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【MOVIEブログ】2017ベルリン映画祭 Day3

11日、土曜日。6時半起床、一連の朝のルーティンを済ませて、本日も9時の上映へ。週末に寒波到来とのうわさもあったけど、気温は変わらずマイナス3度くらいかな。キンと冷えて気持ちいい。

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11日、土曜日。6時半起床、一連の朝のルーティンを済ませて、本日も9時の上映へ。週末に寒波到来とのうわさもあったけど、気温は変わらずマイナス3度くらいかな。キンと冷えて気持ちいい。

朝のコンペのプレス上映には審査員上映を兼ねることもあって、今朝は審査員長のポール・ヴァーホーベンや、マギー・ギレンホール、そしてディエゴ・ルナらが3列ほど前で鑑賞している。ポール・ヴァーホーベンがどのような好みなのか、とても楽しみ。

9時の上映は『Felicite』(写真)という作品で、監督のアラン・ゴミはセネガル系フランス人。本作の舞台はコンゴのキンシャサで、酒場で歌うフェリシテという女性を巡る物語。息子が事故に合い、手術費用を捻出するためにフェリシテが奔走する話なのだけど、前半の1時間で物語のけりはほぼついてしまう。残りの1時間はまるで長いエピローグのようにスケッチが連なっていく構成が特徴的で、単なる物語映画を超えた、独特な抒情性とリアリズムを備えた作家映画だった。

アフリカ音楽(とくくってしまうのは乱暴だけど)がふんだんに歌われる一方で、西欧音楽のオーケストラの演奏や聖歌隊の合唱もフィーチャーされる文化の融合がとても刺激的で心を揺さぶられる。フェリシテの歌は演歌であり、ゴスペルであり、叫びであり、ささやきでもあるという素晴らしいパフォーマンス。なんといってもピカソの走る女から抜け出てきたような堂々たる体躯が神々しく圧巻で、女神のように画面を支配する。ああ、そうか、つまりはディーバだ。ディーバ映画なのだ。主演女優賞候補だ。

貴重な作品を見たな…、と喜びをかみしめながら、11時20分からのマーケット上映のフランス映画を冒頭だけ少し見て、これはパスしてもいいかなと思って急いで会場を変えてみる。

すると入場口で日本の某映画館のYさんに出会い、曰く「ヤタベさん、おにぎり食べます?」。ああ、僕が映画祭で粗末な食生活を送っていることをご存じの方がたまにいらっしゃって、このような有難いお言葉を頂くことがある…。ありがたく頂戴し、涙を流しながら頬張る…。

11時45分から見たのは、「パノラマ部門」の『One Thousand Ropes』というニュージーランドの作品。マオリのコミュニティーで生活する初老の男性を主人公にしたドラマで、出産と死、誕生と輪廻、死からの蘇り、DV、父と息子、父と娘、などなど、様々なトピックスを思わせぶりにまぶしていくうちに、見ているほうは段々うんざりして飽きてしまうというパターンで、これは厳しかった…。

午後はマーケット会場に行って数社と連続ミーティング。昨日までは少し人が少ないかなと感じられたマーケットだったけれど、さすがに土日となると賑わっている様子。

17時に上映に戻り、マーケット試写でフランス映画の『Rock’n Roll』。とても見たかった作品なので、マーケットで見られて嬉しい。ギヨーム・カネ監督作で、本人役で自身も主演。実生活の奥さんというかパートナーのマリオン・コティヤールも本人役で出演するコメディードラマで、これは期待に応える快作!

40代に突入したギヨーム・カネが、もはやイケてる俳優リストから外れていると聞いて大ショックを受け、ワイルドで若々しい俳優へのイメージ・チェンジを図ろうとすることで起きる騒動を描く内容で、自虐ネタのオンパレードに爆笑。マリオン・コティヤールはグザヴィエ・ドランの新作に抜擢されたことに狂喜し、役作りのために家庭でもケベック訛りのフランス語で通す脇のエピソードも最高で、これはもうフランス映画ファンにはたまらない。

ギヨームのふり切れ方の徹底ぶりもさることながら、マリオンのコメディー演技(本人は真剣だけど)が本当に素晴らしく、遅れてきたマリオンファンの僕としては(『サンドラの週末』からのファンなので遅いことこの上ない)、ほとんど至福の1本。日本公開はどうかな…。フランス映画祭かな…。どこでもやらなかったら、東京国際もありかも?

興奮を沈めつつ、19時から「フォーラム部門」で『Rifle』というブラジル映画。上映前に監督が登壇し、現在のブラジルとブラジル映画界が置かれている厳しい状況に対するステートメントが読み上げられ、身が引き締まる。映画祭の役割の重要性を改めて痛感。

ミニマルなアート作品ながら強固なスタイルを持った作品で引き込まれる。初期のイサンドロ・アロンゾを少し彷彿させるような、不愛想で粗くも美しいタッチ。ラテン・アメリカはやはり才能の宝庫だ。

続けて、22時からメイン会場でコンペ部門のオーストリア映画で『Wild Mouse』。突然新聞社を解雇された音楽批評家の男性を巡るコメディードラマで、んー、これはイマイチ。設定が陳腐な上にキャラクター描写も浅く、会場はそれなりにウケていたけど、僕は退屈してしまった。

22時からと書いたけど、始まったのは30分押しで22時半。カンヌはほとんどの公式上映が見事にオンタイムで始まるのに、より時間に厳しいイメージがあるドイツのベルリンでは平気に押すというのはどういうことだろう。22時の回が押すと、結構辛い…。

なので、ブログを書き殴ったら(推敲なしでごめんなさい)、もう2時半だ。上映的にはアップダウンの激しい一日だったけれど、とはいえ充実。ダウンします!
《矢田部吉彦》

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