【MOVIEブログ】2017 TIFF作品紹介“特別上映・特集”など

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東京国際映画祭の作品紹介ブログ、今回は特集や招待部門から個人的おすすめを紹介したいと思います。

まずは「特別上映」の枠で紹介される『リュミエール!』から始めます。映画を発明したリュミエール兄弟が残した千本を越える作品から108本をピックアップし、分かりやすく分類した上で、解説しながら紹介していく作品です。当時の撮影可能時間は1本あたり30秒だったので、つまりは30秒の短編が100本以上見られる内容です。

リュミエール兄弟の「発明」とは何だったのか。まず、カメラをどこに置くか。カメラの位置が映像を決定付け、その映像が映画なるものを定義づける。まさに1本目からリュミエール兄弟は映画を定義づけたのであり、現在に至るまであらゆる映画がその影響下にあることが分かります。リュミエール作品をこれだけまとめて見る機会はないし、しかもそれらの作品の意味や意義を分かりやすく解説してくれるので、目からうろこは落ちまくりでこれほど刺激的なことはありません。とはいえ、「お勉強」モードはみじんもなく、デジタル復元された美しい映像を堪能しながら、映画の起源に立ち会うスリルを味わうことになります。

工場から労働者が出てくる様子を撮影した映像や、汽車が駅に入ってくる作品は有名で、見たことある方もいるでしょう。ちょうど画家が同じモチーフの絵を描き続けることがあるように、リュミエール兄弟も同じテーマを繰り返し撮影しています。それらを比較したり、史上初のギャグ映画を紹介したり、美しい構図とは何かを教えてくれたり、あるいはリュミエールは既にシネスコサイズを発見していた(!)下りとか、もう興奮しっぱなしです。

また、映画の技術についての話だけでなく、当然ながら撮影された対象も重要です。19世紀末の人々や町の様子が見られてとても貴重です。また、リュミエール兄弟は自分たちだけでなく、スタッフのカメラマン技師を世界中に派遣してその土地を撮影させたことでも知られており、世界各地の映像が登場します。日本も登場します。もちろん、映像で見られる最古の日本の姿のひとつのはずです。リュミエール兄弟がグッと身近に感じられるのは言うまでもありません。

このように実に多彩な楽しみ方ができる作品の監督が、ティエリー・フレモーです。ん、誰? 聞いたことないよ、という人もいるかもしれません。しかしこのフレモー氏、仮に「世界映画人影響力ランキング」なるものがあったとしたら、間違いなく上位にランクインする人物なのです。というのは、フレモー氏はカンヌ映画祭の実質ヘッドであり、カンヌの公式部門で上映される作品の選定責任者であるからです。世界最高峰の映画祭であるカンヌ、そのヘッドの名を世界の映画業界で知らない者はまずいないでしょう。

そのティエリーさんのもうひとつの顔が、フランスのリヨンにある「リュミエール研究所」のディレクターで、彼はリュミエール作品の発掘と復元に長年携わってきています。その仕事の集大成ともいえるのが今回の『リュミエール!』だというわけです。オリジナル版ではフレモー氏が声のガイド役を務め、実に軽妙で分かりやすく映画作家としてのリュミエールを解読してくれており、作品の大きな見どころのひとつにもなっています。

ただし、フランス語の解説ナレーションが非常に効果的である一方、これをずっと日本語字幕で読むとなると、せっかくのリュミエール映像への集中が削がれてしまうという難点があります。僕も本作を最初にフランスで見たときは、日本で上映するなら吹き替えの方がいいだろうなと思っていました。さて、誰がふさわしいか…、と勝手に考えていたところ、日本の配給会社が指名したのが、なんと立川志らく師匠! これは素晴らしすぎる大ヒットの人選だ!

僕が落語ファンであることはあまりブログに書かないようにしているけれど(書いてるか)、実は立川志らく師匠の弟弟子にあたる立川談修師匠に(演じる方の)落語を習っているほど、はまっているのでした。まあ僕の話はどうでもいいのですが、とにかく志らく師匠は映画批評のプロであり、そして言うまでもなく語りについてはプロ中のプロです。先日吹き替え版を見る機会があったのですが、ナレーションがもう完璧にはまっていて、いやあ、面白さが倍増しています。なんというか、語りがとても楽しく聞こえるのです。落語家だから当たり前だなんてことはなく(だってフレモーさんの解説に忠実な翻訳台本を読んでいるわけで、勝手にギャグを挟めるわけじゃない)、解説している人が自分でも楽しくて仕方がないという雰囲気が伝わってくるのです。こんな幸せなリュミエール体験があっていいのでしょうか?

以上のように、映画ファンであれば決して見逃してはならないのが『リュミエール!』なのですが、東京国際映画祭の上映にティエリー・フレモー氏がやってくる! これはかなり貴重なことです。そして上映前にティエリー氏は舞台挨拶をしますが、なんと僕が司会を務めることになりました。カンヌのヘッドに話を聞ける機会はなかなかないので、つい映画祭話を展開してしまいそうですが、それは我慢して(ちょっとは聞くかも)、リュミエールへの思いを語ってもらいましょう。

さらに! そのトークには立川志らく師匠も参加されることになりました。カンヌのヘッドと話すだけでも大ごとなのに、そこに自分が最も好きな落語の師匠がいらっしゃるとは、もうちょっと、映画祭2日目(26日)にして僕はダメになっちゃうと思います。そんな僕の姿を笑ってやろうという奇特な方がいらっしゃったら、そちらも大歓迎ということで!

サイレント映画つながりでいえば、ティーンやこどもたちに見てもらいたい作品を上映する「ユース部門」ではチャップリンとキートンの傑作コメディを上映します。

チャップリンの『キッド』『キートンのマイホーム』のプログラム、そして『キートンの蒸気船』とチャップリンの『冒険』のプログラムは生演奏付です。

ただでさえメチャクチャ面白い作品ばかりなのに、さらに生演奏が付くとなれば、こどもには超幸せな映画原体験になるはずです。でも大人のほうが楽しんじゃうかも。特に『キートンの蒸気船』は4K修復版のジャパン・プレミア。こどもだけに見せておくのはもったいない!

演奏を担当されるのが古後公隆さんという方で、なんとピアノとチェロをひとりで弾き分けます。僕は今年の春に「ヒッチコック9」と題されたヒッチコックのサイレント作品特集で古後さんの演奏付き上映を見たのですが、時にピアノ、時にチェロ、と入れ替わる演奏が映画に起伏と多彩なアクセントをもたらして、とても感激したのでした。

そのヒッチコック上映を企画されたのが「日本チャップリン協会」の大野裕之さんで、僕は大野さんの著した「チャップリンとヒトラー -メディアとイメージの世界大戦」(岩波書店)を読んでその面白さに仰天していたこともあり、ヒッチコックの上映後に大野さんにご挨拶などしていると、いつのまに今回のチャップリンとキートン特集に結びついていったというわけでした。大野さんに大感謝です。

そして、チャップリンの『午前一時』『質屋』は、「声優口演」でお届けします。出演される声優の方々は羽佐間道夫、田原アルノ、中尾隆聖、平田広明、伊瀬茉莉也、今村一誌洋、皆川壱毅、の豪華な面々(敬称略で失礼します)。映画祭の最終日となる11月3日(金・祝)の上映で、最後を賑やかに飾ってもらいます!

そして「ユース部門」では、今年の夏に中学生を集めて映画を撮る体験をしてもらった「TIFFティーンズ映画教室」の成果発表会も楽しみなのですが、世界規模で展開している「こども映画教室」のカリキュラムを紹介するドキュメンタリーが『映画万歳!』です。

フランスのシネマテークが推進する「こども映画教室」のカリキュラムがあり、それに世界中の学校が参加しています。シネマテークが毎年ひとつのテーマをあげ、そのテーマに沿って学校で映画を作り、年に1度パリに集まってその成果を発表するというプログラムです。『映画万歳!』は、このカリキュラムに参加したブラジルの小学校を追った作品で、シネマテークから与えられたテーマは「距離/ディスタンス」。お題が「おかあさん」とか「ともだち」とかじゃないところがさすがですね。

様々な映画人によって映画の作り方が子ども向けに解説されますが、それはもちろん映画の見方にも繋がるわけで、観客の我々にも猛烈に刺激になります。そして、映画作りに挑む幼い少年少女たちの姿はもう感動必至です。映画愛が溢れる映画が今年の映画祭には多いですが、本作も映画ファン必見の一作です。

さて、こどもからオトナの時間に切り替えますと、今年はオールナイト上映をたくさん企画しました。春先から何か特別なことをやりたいと考えてきた中で、「フェス感」を出していこう、ならば一日中フェス感が途切れない日を作ろう、であればオールナイトをやろう、そしてチマチマやらずに一気に6企画同時にやっちゃおう、そうだミッドナイト・フェスだ! という具合にスタッフ会議が進んでいったのでした。

ロメロ・ナイトや、都会女子論ナイトなどが並ぶ中で、僕が関わったのは「SHINPA」in TIFFのオールナイトです。SHINPAというのは、「新波」、つまり新しい波を起こしていこうと新進気鋭の監督たちが集まって、自分たちの作品を上映していく活動のことで、いままで5回実施されています。春先に二宮健監督から「全員新作撮り下ろしという形で、TIFF内でSHINPAできないっすかね」と打診を受け(口調は雰囲気)、これは面白い! と速攻で合意した企画です。

参加監督総勢10名。なんとも個性的で素敵な面々です。

・今泉力哉監督:『赤青緑』(20分)
TIFFではおなじみ今泉監督。今年は『パンとバスと2度目のハツコイ』も特別招待作品部門で上映されます。『赤青緑』では初めて(?)監督のプライベートな世界を描きます。

・小林達夫監督:『It Girls: Anytime Smokin’ Cigarette』(44分)
『合葬』(15)で商業映画も手掛けた小林監督、新作は短編を越えた本格派のルック。

・佐津川愛美監督:『SHE/LL』(14分)
そう、あの女優の佐津川さんです。初監督作!

・竹内里紗監督:『渦』(35分)
2015年TAMA NEW WAVEグランプリ受賞監督。新作は大学で起きた悲劇を描きます。

・堤裕介監督:『ザ・パーフェクト・グレイ』(50分)
音楽家であり映像作家である堤監督の美しい世界。

・二宮健監督:『LOCAL RULE』(36分)
SHINPAの中心メンバーのひとり。『MATSUMOTO TRIBE』(16)が面白かった!新作も笑える!

・前野朋哉監督:『ハルオ』(16分)
役者としてはおなじみの前野さん、監督作としては『脚の生えたおたまじゃくし』の記憶が鮮烈です。

・松本花奈監督:『過ぎて行け、延滞10代』(46分)
17歳で監督した『脱脱脱脱17』(16)で注目され、昨年はTIFFナビゲーターとしてもお世話になりました。新作も10代ならではの世界を描きます。

・安川有果監督:『永遠の少女』(25分)
デビュー作『Dressing Up』(13)は劇場公開を果たし、新作は旬の若手俳優を起用した意欲作。

・渡辺大知監督:『SUMMER KIDS』(42分)
ミュージシャンとして人気の渡辺さん、コンペ出品の『勝手にふるえてろ』の演技も最高です。監督作新作はアメリカンな雰囲気の青春ドラマ!

というように、これら注目の監督たちの新作を全作ワールド・プレミアで一挙にお届けするエキサイティングな一夜! 本当に、寝てる場合ではない!

そして、今年のアニメーションは「映画監督 原恵一の世界」と題した原恵一監督特集です。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)が当時の映画界に与えたインパクトはいまでも忘れられません。子ども向けアニメと思われていた「クレヨンしんちゃん」のイメージを覆し、大人こそが感動する作品として、映画界に革命を起こした感さえありました。

僕は当時は原恵一という名前は意識していなかったのですが、『はじまりのみち』(13)という木下恵介の若き日々を描く実写映画が、あの『オトナ帝国』の監督によるものだと知り、大層驚きつつも、ああなるほどと腑に落ちた思いをしたものです。木下恵介の反骨精神とヒューマニズムがストレートな感動となって原恵一作品を貫いていると感じます。

今回の特集が決まってから、僕は初めて『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を見たのですが、これがまた滅法面白くて、感涙にむせんでしまった…。

藤子不二雄の世界を原監督が演出した劇場デビュー作『エスパー魔美 星空のダンシングドール』(88)から、江戸情緒を美しく映像化した傑作『百日紅~Miss HOKUSAI』(15)まで、バラエティに富んだ9作品が並びます。

トークゲストも豪華で、『オトナ帝国』の回は樋口真嗣監督、『はじまりのみち』の回は木下恵介を演じた加瀬亮さん、『カラフル』(10)は町山智浩さん、『河童のクゥと夏休み』(07)ではアニメに詳しい上川隆也さん、などなど。そして原さんご自身もお話がとても面白いので(TIFF記者会見での質問の受け答えも最高でした)、上映とともにトーク時間も是非満喫して頂きたいです。

それにしても、映画の始祖リュミエール、映画を一般庶民に広めたチャップリンとキートン、こども向けの映画教室、現代日本の若手の波、さらにはアニメーションと、今年の映画祭はいろいろな年齢層や好みの人々に応えられる店構えになっているのではないかと思っています。ああもう仕事しないで映画祭で映画見まくりたい!
《矢田部吉彦》

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