映画『昼顔』では2人が厚い信頼を寄せる西谷監督による、連ドラのファンにとって懐かしい演出が至る所で挿入されている。必見は、裕一郎が紗和に向かって指先だけを“ちょいちょい”っと動かして手招きするあの独特な仕草。実は、“ちょいちょい手招き”は監督と2人にとって特別な仕草だそうだ。「あれは、連ドラが始まる前に監督がリハーサルをしたいとおっしゃって、3時間くらいかけて出来上がった動きなんです。連ドラでは私もやりましたけど、今回は北野先生だけ。監督が北野先生に伝授した、北野先生にしかできないものなんですよ。そう簡単にはできないよね?」と大笑いしながら斎藤さんに答えを求める上戸さん。斎藤さんは「はい」とうなずく。「僕特有の…いびつな形状なんです。僕って色々(笑)。それが織りなす奇跡のハーモニーなんです」といびつな自分と“ちょいちょい手招き”の秘話を教えてくれた。監督のこだわりは登場人物のファッションにも色濃く反映されている。連ドラに映画にと、終始Tシャツにパンツなどのカジュアルスタイルに徹する紗和だが、今回は監督が色と形を吟味して映画用に作ってもらったというこだわり抜いた特別なファッションに身を包んでいるシーンがある。なぜ紗和のファッションにそのような大きな変化があるのか。物語を追ううちに、紗和の心情の変化とともにその答えを目の当たりにする。靴紐を縦結びしかできない紗和に裕一郎が蝶結びを教え、2人が絆を“結んだ”ことを観客に印象付ける、紗和の定番アイテム・スニーカーに加え、海辺の町を舞台とした映画にはビーチサンダル姿の紗和も。「何足も履いて、歩く姿を監督に見ていただいて決めた」という上戸さん演じる紗和の足元にも要注目だ。ドラマで紗和と裕一郎をつなぐキーアイテムとなった裕一郎のメガネについては、斎藤さんから「残念ながら撮影までの2年間で同じ型のものが廃版になってしまって…」という裏話も。このように、紗和と同じく3年後の裕一郎にも、リニューアルされたメガネや山スタイルなど、連ドラでは見られなかったちょっとした装いの変化が見られるところにリアルさがある。上戸さんは裕一郎がかぶる「麦わら帽子もね!」との指摘も忘れない。最後に、人気ドラマが3年の時を経て映画化されたことへの思いを2人に聞いた。「ドラマが盛り上がった直後の映画化ではなく、経過した時間が必要だった、その意味が出たという作品になっています」(斎藤さん)、「そういう、時の流れが映画にも生きています」(上戸さん)。
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