【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day2

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『ナポリ、輝きの陰で』
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26日、木曜日。5時間熟睡して外に出ると、快晴だ! これが昨日だったら…、とは思わないようにして、明るい気分で事務局に向かう。

9時半から本日の予定を慎重に確認して、10時半に劇場に入り、スプラッシュ部門の『神と人との間』のみなさんにご挨拶。上映前の舞台挨拶の司会が出来ないので、せめてご挨拶と思い、内田英治監督、渋川清彦さん、戸次重幸さんにご来場のお礼を申し上げる。壇上でお話が伺えないのは何とも無念!

11時10分から、スプラッシュ部門の審査員の方々にご挨拶しつつ、ブリーフィング。柳町光男監督に久しぶりにお会いして緊張したけれど、とても光栄で身が引き締まる。『火まつり』は僕にとって特別な意味を持つ日本映画の1本で、柳町監督の作品からは高校時代に絶大な影響を受けている。心から尊敬する監督にお会いするのは、恐ろしくもやはり嬉しい。

11時半から、ヒルズ内に特設されたシネマ・ラウンジにて、中国の大手映画会社の幹部クラスの方とミーティング。ご挨拶ミーティングだったのだけど、かつて僕がコンペティションにご招待した香港映画『親密』のプロデューサーであったことが分かり、一気に距離が縮まって興奮する。今後のお付き合いが楽しみだ。

11時50分に事務局に戻り、ここで5分間の時間を見つけて弁当を飲み込む。あさり弁当。とにかく「後で食べよう」はダメ、というのが僕の映画祭乗り切り術の鉄則で、昼と夜に絶対に食べるべし。空腹で移動してはいけない。体育会系で培った早食いがこういう時に生きる!

そして12時から、緊張物件である『リュミエール!』の舞台挨拶司会へ。打ち合わせ場所についてみると、立川志らく師匠が到着されている! 事前打ち合わせなので登壇の段取りを話し合わなければいけないのだけど、僕の頭の中は落語で一杯で、落語の話が聞きたくてたまらなく、たぶん周囲の人からは心ここにあらずと見えたかもしれない…。

ついに我慢できず「こんなところで言うのはよくないと分かっているのですが、実は私、師匠の弟弟子の立川談修師匠から落語を教わっているのです…」とおそるおそる言ってしまった! 「へえー、そうなんですか! 談修は努力家だから教わるにはいいですよ!」と話に乗って下さり、天にも昇る気持ち。「いま何を習っているのですか?」と聞いて下さったので、「『がまの油』を稽古してます…」と答えたら、志らく師匠はニヤリ。ああ、幸せ。

そうこうしていると、ティエリー・フレモー氏が到着! 瞬時に頭を切り替えて、『リュミエール!』モードにシフト。段取り確認も順調に進み、12時40分からいざ本番。

フレモー氏の口からリュミエール兄弟の作品の意義が語られて、彼のリュミエール愛がバシバシ伝わってくる充実のトーク。エジソンも映画を発明する技術は持っていたが、エジソンが箱の中を覗く方式を選択したのに対し、リュミエールは大スクリーンに投影して多くの観衆の前で見せる方式を選んだ。そこが「映画」の発明家としての明暗を分けたのだ、という解説。映画ファンにはおなじみの事実だけど、場内に多く見られた若者には新鮮だったのではないかな。

そして、「リュミエールの前に映画を発明しようとした人は多いが、リュミエールの後にはひとりもいない。リュミエールが発明した瞬間に、それが『映画』となったのだから」。なので、「リュミエールは映画の最後の発明家であり、最初の映画監督なのである」。しびれますね。

話はとても面白いのだけど、ティエリーさん、よくしゃべる! 用意していた質問の半分くらいしかできなかったけど、こればっかりはしょうがない。『リュミエール!』の監督として来日しているのでカンヌの話題は野暮だなとも判断し、それはまたいつかの機会に。

トークの後半は志らく師匠も合流されて、吹き替え作業の話などしていただく。でも志らく師匠の話の途中でもティエリーさんがカットインするので、こちらは慌ててしまったけれど、全体としては貴重な話がたくさん聞けて充実の舞台挨拶だったのではないかな? ともかく一番楽しんでしまったのが僕であることは間違いなく、司会に指名して下さった配給会社さんに深く感謝。そしてお客さんも楽しんでくれたはず!

13時10分に終わり、ティエリーと志らく師匠へのご挨拶もそこそこに、劇場内の別スクリーンへダッシュして、13時19分からコンペ部門の『ペット安楽死請負人』のQ&A司会へ。テーム・ニッキ監督と、主演のマッティ・オンニススマーさん。マッティさん、やはりド迫力のルックで、映画からそのまま出てきた雰囲気だ。テームさんも若手ながら落ち着いた佇まいで、なるほどこういうヘヴィーでありつつエンタメ要素も備えた作品をこしらえるプロのコンビだということがよく分かる。

安楽死について、延命措置について、ペット問題についてなど、質問はどうしてもヘヴィーなものになりがちだけれど、監督の回答がクリアなので面白い。「ペットを安楽死させる内容とのことなので見るのをちゅうちょしたのですが、見てとてもよかったです」とコメントしたお客さんもいらして、僕は安堵。本作は動物を殺す作品ではなく、人間の愚かさと命の尊厳をハードボイルドなタッチで描く作品なので、多くの人に見てもらいたい! 2度目の上映があるので、Q&Aの内容を詳しくは書くのは控えよう。是非お楽しみに!

13時55分にQ&Aが終了し、劇場から森タワー51Fにダッシュで駆け上がり、14時から海外プレスによる合同インタビューに答える。10名ほどの海外の記者のみなさんから30分間質問に答え、記者を入れ替えてさらに30分。合計1時間、おぼつかない英語で選定の傾向や、記者の方々の出身国の映画について、しゃべりまくる。ちゃんと伝わっているのか全く自信がないけど、英語をしゃべる時には自信ありげに話すことも必要なのだ…、と思う。

カンボジアやフィリピンやトルコやスウェーデンやタイやベトナムやイギリスの記者に対し、矢継ぎ早にそれぞれの国の映画に対する感想を求められるのは楽ではないのだけど、これはめちゃくちゃ鍛えられる。自分はスペシャリストというよりはジェネラリストなんだろうなと自覚しているので、こういう機会はとても貴重。

15時に終了し、事務局へ。10時半から7案件連続ノンストップだったので、席に座り、しばし死亡。

15時半から、1件ミーティング。16時から15分メール返信。

16時20分に劇場に戻り、コンペ『グッドランド』のQ&A。ゴヴィンダ・ヴァン・メーレ監督は、とても真面目で理知的な方だった。ルクセンブルグ出身ではあるけれど、おそらくは数か国語を話す才人と思われ、完璧な英語がよどみなく、Q&Aがすいすいと進むのがとても気持ちいい。

ルクセンブルグという国の状況を簡潔に説明してくれた上に、この作品の成り立ちや、影響を受けたと思われる監督の名前なども出してくれる。客席からとても良い質問が出て、僕も大いに参考になったのだけど、これもメイン上映が控えているのでここで受け答えを書くのは控えよう。映画同様、監督の話もとても面白い。

17時10分に終わり、事務局に戻るべくヒルズ内のエレベーターに乗ると、サラリーマン時代の同期にばったり遭遇する。彼の職場がヒルズ内にあるのかな。入社した年から25年、随分違う道を歩んだもんだなあとエレベーターを降りてしみじみする。人生は不思議だ…。

18時に夜のお弁当を、今度は時間をかけて頂く。オムライス的なお弁当、だったかな。それからどうしても見ておかなければいけない作品のDVDを凝視すること1時間。

そして今宵は「スプラッシュ」部門に出品して下さっている日本映画の監督たちを中心にしたカジュアルな飲み会を催したので、19時過ぎにヒルズ内のバーに行ってスタンバイ。19時半から続々とみなさんが集まってきたので、知らない人たち同士をせっせと紹介する。せっかく同じ年に映画祭に出ているのだから、早めに知り合って、会期中にお互いの作品を見合って、映画祭の終わりには感想を言い合えるような関係になってほしいし、そこから何か生まれたらいいと思うし、やはり出会いの場が何よりも大事だし、やっぱり映画祭は楽しんでほしいし。有意義な場になっているといいのだけど!

21時10分までウーロン茶を片手にお店の中で交流し、途中退出してEXシアターへ。本年初のEXシアター司会は、コンペの『ナポリ、輝きの陰で』。シルヴィア・ルーツィーさんとルカ・ベッリーノさんの共同監督、そして出演のロザリオ・カロッチャさんと、シャロン・カロッチャさんをお迎えしてのQ&A。

とても個性的な作品なので、成り立ちの背景や、演出方法、あるいはドキュメンタリータッチの作品における出演の二人の実際の姿と映画の姿の比較など、聞きたいことが山のようにあるので、貴重な30分の半分の15分を費やして、僕から質問してしまった。ごめんなさい。

とにかく、主演のロザリオ父さんのルックスが最高で、僕が本作に惚れ込んだ理由も彼の顔(とその撮り方)にある。そのご本人が登壇されていることですでに幸せなのだけど、彼の朴訥とした受け答えも愛おしくてたまらない。しかし、時間が30分では全く足りなかった! 監督コンビも猛烈にいい感じの人たちだし(写真は回答を確認しあうお二人!)、シャロンさんは元気ハツラツだし、会場の雰囲気もとても暖かくて嬉しい! いやあ、しかし時間が足りない。

22時05分にQ&A終わり…、と思ったら最後にゲストからスペシャルサプライズがあり、最高。時間が押してしまったので、その後のフォトセッションの途中で僕は失礼し、22時10分にバーに戻って日本監督パーティーの中締めして、そのままシネマズの劇場へ。

22時25分から、「スプラッシュ」部門の『ひかりの歌』のQ&A司会へ。繊細で胸に染みる宝石のような素敵な作品なので、杉田協士監督とのトークをとてもとても楽しみにしていた!

4つの短歌から4つの物語を編んでいく作品の成り立ちについて、杉田監督にじっくりと話していただく。千を超える短歌の中からいかにして4つの短歌を選んだか、あるいは、それらからどうやって物語を連想していったか、など、必ずしも明確な答えはないのだけど、その難しさを懸命に語ってくれる杉田監督の話が本当に面白い。僕は横に座って、へえー! とか、ええっ! とか驚いているばかりで本当に司会失格だけど、映画作りの奇跡の一端に触れたような気がして、ここはなんて幸せ場なんだろうかとぼーっと浸ってしまった…。

監督は、毎日短歌をじっと見つめて、毎日発想が変わっていく中で、物語を作り上げていったという。1本作ることに、こんなことを4回繰り返せるのだろうかと愕然としていたとおっしゃったのがとてもリアルで、思わず笑ってしまったのだけど、本当に大変だったのだろうと思う。繋がっているように見える4つの物語は、必ずしもあらかじめ繋がりが意図されていなかったことなど、聞けば聞くほど面白い。

客席からの質問も面白く、僕も調子に乗って客席にいらっしゃる並木愛枝さんに無茶振りしてしまったり、それを観客も温かく受け止めてくれたり、そして短歌を書いた方も客席にいらっしゃったり、素晴らしい雰囲気のQ&Aになった! いつまでも続けていたかった。

名残惜しかったけれど劇場の外でお見送りし、23時半。事務局に戻り、から揚げ弁当をペロリ。いくらでも食べられる自分が怖い。いや、食欲があるのは健康の証!

大充実の1日を終え、ブログをバタバタと書いて、ただいま2時半。3時には上がれるかな。いやあ、それにしても初日から濃かった!
《矢田部吉彦》

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