【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day5

最新ニュース

『スヴェタ』
  • 『スヴェタ』
29日、日曜日。昨夜、というかさっきは、6時30半就寝の9時半起き。まあ3時間寝られればなんとかなる。ということをあまりブログに書き過ぎると、いろんな人に心配をかけてしまってよくないのだけど、いたって元気です!

しかし、外に出ると土砂降りで、これはさすがに凹む。長い距離を歩くわけではないのに、事務局に着いた頃にはスーツのパンツの折り目も消えてしまい、靴も水浸し。映画祭会期中に雨が降ることはいままでもあったけど、ここまで強い雨は初めてかも。しかし何事も初めてっていいじゃないかとポジティブ思考で行く!

机に向かい、コンペ『マリリンヌ』のギヨーム・ガリエンヌ監督から届いたビデオメッセージを見て、内容を確認する。本当に残念なことに、『マリリンヌ』はゲスト来日が叶わなかったので(ガリエンヌ監督と主演のアデリーヌ・デルミはともに舞台の本番中)、監督にビデオメッセージをお願いしていたところ、ギリギリで到着。日本語字幕を入れている時間がないので、とりあえず上映前に流し、そして僕が訳を話すという段取りにした。

数件雑務が重なり、思うように作業が続かず、気づいたら10時13分。マリリンヌ開始は10時25分。やばい。事務局から猛然とダッシュし、暴風雨の中を突進し、ずぶ濡れでEXシアターの舞台袖に着いたのが10時23分。何食わぬ顔で(バレていたかな)ビデオを紹介して、訳して、引っ込む。ギリギリセーフ(と思っている)。

それにしても、『マリリンヌ』はとても素晴らしい作品なので、監督や観客と語り合えないことが残念でならない。ゲストが来られないならコンペに招待しない、というわけにもいかないし(それをいちいち確認していたら作品がいつまでたっても決まらない)、トーキョーに作品を応募するなら監督と役者のスケジュールをおさえておくべしと出品者に思ってもらうように、もっと努力していかなければならない。これは今後の課題。もっとも、舞台の本番というのは本当にどうにもならないので、とても難しいところではあるけれど。

Q&Aがないと観客の反応も分からないし、果たして『マリリンヌ』がどのように受け止められたのか、ひたすら気になる…。

続いて11時半から、「TIFFユース」部門の『映画万歳!』のQ&A司会へ。ブラジル人のパウロ・パストレロ監督はとても流ちょうなフランス語を話し、映画の背景を説明してくれる。映画を愛する者であれば感嘆必至の作品だけあって、場内の反応がとてもいい。

フランスのシネマテークがイニシアティブを取る映画教育カリキュラムがあり、本作はそれを授業に採用したブラジルの小学校のケースを追っていくドキュメンタリー。世界で多くの国々がこのプログラムに参加しており、「子どもたちがこんなにイキイキと映画を学ぶことが出来るなんて、日本も参加したらいいのに」と見た人全員が思うはずの内容なのだけど、実は日本の参加が決まったと監督が発表すると場内がどよめく!

となるとますます本作の重要性が増すわけで(この作品を見れば小学生向け映画教育カリキュラムの中身が分かるのはもちろん、映画の基本が様々な映画人から語られるので大人も目からウロゴが落ちるはず)、ともかく日本参加の今後の動向については東京国際映画祭でも注目していくつもり。

12時24分から、「ワールド・フォーカス」部門『ライフ・アンド・ナッシング・モア』のアントニオとの2度目のQ&A。癒し度No1の来日ゲストで、人間関係を丁寧に気付きながら現実を巧みにフィクションとして取り入れて行く映画作りについて語ってもらう。シネマズのスクリーン7に繊細な空気が流れる。アントニオは明日帰国してしまうので、とても寂しい…。

もう帰り始める人がいるなんて! 映画祭も後半に突入ということで、嬉しいやら悲しいやら。しかし感傷的になっている場合では全くないので、集中あるのみ。

Q&A終了後のフォトセッションを途中で抜けて(すみません)、シネマズ内のスクリーンを移動して『TIFFティーンズ映画教室』へ。13時から15時まで、中学生の映画に向き合う時間がやってきた。

TIFF映画教室は今年の夏に中学生を集めて映画を撮ってもらった企画で、本日はその成果の一般向け発表の日。夏休みの数日間、彼らは見知らぬメンバーと初顔合わせし、4つのチームに分かれ、物語を考え、演技し、撮影し、録音し、編集し、そして1本の映画を仕上げた! 全体の講師は諏訪敦彦監督。グループの中で監督を決めないのが特徴で、自然に役割分担は出来るものの、みんなで全部をこなすという体験を通じて映画の本質を知るプログラムになっている。これは本当に素晴らしいことで、参加している中学生が羨ましくなるほどだ。

本日の企画では、まずは映画教室のメイキング『映画が生まれるとき』(監督は2014年に『スターティング・オーバー』で「スプラッシュ」部門に参加してくれた西原孝至監督!)、これがすでにとっても面白い。熱い夏の記録だ。

続けて、4つのチームによる4つの作品の上映。1作見るごとにチームメンバーが登壇し、作品を解説していく構成で、僕はその司会。スクリーンで見るときにサプライズを取っておきたかったので、事前に渡されたDVDは見ないことにしていた。そしてその判断は正しかった! 嘘偽りなく、いずれも非常に面白く、独自の完成度を持つ作品ばかりだった。本当にびっくりする。

社会問題を入れたり、サスペンス風味だったり、ファンタジー調だったり、ジャンルの多彩さとスケール感に驚くばかり。無いのは恋愛要素くらいかな(中学生には一番難しいテーマかもしれない)。そして小学生だともっと「ぶっとんだ」設定や内容になることもあるけど、中学生はギリギリ地に足のついた内容になっているのが興味深い。

各チームのメンバーの受け答えも面白く、国際映画祭だからと英語であいさつしようとチャレンジする子がふたりもいるし(「スプラッシュ」部門の日本人監督では史上ひとりもいないぞ!)、個性的な面々の登場に嬉しくなる。僕がふだん子どもと接する機会がないからというのも大きいのだろうけど、何とも楽しい時間だったなあ。

最後は西原監督の挨拶と、諏訪監督の総評をもって締め。初めての試みの「TIFFティーンズ映画教室」、大成功だったのではないかな。これは今後も続けられるといいのだけど!

15時に終了し、失礼ながら誰にも挨拶せぬままシネマズからEXに急いで移動し(それにしてもひどい雨だ)、コンペ部門『スヴェタ』(写真)のQ&A司会。カザフスタンの『スヴェタ』、ワールド・プレミア上映!

本作はろうあ者を主人公とするドラマで、ヒロインとその夫訳の役者はともにろうあの方。しばらく前から通訳の段取りを進めてきて、日本語、英語、ロシア語、ロシア手話、日本手話を交え、訳す順番を確認していったのだけど、これは実に新鮮な体験だった。なんというか、コミュニケーションを築き上げる努力が楽しい。「楽しい」というのは語弊があるだろうか。でもコミュニケーションの壁を取り払おうとする行為は喜びに繋がる気がする。ヒロイン演じるラウラさんの意見が聞けたことが嬉しいし、同じ土俵に立っていることが楽しい。

もう一度上映があるのでQ&Aの中身には触れないけれど、客席が映画の内容にどよめいているのは伝わってくる。ヒロインであるスヴェタの行為は、多くの観客の胸を貫いたはず。僕にとって一生忘れられないQ&Aのひとつになったことは間違いない。

監督のジャンナさんも面白い人で、「最初にご挨拶お願いします」という僕の振りに対し「いままで何度も東京国際映画祭に応募したけれど、ヤタベさん選んでくれなかったですよね」と返されて、もうタジタジ。いや、いままでの作品も優れてました、確実に!(心の声)。でもタイミングというものがあるわけで…。しかし『スヴェタ』という傑作に巡り合い、本当に満を持した甲斐があったとつくづく思う。

16時過ぎにシネマズに戻り、上映中のキートン『マイホーム』にそっと潜入してゲラゲラ爆笑。生演奏付の上映で、古後公隆さんのキーボードとチェロの演奏が抜群に素晴らしく、傑作中の傑作『マイホーム』が新しい装いで蘇っている。最高。この上映を選んだお客さんは大正解! 続けて上映される『蒸気船』が見たいのだけど、それは叶わないので残念でたまらない。

17時半に予定された打ち合わせが流れたので、早めに夜の弁当を食べて一休み。しかし、ここで今日の嵐のような激しい睡魔が襲ってくる。5分くらい目を閉じてじっとしてみると、少し回復。

EXシアターに移動し、18時半からコンペ部門『泉の少女ナーメ』のQ&A司会。こちらもワールド。プレミア上映。ワールド・プレミアが続き、背筋が伸びる。映像美に圧倒される『ナーメ』をお迎えできるのは、とてつもなく大きな喜びだ。

本当に不思議なもので、司会をしていると眠気の「ね」の字も感じない。もうずっと司会やっていればいいのかな。『ナーメ』の静謐な世界が、Q&Aでも続いている。映像派の監督だけに、言葉で説明することはあまり好まないと本人も語っている。それは本質的なところは見た人に感じて、考えてほしいということで、周辺のエピソード的なことは語ってくれる。「自然待ち」についてのエピソードなど面白いのだけど、これも2度目の上映があるので控えよう。

『ナーメ』のザザ・ハルヴァシ監督は学者的な外見の落ち着いた大人で、理知的な物腰が威厳を漂わせている。しかしとても丁寧な人で、舞台裏ではこちらが恐縮してしまうくらいに何度もお礼を言ってくれる。とんでもないです。お礼を言うのは100%こちらの方です!

続いて19時半から、「スプラッシュ部門」で『おじいちゃん、死んじゃったって』の舞台挨拶とQ&A。森ガキ監督とのQ&Aではちょっとした奇跡が起きたのだけど、明日も上映があるので明日まとめて書くことにしよう。

続いて21時から、おなじく「スプラッシュ」部門で『アイスと雨音』の舞台挨拶司会。こちらはQ&Aの司会が後日あるので、そこで詳細を書くことにして今日は割愛。

本日最後は22時15分からコンペの中国映画『迫り来る嵐』のこれまたワールド・プレミア上映。ドン・ユエ監督、主演のドアン・イーホンさん、そしてプロデューサーのシアオ・チェン・ツァオさんの3名が登壇。

ドアン・イーホンさんが中国の実力派人気俳優であることもあり、会場から熱気が伝わってくる。しかも今回は質問した人にイーホンさんのサイン入り写真をプレゼントするという計らいがあり、僕がそれを壇上でアナウンスすると一気にヒートアップ! ぶわっと質問の手が挙がり、これは選ぶ僕の責任が重大だ! と言いながら一人の女性を指してみると、なんと彼女はイーホンさんの大ファンの中国人留学生で、しかも今日が誕生日だとのこと! これはせっかくだと思い、イーホンさんからその女性に直接写真を渡してもらうようにした。客席からステージ近くまで出てきてもらい、イーホンさんは彼女に写真を差し出し、そしてセルフィー。会場大喝采で盛り上がった!

それにしても、中国人観客が多くてびっくり! 昨年上映した『天才バレエダンサーの皮肉な運命』では、会場の大半をロシア人が占めて異様な盛り上がりを見せたけど、今回はその中国版だ。質問してくれた観客が全員中国人だった! 壇上からは見分けつかないからなあ。でも、こういうのは国際映画祭らしくて実にいいなあと思うのでした。

上映終わって事務局に向かって歩いている道中(あれほど激しく降った雨はすっかり上がっていた!)、とてもきれいな女性がいるなと思って近寄ってみると(いや、僕の進行方向にいたので)、『アケラット』の主演のダフネ・ローさんだった。地下鉄に乗ろうとして迷ってしまったとのことで、そのまま大江戸線の駅までエスコート。15分くらいだったけど、いろんな話をしながら二人で歩いて、ちょっとした六本木散歩デートになってしまった。ははは。ちょびっと嬉しい。

それから事務局に着くまでに、何人もの観客の方が僕に声をかけて下さり、しかも僕の体調を気遣って下さる方ばかりで、本当に恐縮してばかり。少しだけ寝てないだけで、いたって元気ですので! 何とのど飴まで頂いてしまい、本当にありがとうございました!

事務局戻ってメールやブログをパタパタ書いていると、今日は早く上がるはずだったのに、結局3時半を回ってしまった。さっさと引き上げます!
《矢田部吉彦》

関連ニュース

今、あなたにオススメ
Recommended by

特集

page top