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【シネマVOYAGE】『レッドタートル』男と女の物語はシンプルで深い セリフなしの“心の旅”へ

スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』の原作・脚本・監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット…

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『レッドタートル ある島の物語』
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スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』の原作・脚本・監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。馴染みのない名前だと思いますが、2001年の米アカデミー賞短編アニメーション映画賞をはじめ、多くの賞に輝いている8分半の短編『岸辺のふたり』の監督で、彼の初の長編アニメーション映画がこの『レッドタートル』です。

もともと『岸辺のふたり』の世界感や絵のタッチが好きだったこともあり、『レッドタートル』は楽しみにしていた1本でした。しかも今回は81分の長編! 『岸辺のふたり』はセリフがなかったこともあり、この新作にセリフはあるのかないのか、タイトルにある“赤いカメ”のどんな物語なのか、興味は膨らむ一方でした。…で、セリフは──『岸辺のふたり』と同様にありません。制作当初、少しだけあったそうですが、スタジオジブリの高畑勲監督の「ぜんぶ削った方がいい」というアドバイスを受け、ナシになったのだとか。

物語はとてもシンプルです。旅の途中、荒れ狂う海に放りだされた1人の男が無人島にたどり着き、赤いカメと出会い、そして1人の女と出会う。出会った2人がどう生きていくのかが描かれます。セリフがないということは当然、男と女の行動と彼らを取り巻く状況から物語を把握しなくてはならなくて。ある意味、想像力を試される映画でもあります。男が何を考えているのか、どうしたいのか。女の行動の背景にはどんな心情が込められているのか。きっとこうだな、ああだなと探りながら、男と女と一緒に“心の旅”をしているようでもあって、面白い。

ただ、世界感に入り込むコツが少しだけ必要かもしれません。というのは、人気漫画やベストセラー小説の映画化のように映画を観る前にある程度どんな話なのかを知っていたり、作品について説明してもらうことに慣れてしまっていると、この手の作品は戸惑うかもしれない…。でも、セリフがないからこそ男と女が何を考えているのか知りたくて作品に入り込むことができる、美しい映像に集中することができる。実はとても贅沢な映画、心で感じる映画。セリフと説明に“頼らない”、自分で“考える”という意識があれば、すうっと『レッドタートル』の世界に入り込めるのではないかと。

無人島にたどり着いた男がどう生きていくのか、旅の先にある人生の物語であり、同時に誰かを好きになることに理由などないことを問いかける、愛についての物語でもあります。見方によっては「人魚姫」の一部をモチーフにしているとも捉えられます(人魚姫を思い出したら、若き日のトム・ハンクス主演の『スプラッシュ』も思い出しました!)。

言葉の違い、国の違い、宗教の違い…大なり小なり恋にはさまざまな壁がありますが、好きになったから一緒にいたい、愛してしまったから一緒に生きていきたい──『レッドタートル』で描かれる男と女の物語はとてもシンプルでとても深い。解釈は人それぞれですが、冒頭、赤いカメが男の行く手を何度も邪魔する理由を考えただけで、胸キュンでした。私のなかでは、ものすごくロマンチックな恋愛映画として刻まれています。(text:Rie Shintani)
《text:Rie Shintani》

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