想したけれど、僕の予想を超えて「賛」も多い。22時40分から始まるQ&Aにも多くの人が残っている。もちろん、残った人が全員「賛」だとは思わないけれど、少なくとも興味は引かれているはず。

物語が抽象的であっても、映像と音に刺激を受け、何かをインスパイアされることもひとつの映画体験なのだと感じてくれる人が、東京国際映画祭のお客さんにはたくさんいる。これは、僕が言っているのではなく、「こんなに素晴らしい上映とQA&は、映画監督になってからはじめてだ」とオウンプー監督が言っているのだ。

ヴェイコ・オウンプー監督は、来日当初は少し神経質そうで、とっつきにくいところが一瞬あったけれど、みるみるうちにそのようなイメージは消え、いまでは今年のゲストの中でもっとも親しみやすくて、もっともチャーミングで、そして知的で、さらに優しい、というベストゲスト的ゲストだ。日本をお世辞抜きで心底楽しんでいる様子もとても嬉しい。

『ルクリ』の解説をするのは難しく、作品のコンセプトや、俳優への演出などについて説明をしてくれるものの、あまり具体的でないので、ヴェイコの回答の全てがストンと腑に落ちるわけではない。でも、言葉の端々に刺激が満ちている。ルクリ、というのは監督の家の近くにある森のことであるらしく、そこは聖なる地とされており、あまり人が訪れることもないらしい。キリスト教が伝来する前からの聖地であり、そこに映画『ルクリ』の解釈のヒントがまずは隠されている…。もっとも、解釈に「正解」はないので、我々は思考を巡らせる快楽を味わうだけでいいのだが。

ひとりのお客さんが、エンディングで流れるサム・クックの「A Change is gonna come」を起用した理由を質問する。僕もこれは絶対に聞きたいと思っていたので、ナイス質問! と心の中で叫ぶ。うまくフィットしたから、というのが監督の答えだったのだけど、さらに僕が「あまりにストレートな選曲なので、実は皮肉を込めていたりしますか?」と尋ねたら「それはない。いまの世の中、みんなシニカルになり過ぎている。素直に使ったよ」とのこと。カッコいいぜ…。

Q&Aの途中から、ヴェイコもお客さんも、ノッてきたのが分かる。この作品の話をもっと聞きたいし、話したい、という空気がスクリーン7に満ちてくる…。少なくとも、僕にはそう感じられた。『ルクリ』のような極端なアート作品が、シネマズのスクリーン7のような大きなスクリーンで上映されることは滅多に無いことだし、ましてや監督の話が直接聞ける機会なんて、最初で最後かもしれないのだ。5分か10分長引いたとしても、構わないじゃないか!

と開き直って質問を受け続けていたら、結果30分もオーバーしてしまった。これは素直にスタッフに謝ります。ごめんなさい。でも、充実した! というお客さんがひとりでもいてくれたら、僕に後悔はないです。

どうかな、『ルクリ』。日本のお客さんにインパクトを残すことが出来ただろうか。ヴェイコ・オウンプーという才能に今後注目してみようと思ってくれた映画ファンは、うまれただろうか?

(写真は『ルクリ』Q&A。僕の右がヴェイコ・オウンプー監督。その右のユハン・ウルフサクさんもとてもカッコ良く、女優のミルテル・ポフラさんもチャーミング。プロデューサーのティーナ・サヴィさんはめっちゃいい人で、本当にいいチーム!)

Q&A終わり、外でお客さんたちと『ルクリ』談義。楽しい。そして、もう映画祭の終りが見えてきているので、寂しい。「ヤタベさん、また来年」とお客さんに言われ、少し泣きそうになる。

0時に事務局に戻り、ミーティング2件。

1時に、本日3つ目の中華弁当。本当にキザンのお弁当、何個食べても本当に美味しい。で、もう1個、目の前にあるのだけど、ひと晩で弁当4つというのは14年間の映画祭業務歴の中で経験がないので、やめておこう。

1時~3時は懸案事項の整理&処理。ブログ書いて4時30分。今年は本当にこういうペースの年だった、ということなのだな。最後まで突っ走ろう。と言いつつ、さすがに本日もそろそろ撃沈です。そしてああ、明日は実質最終日! なんということだろう!
《矢田部吉彦》

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