【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day4

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『イスマエルの亡霊たち』
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28日、土曜日。週末突入! だけど、いまにも降りそうな空模様。これはしょうがない。あとは、台風が直撃しないことを祈るのみ…。

今日は夜が大変なので、昨夜は4時就寝の10時起床。6時間寝られてスッキリしたけど、夜の企画まで持ちますように。懸案事項を2件打ち合わせして、11時半に劇場へ。ワールドフォーカス部門『イスマエルの亡霊たち』のアルノー・デプレシャン監督の舞台挨拶。

心の奥底から敬愛する監督に朝イチに会ってしまう不思議さと言ったら。もともと上映後Q&Aしか予定していなかったのだけど、監督が上映前にひとこと挨拶したいとのリクエストがあり、急きょ登壇決定。いきなりすっと登壇したので、会場はおおっとどよめき、大拍手。しびれる。

「この作品には10のストーリーがあり、それらがやがて大きなひとつの流れとなっていく映画です。そして素晴らしい俳優たちを堪能して下さい」。最小限の予備知識をもたらし、期待感が高まる中で上映スタート。

監督といったん別れ、僕は事務局に戻り、そぼろ弁当をぺろり。

12時20分にEXシアターに向かい、コンペ『グレイン』のQ&A司会。楽屋にジャン=マルク・バールさんが先着しており、しばしお話しする。はっきりいって、ジャン=マルク・バールさん、今年のベストゲスト候補のひとり(いや、今年は本当にどのゲストも素晴らしいのだけど)。『グランブルー』からラース・フォン・トリアー作品まで、世界的に有名な人がこんなにいい人でいいのか、というくらいのいい人だ。僕の身の上についていろいろと質問してきて、僕もそれなりに長くこの仕事をしているけれども、こんなことはあまり過去に記憶がない。

上映を見ていたセミフ・カプランオール監督を壇上にお迎えし、バールさんとともにQ&Aスタート。異色の哲学エコロジー的SFということで、会場からも刺激を受けた空気が伝わってくる。監督は自作を抱えて世界中を旅した経験から、世界で起きている事象を包含する作品を構想し始めたという。

モノクロを採用した理由、聖域の存在について、そしてもちろんジャン=マルク・バールさんを起用した理由について、丁寧に語ってくれる。そして終了時間をオーバーしていたけれども、僕はどうしても聞きたかった質問をしてみた。すると、結果的に聞いておいてとてもよかった質問であったらしく、重要なカギを得られた気がする。しかし、もう1回上映があるので、これは書くのを控えよう。んー、書きたい。『グレイン』、かなり多くの観客の脳髄に刺さったのではないかな? 好感触を噛みしめる。

充実のQ&Aを終え、事務局に戻って、最後に自分がした質問の答えをしばし反芻する。職場の喧噪の中、遠いところに連れていかれた気分になる…。

気持ちを切り替えて、いよいよ『イスマエルの亡霊たち』のQ&Aへ。これがまた、ちょっと筆舌に尽くしがたい幸せな空間であった。本日会場にいた観客にはもう説明不要なはず。映画は間違いなく傑作であり、そして監督の受け答えの全てがこちらの心を震わせるものだった。客席からの質問も、台本があるかのような完璧な流れ。

マチュー・アマルリックは映画監督を演じることが多い印象があるため、一瞬意外に思えてしまうのだけど、デプレシャンとしては映画監督を主人公にしたのは初めて。『ブロードウェーのダニー・ローズ』にインスパイアされたというような着想の背景や、果たして自分の監督像を反映しているのかどうか、マチュー・アマルリック、シャルロット・ゲンスブール、マリオン・コティヤールの起用の背景と彼らの魅力、音楽の選定におけるマーティン・スコセッシの影響、そしてマリオンのダンスについて!

本作を離れた話としては、フィクションの持つ力について。我が意を得たりと観客全員が思ったに違いない。この至福の時間を終わらせたくなく、予定時間を確信的にオーバー…(ごめんなさい)。それにしても、スクリーン7の雰囲気はやはりとてもいいなあ。

15時近くに終了し、15時20分から「日本映画スプラッシュ」部門『地球はお祭り騒ぎ』のQ&A司会。渡辺紘文監督、音楽の渡辺雄司さん、主演の今村さん、撮影のバンさんをお迎えして、とてもなごやかで楽しいQ&A!

東京国際映画祭ではおなじみの渡辺組ということもあり、終始リラックスした雰囲気で心地よい。もちろん、渡辺監督にしてみれば大事な新作のワールド・プレミアなので期するところは大であって、僕もまたその場に居合わせることが出来て幸せだ。もっとも、僕にとってのサプライズは、本作は実際に監督がポール・マッカートニーのコンサートに行く過程を映画にしたものと思い込んでいたのが完全に間違っていたこと。渡辺監督に(気持ちよく)してやられてしまった!

前作『プールサイドマン』がヘヴィーな作品であったことを受け、今回は明るめの作風を目指し、そして子どもにも見てもらえる作品としたとのこと。『七日』や『プールサイドマン』で見られた要素を発展させた上での、渡辺ワールド新境地だ。

渡辺作品を初めて見た観客も当然いて、「とんでもないものを見てしまった気分です」とのコメントも嬉しい。「映像は足し算、音楽は引き算、と感じました」との感想も鋭い。それに対し渡辺雄司さんは「音楽と映像が常に足して10になるように、という池辺晋一郎氏の言葉を大事にしています。つまり映像が9を語るなら、音楽は1でいいということを意識しています」とコメントされ、僕は深く感動した…。

15時55分に終わり、シネマズからEXシアターに文字通りダッシュし、16時05分からコンペ部門『アケラット - ロヒンギャの祈り』のQ&A司会へ。エドモンド・ヨウ監督と、主演のダフネ・ローさんが登壇。ダフネさんのかわいさにたじろぐものの、冒頭のエドモンドのコメントに姿勢を正さずにはいられなかった。

ロヒンギャの人々を描く作品をどのようにして構想したか、という僕の最初の質問に対し、エドモンドは自分は政治意識が強いわけではないのですがと断ったうえで、マレーシアで大量の埋められた死体が発見され、被害者がロヒンギャの人々であったことが判明した事件にショックを受けた経験を語ってくれた。どうしてこんなことが起こるのか、どうして自分たちが悪者になってしまったのか、それを考えずにはいられないと語るエドモンドの目は赤く、いまにもこぼれそうに怒りの涙が溜まっていた。僕は胸が締め付けられるようだった。

この冒頭のコメントを聞くだけで、もう十分だったのかもしれない。ダフネさんの役への取り組みや、エドモンドとの信頼関係の構築が本作に説得力をもたらせるに至ったエピソードが語られ、冒頭のコアとなるコメントを肉付けする形でQ&Aは進んでいく。

エドモンドは本当にスケールの大きな作家であると改めて感じる。しかし今回も時間が足りなくなってしまった。次回のQ&Aでは、ラブストーリと詩情を絡めた映画の後半部分についても聞かないと。

16時40分に終わり、事務局に戻って17時に昼の弁当をもう1個食べる。今日は夜の弁当を3つ食べることになるかもしれないので、そのペース配分。何か間違っている気もするけれど、いいのだ。

17時40分にEXシアターに戻り、コンペ『さようなら、ニック』の上映前の「前説」。残念ながら来日が叶わなかったマルガレート・フォン・トロッタ監督から届いたメッセージ・ビデオを紹介し、2分ほどで終了。すぐにシネマズに戻る。雨がちゃんと降っているけど、それほど気温が低くないのが救いかな。

18時半から、「日本映画スプラッシュ」部門『Of Love and Law』のQ&A司会。戸田ひかる監督、プロデューサーのエルハム・シャケリファーさん、編集とアソシエイト・プロデューサーの秦岳志さん、撮影のジェイソン・ブルックスさん、そして出演の南和行さん、吉田昌史さん、南さんのご母堂である南ヤエさんがご登壇。

『Of Love and Law』はゲイのカップルでともに弁護士である南さんと吉田さんのプライベートと仕事の両面を描いていくドキュメンタリー作品で、感動のラブストーリーであり、現代日本の断面を切り取る社会派映画でもある。つまり、極めて稀有にして抜群に面白い映画なのだ。その記念すべきワールド・プレミアに立ち会えることをこの上なく光栄に感じる。

戸田監督からふたりとの出会いを語ってもらい、そしておふたりに映画に出演することに逡巡はなかったかと尋ねると、南さんには躊躇はなく、吉田さんはプライベートを晒すことへの恐怖はあったけれども、若い世代を励ますことが出来ればと承知したという。文字にすると少し固く読めてしまうけれど、お二人はとても明るく、気安そうに見えながらも弁護士としての威厳を確実に備えているので、つまりは極めて魅力的なキャラクターなので、Q&Aの場がとても華やかになる。本当に最高の雰囲気。

ふたりと戸田監督の信頼関係がいかに強固であることが伝わってくる。ドキュメンタリー監督と被写体との関係かくあるべし、と思わせる。いや、距離を置いた関係でも優れたドキュメンタリーは存在するから単純化は禁物だけれども、やはり理想的な形のひとつであることは間違いない。

家族の話題になり、南ヤエさんが発言なさったときに僕は泣きそうになってしまったのだけど、関係ない司会が泣いてはいけないとぐっと我慢。感動のQ&Aでした。本作は来年の劇場公開を目指して活動中とのことで、公開の暁には是非ひとりでも多くの人に見てもらいたい!

19時15分に終わり、今日はQ&Aが充実するなあと興奮しながら、またシネマズからEXシアターへダッシュ(物理的に走っている)。

19時半から改めて『さようなら、ニック』の上映後Q&A司会へ。これがまた最高で、フォン・トロッタ監督不在の穴を、プロデューサーのベッティーナさんが見事に埋めてくれた!

前々作『ハンナ・アーレント』でも組んでいるベッティーナさんはフォン・トロッタ監督の意図を熟知しており、どんな質問にも即答してくれる。しかも明るく、気持ちよさそうにケラケラ笑ってくれるので、会場が思いっきり明るくなる。基本的に楽しい映画なので、本当にふさわしいゲストだった!

フォン・トロッタ監督は「力強い女性を描く」という言い方に抵抗があるという。僕もそのように紹介していたのでその理由をベッティーナさんに聞いてみると、「強いも弱いもなく、描いているのは女性なのだから」との答えにぐうの音も出ない。ああ、と呻いた僕のリアクションに会場がウケた気がするのでちょっとホッとしたけど、門切り型の表現には本当に気を付けないといけないと自分を戒める…。

NYを舞台にした理由や、フォン・トロッタ監督のユーモアについて、そして男性の描き方など、途切れない話題とテンポが気持ちいい。今日はすごいな。

20時10分くらいに終わり、ヒルズ内の会場で行われている海外プレスと作品ゲストの交流パーティーに行き、20時半にカンパイの挨拶をし、15分だけ交流。

21時に事務局に戻って打ち合わせ。そして21時40分から、オールナイト企画の「SHINPA」スタート!

10名の監督が新作短編を撮り下ろしで発表する興奮の「SHINPA」。これは今年の特別企画「Midnight Film Festival」でも目玉の企画だ。(敬称略で)今泉力哉、小林達夫、竹内里紗、堤裕介、渡辺大知、佐津川愛実、安川有香、前野智哉、二宮健、の9名が揃って登壇(松本花奈監督だけ残念ながら欠席)して、トーク。僕は司会。

30分間、今回が第6回となる「SHINPA」の成り立ちや、撮り下ろしにあたってどうやって監督を集めたかなど、多士済々の面々の話を伺って爆笑込みの30分。これは楽しくなりそうだ! まさに充実のスタート。プログラムは、まず3本を上映してトーク、次にまた3本上映してトーク、最後に4本上映してトーク、の3部構成。

まずは22時15分にオープニング・トークが終了。

とりあえず僕はシネマズからEXへダッシュ(本日何回目だろう)。22時半から、『ペット安楽死請負人』の2度目のQ&A司会。そしてこれがべらぼうに楽しいものになった! 前回はヘヴィーな内容になり、それはもちろんこの映画の一面なので重要なのだけど、今回は遊び心を前面に出したトークがさく裂。登壇3名がいきなり(劇中の主人公を真似て)パイプをくわえて同時に脚を組むパフォーマンス。

明るい雰囲気の中に、シリアスな内容も散りばめ、これまた最高のQ&A。お客さんもかなり楽しんだはず!

そして事務局に戻り、中華風弁当を食べ、0時半から「SHINPA」のトークを15分司会。とても盛り上がる!

終わって事務局に戻ると、数日前からくすぶっていた案件を話し合うことになり、スタッフ4人で1時間ほど議論。

2時40分から「SHINPA」トークを15分。なぜか全然眠くならない。これはアドレナリンというやつなのだろうな。もっと時間があればいいのにと思うような15分。

事務局に戻り、本日ブログを大急ぎで書く。でもあまりにも内容があり過ぎて、とても書き切れないのが無念。でも殴り書きでも書いておかないと鮮度が落ちるので、とにかく少しでも書く。

そして4時45分から「SHINPA」最後のトーク。全員で締め。終了5時15分。やりきりました!総括はまた後日書くとして、ともかくひたすら楽しい一夜だった!

というわけでそろそろ6時。本日終了!
《矢田部吉彦》

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