【MOVIEブログ】2017ベルリン映画祭 Day7

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15日、水曜日。またまた好天、零下7度だった昨日より気温は高めで、体感温度は0度くらいかな? 連日4時間睡眠なのに元気なのは映画祭のマジック。奥歯の調子もいいので、本日もいそいそと出発。

9時からのコンペは、ポルトガルのテレーザ・ヴィラヴェルデ監督新作の『Colo』。かつて彼女の助監督を務めていたジョアン=ペドロ・ロドリゲスに(言葉は悪いけど)抜かれてしまった感はあるものの、ヴィラヴェルデ監督も日本ではポルトガル映画祭などで紹介されているように、重要な中堅監督(50歳)であることは間違いない。

しかし本作はなかなか手ごわい作品だった…。17歳の女子高生、失職中で精神が不安定になっている父親、そして家計を支える母親の3人の人物の行動を追っていく内容なのだけど、なんというか、行為の断片をつなげていくだけで物語が転がっていかない。最初の1時間はほぼ何も起こらないので、呆然と画面を眺めているしかなく、しかもその映像に分かりやすい力があるわけではないので、いささか退屈してしまう。

そして、ここまで退屈だということは逆に面白いのかもしれないとの境地に達すると、後半が少しずつ面白くなっていく。資本主義の失敗と中流家庭の崩壊という現代の事象を一種の寓話として描いているのだと理解すれば、飲み込めてくる(気がする)。とても奇妙なエンディング・ショットを含めて、かなりハードルの高い作品だけど、つまらないで片づけてしまってはいけない作品ではないか?

これはもっと考えてみないといけないと思考をぐるぐるとさせながら、モールでまたまたソーセージとザワークラウトとポテトのプレートを食べて、次の上映へ。

12時半から、フォルカー・シュレンドルフ監督新作で『Return to Montauk』。ステラン・スカースガードがドイツの人気作家に扮し、新作発表で訪れたNYでかつての恋人と再会する苦い大人のラブ・ストーリー。んー、僕にはあまり響かず。

すっかり人気の少なくなったマーケット会場に行き、ミーティング。1件ドタキャンされて気分を害したものの、それでも数件をこなしてから、17時にまた上映に戻り、「パノラマ部門」の『Bones of Contention』という作品へ。

スペインのフランコ政権による弾圧の中で活動し、やがて虐殺された詩人を中心にしたドキュメンタリーで、LGBT運動の始祖のひとりでもあると紹介されるその人物の生きざまは重要であるのは間違いないのだけど、学者たちの証言で繋がれる構成に面白みが感じられず、少し退屈してしまう。

続けて19時半から「フォーラム部門」で、『House in the Fields』(写真)というモロッコ人の母親を持つイギリス人女性監督による作品へ。これが朝からのイマイチな気分を吹き飛ばす素晴らしい作品だった!

モロッコの山間の僻地にある村に暮らす少女を中心に、村人の生活や、厳しくも美しい自然の四季が描かれていくドキュメンタリー。ドキュメンタリーではあるのだけど、演出は施されていて(いや、あらゆるドキュメンタリーに演出はあるのだけど、その話を始めると長くなるので割愛するとして)、あたかも一遍の物語映画のように見ることができる。

愛する姉が結婚することで家を出ていくことを悲しむ少女の語りから始まり、随所に原始的な暮らしが伺えるけれども決して貧困ではない農家の日常の暮らし、雄大な自然、そして何よりもあまりにも魅力的な村人たちの姿に目が釘付けになる。人物への超クローズアップをスタイルの軸に据えて、大自然のショットとのコントラストを効かせていく手法が斬新で映画的に見応えがあるし、要所に挿入されるなんともヘタウマな弦楽器の弾き語りも愛せずにはいられない。そして圧巻のクライマックス。

監督は定期的に住み着くことを含めこの村に通い、5年をかけて本作を完成させたという。そう聞くと、もちろん佐藤真の『阿賀に生きる』や小林茂の『風の波紋』を連想せずにはいられない。年月をかけなければ、あの距離でカメラを回すことは決してできないだろう。今回のベルリンで大収穫の1本だ。

そして22時から、『House in the Fields』から雰囲気を180度変えて、スペインが誇る大鬼才、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督新作『The Bar』へ(賞の対象にならない「アウト・オブ・コンペ」)。これも今年のベルリンで事前に最も楽しみにしていた1本。日本でも『気狂いピエロの決闘』で度肝を抜かれた人は少なくないと思うけど、僕も日ごろからイグレシア監督ほど「高カロリー」の映画を作れる人はそうそういないのではないかと思っているひとりなので、期待は高まるばかり。

そしてその期待を気持ちいいほど軽々と上回ってくれた! というか、最高に気持ち悪かった! ハハハ。いやあ、これはサイコー。絶対に日本公開もあると信じるので詳しくは書かないけれど、マドリッドのバーに集まった人々に突如として振りかかる国家規模の災難を描くパニック・コメディーで、もう感動のド迫力。このシチュエーションから一体どうやって100分もたせるのだろうと思いきや、あれよあれよの展開で一切テンションを途切れさせない見事な脚本と演出。B級にふさわしそうな内容を超A級に仕立て上げるイグレシア監督の剛腕たるや、感服するしかない。もっとも、善良なるベルリンの紳士淑女の方々が途中退場されている姿も散見されたけれど!

夜の2本でまるで異なる興奮を体験し、本日も終了。高揚した気分がなかなか収まらない中、感想がうまくまとまらないことに情けなくなりながらブログを書いて、そろそろダウンです。
《矢田部吉彦》

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