【シネマモード】最期まで自分らしく生きる…母の意志、遺された時間を共に過ごす娘のメッセージ

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『92歳のパリジェンヌ』 (C)2015 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 2 CINEMA - FANTAISIE FILMS
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  • 『92歳のパリジェンヌ』ポスタービジュアル (C)2015 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 2 CINEMA - FANTAISIE FILMS
どんな決断であれ、それがポジティブな意志の表れであれば、自分と意見が違っていたとしても支持したいなと常に思っています。それが、誰もが笑顔になれるものであれば喜んで…というところですが、いつもそうとは限らないかもしれません。例えば、尊厳死というように。

映画『92歳のパリジェンヌ』は、老いゆく自分の将来をどう締めくくるかを自らの意志で決め、実行していく女性マドレーヌの物語。「2か月後の10月17日に私は逝くことにしました」。家族の前でそう宣言し、動揺したり、怒ったり、泣いたりする娘や息子に、理解を求めるのです。マドレーヌのモデルとなっているのは、フランスの元首相リオネル・ジョスパンの母親ミレイユ。劇中、母を説得し翻意させようとする家族たちの中で、母の意志の強さに心動かされ、その決断を尊重し、手を差し伸べ、遺された時間を共に過ごす娘が登場しますが、実在のミレイユにも良き理解者である娘がいました。それが、映画の原作となった小説「最期の教え」(青土社刊)を、自らの体験を元に執筆したノエル・シャトレ。「愛する人を失うと誰もが何かしらの後悔をする。でも愛する人と過ごすことによって、愛する人を受け入れることによって、後悔しないようになることに気付いた。この映画を観てくれる人に、後悔しないように生きようと伝えたかったの」と話しています。

死にまつわる決断を受け入れるということは、近しい人間ほど難しいはず。ミレイユが助産婦として活躍し、86歳でアフリカまで出産の手助けに訪れるほど生命力に溢れ、かつては「女性の産む権利、産まない権利」のために活動していたことを考えると、彼女が賢く、慈愛に満ちた強い心の持ち主だということがわかります。そんな生き様を見ていればこそ、娘は母の決断が熟慮された末に最期まで自分らしく美しく生きるためのものなのだと理解できたのかもしれません。ミレイユの決断が、決して不幸ゆえのことではないことは、本作が驚くほど笑いと輝きに満ちたものであることからもよくわかります。だからこそ娘は、愛するということが互いを尊重し慈しみ合い、その人の考えやその人の決断も受け入れることなのだということにも気づけたのでしょう。

“パリジェンヌ”という言葉から、“おしゃれなパリの女性”を連想する方も多いと思います。でも、タイトルに使われた理由はそれだけではないはず。パリジェンヌたちは、スタイリッシュなファッションやライフスタイルを象徴する人々ですが、その根底には自分らしさを貫く意志の強さが感じられます。時代や流行に、意味もなく流されず、選び取るモノ、コトは、彼女たちの人生経験や価値観の表出。だから人生で最も大きなこの決断は、その人そのもの。ならば、それがポジティブな姿勢から生まれた場合に限ると強調させていただきつつ、受け止めるのも愛なのかもしれないと思うのです。

価値観はひとつではないだけに、マドレーヌの選択や家族の態度に対して抱く感想は人それぞれでしょう。難しい議題だけに正解などあるはずもなく、自分なりの答えも見つかりませんが、自分が何らかの理由で難しい決断を下したとき、寄り添ってくれる理解者がいてくれたら嬉しいということだけは、誰にとっても同じと言えるのかもしれません。
《text:June Makiguchi》

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