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【シネマモード】色のない人生の中にも小さな幸せあり『幸せなひとりぼっち』

ある種のギャップには、人の魅力を増幅させる効果があります。見た目は怖いけど実は優しい、見た目はか弱そうで可愛いのに実は強い、など…

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『幸せなひとりぼっち』 (C)Tre Vanner Produktion AB. All rights reserved.
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ある種のギャップには、人の魅力を増幅させる効果があります。見た目は怖いけど実は優しい、見た目はか弱そうで可愛いのに実は強い、など。ギャップが大きければ大きいほど意外性が驚きを生み、興味をそそられるのです。

隣人と顔を合わせれば文句ばかりの偏屈な頑固おやじなのに、実は愛に溢れている――。そんな孤独な男オーヴェの、幸せな人生を描いているのがスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』です。

妻に先立たれ、一人暮らしのオーヴェは59歳。ある日、43年間勤めた会社をクビになり、もはや人生に思い残すことはないと、亡き妻の元へと旅立とうとしていました。ところが、いざ! というときに、家の外が大騒ぎに。イラン人の主婦パルネヴァとその家族が引っ越してきたのです。引っ越しトラックがオーヴェの庭のポストを壊し、彼の逆鱗に触れたパルネヴァですが、明るく挨拶。以来、迷惑をかけたお詫びにと手作りペルシャ料理を持って来たり、運転を教えてと頼んで来たり、何かとオーヴェに絡んでくるのです。

やがて、オーヴェは車の運転を教えることに。一緒に過ごすことが増えるにつれ、オーヴェは明るくあっけらかんとしたパルネヴァに少しずつ心を開いていきます。そして、彼が妻を深く深く愛する優しい人間だったことが、パルネヴァとの付き合いの中で明らかになっていくのです。

いつも不機嫌そうで、正論ではあっても冷たい言い方しかできない彼が、隣人から煙たがられ、誤解されていても仕方がないのかもしれません。誰にでも好かれたい人、大切に思う人以外には理解されなくていいという人など、社会との関わり方はそれぞれですが、オーヴェは明らかに後者。最愛の妻を失った後の世界は、彼にとって色のない人生だったのでしょう。そんな彼も、積極的にぐいぐいと踏み込んでくるパルネヴァの出現で、凍てついた心を溶かし、その中に閉じ込めていた愛情をふっくらと蘇られていきます。それが可能だったのも、妻との幸せな日々があったから。妻の死後は、例えひとりぼっちであっても、愛し愛された記憶を抱いて暮らしている彼は不幸ではなかったのでしょう。だから人にどう思われようとかまわなかったのかもしれません。

劇中、回想シーンとして、妻とのなれ初めや恋愛模様、結婚生活が描かれます。そのときのオーヴェの幸せぶりは、とても涙なしには観られないほど、温かさに満ちたものでした。好きな人と生きるという平凡なようでいて、とても特別な幸せが、天真爛漫でまっすぐな心を持つ妻の笑顔とともに映し出されていきます。二人の生活を彩るのは、シンプルだけれど豊かな生活をイメージさせる北欧インテリア。赤や青、緑や黄色などを使った懐かしく温かな色味が印象的で、スウェーデンの素朴な日常が、幸せな夫婦生活と見事にリンクしていました。

大げさな演出はないけれど、手作りのような質感で丁寧に作り上げられたぬくもり伝わる作品『幸せなひとりぼっち』。大切な誰かと観れば、寒い冬にも心が温まることでしょう。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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