【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day10 & Day11

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『グレイン』セミフ・カプランオール監督
  • 『グレイン』セミフ・カプランオール監督
11月3日、金曜日。いよいよ最終日。4時間半寝て外に出ると快晴。温かい。オープニング日の雨、土日の豪雨など、アップダウンの激しい天候に見舞われた今年の映画祭だけれど、今日の天気のように有終の美を迎えられますように。

例年だと、朝9時から観客賞受賞作品上映の司会があったのだけど、今年から同上映が夜になったのでとてもラクだ。10時過ぎに事務局に入り、クロージング・セレモニー廻りの作業確認をする。

12時にEXシアターに行き、某放送局用に映画祭のまとめコメントを収録する。ひとことだけなので、2分で終わり。事務局へ戻る。

13時半にEXシアターに戻ってスタンバイ。もっとも、僕は現場の仕事はあまりなく、会場入りする作品ゲストをEXシアターでお迎えしつつ、記念写真を撮るためのスタジオへと誘導する役割。続々と到着するゲストのみなさんにご挨拶。

15時にクロージング・セレモニー開始。次々と賞が発表されていく。僕はこのクロージング・セレモニーが1年で一番嫌いな時間で、それは受賞した作品よりも受賞を逃した作品のことが気になってしまうから。数か月に渡って濃密に付き合ってきた作品群は、おこがましい言い方だけど全て自分の子どもたちのような気がするし、もうお願いだから優劣なんか付けないでくれと心底思うのだけど、そういうわけにもいかないので我慢する。

それでも受賞者の嬉しそうな顔を見ると僕ももちろんとても嬉しい。エドモンド・ヨウ監督のスピーチを聞いて一緒に涙が出たし、ドン・ユエ監督の誠実な語りも心に響くし、そして『勝手にふるえてろ』で観客賞を受賞した大九明子監督の「映画にしがみついていてよかった」というコメントに感動する…。戸田ひかる監督(「スプラッシュ」部門作品賞)と藤元明緒監督(「アジアの未来」部門作品賞)の授賞にも興奮。おめでとうございます!

そしてコンペの『グレイン』。一般上映での評判も上々で、グランプリはこれで決まりだと推す声も聞こえてきたりして、ある意味本命が順調に受賞したのかもしれない。トルコの名匠セミフ・カプランオールの6年振りの新作を紹介できたことは光栄だし、その作品が最高賞を受賞して正当に評価されたことはとても嬉しい。

そして、『グレイン』主演のジャン=マルク・バールさんが初来日し、そのあまりにも魅力的なお人柄を僕たちに発見させてくれたことも、今年の映画祭の最大の好事のひとつだ。ジャン=マルクさんは一昨日に帰国してしまったけれど、大いに喜んでいてくれているに違いない。セレモニーまで残ってもらえなかったの残念だけれど、本当に東京に来て下さってありがとう!

一方で、受賞を逃した作品の中には下馬評が高かったものもあり、悲喜こもごもの結果となったのは映画祭の宿命だ。みんな表面上は「しょうがないさ」とサバサバした顔をしているけれど、その表情の下には明らかな失望も見られることがあり、僕はかける言葉を失う。カンヌでも映画祭会期中の評判と審査員の出した結果が食い違うことがしばしばあるけれど、まあともかくこればっかりは「しょうがない」。僕が激励する立場なのに、逆に「トーキョーに招待してもらえただけでも受賞と同等の価値があるんだよ」と返してくるゲストに対し、深く頭を下げる…。

授賞式パートが終わり、続いてトミー・リー・ジョーンズ氏がアル・ゴア氏を招き入れ、ゴア氏がクロージング作品である『不都合な真実2:放置された地球』を紹介。僕は本作を未見なので、とても見たい。

17時くらいにセレモニーが終わり、会場を後にするゲスト数名の労をねぎらったりして、僕はいったん事務局へ。少し席で休憩してから18時半にクロージング・パーティー会場に行ってスタンバイ。パーティーの司会を仰せつかったので(とはいえ大したことをするわけではないけど)、少しだけ進行のお手伝い。合間にウーロン茶片手に幾人からの参列者とお話する。あまり頭が正常に動いていないのでまともな受け答えが出来ないけれど、ともかく終わりが近づいたことを実感する。21時にパーティーはお開きとなり、僕はダッシュで会場を移動。

作品ゲストとのプライベート・パーティーで、ここで僕はついにビールを解禁! みなさんと本当に乾杯。コンペやスプラッシュはじめ、内外のゲストたちとノンストップでお話しする。映画祭をやっていてよかったな! と心から思える時間だ。最高の雰囲気で盛り上がり、あっという間に0時になる。朝まで話していたいところだけれど、残念ながら中締めの時間だ。本当に、楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。

店がパンパンに満員なので、僕が高いイスに上って挨拶しようとしたら、酔いも手伝ってバランスを崩して落ちそうになってしまったところを支えてくれたのが、『スパーリング・パートナー』のソレイマヌ・ムバイエさんだった。まさか世界チャンピオンに体を支えてもらえるとは! ムバイエさん、本当に気さくで超ナイスな人だ。マチュー・カソヴィッツさんと揃って来日してもらえたのはまさに僥倖、またスクリーンでお目にかかれますように!

結局事務局に戻ったのが1時くらいで、そこから撤収の後片づけ。ビールがまわり、完全に動作が遅くなってしまっているけど、残っているスタッフたちと記念撮影などしながら、せっせと荷造りをする。2時半に外に出て、数名の同僚とともに深夜営業している「蒼龍唐玉堂 六本木店」に行き、焼き立ての餃子と熱々の担々麺、そして冷たいビールを頂く。もう、これを至福と言わずして何と呼ぼう!

宿に戻り、3時半に完全にノックダウン。

<11月4日(Day11)>
4日、土曜日。4時半起床。1時間しか寝てないので、二日酔いというよりは普通に酔っぱらっている。顔だけ洗ってタクシーに飛び乗って、ゲストの宿泊するホテルへ。最初に見送ることになる作品が『スヴェタ』チームで、ホテルの出発が午前5時。絶対に挨拶を逃すわけにいかない!

今回ジャンナ・イサバエヴァ監督と交流を深められたことは僕にとってとても重要だった。今後とも密に連絡を取り合うことを約束し合い、しばしのお別れ。

こうして、お別れの一日がスタート。濃密な日々をともに過ごしてきた映画人たちとの別れは、いつもとても寂しい。短期間に感情を通じ合える関係を築き、それも一瞬にして終わっていく。本当に映画祭というのは不思議な場だとつくづく思う。しかし感慨にふけるのはもう少し先だ。とにかく眠いを通り越して、もはやウォーキング・デッド状態なので、ゲストを送り出しては同ホテル内に設置した仮事務局に行って仮眠することを繰り返す。ようやく立ち直ったのは昼過ぎだったかな…。

『スヴェタ』、『グッドランド』、『スパーリング・パートナー』、『アケラット - ロヒンギャの祈り』、『サッドヒルを掘り返せ』、『シップ・イン・ア・ルーム』、『ナポリ、輝きの陰』、『現れた男』、『グレイン』、『ザ・ホーム - 父が死んだ』などの作品ゲストが次々と去っていく。映画祭を盛り上げてくれてありがとうございました。またすぐに会える日が来ますように!

そして18時出発のゲストをもって、今年の見送りも終了。不思議なもので、毎年ゲストの傾向が少しずつ異なる。毎年素敵だけれども、今年は特に最高で、ジャン=マルク・バールさんを始め、多くのゲストがコンペやその他の部門の作品をせっせと鑑賞し、ゴジラコンサートや『楢山節考』を見に行く人も多く、東京観光に出かけてしまうのではなく(それもいいのだけど)みんな映画祭のプログラムを楽しんでくれたのが嬉しい。夜のパーティーの出席率もとても高く、ゲストどうしで積極的に交流していた。無理難題でスタッフを困らせてしまうゲストも皆無で、本当に温かい人ばかりだった。30回記念にふさわしい楽しさをゲストの方々が作ってくれたことに、いくら感謝してもしきれない。

大きな事故もなく、上映トラブルも(僕がいま知る限りは)なく、とにかく無事に終了したことにまずは安堵です。来場してくれた内外のゲストは口を揃えて東京のホスピタリティを本気で讃えてくれる。これは同僚たちの不断の努力のおかげだ。僕は何も貢献できていないけれど、スタッフを誉めてもらえると感情の抑制が効かなくなって涙がこみあげてしまう。そして、自分の作品は東京の観客にこそ見てもらうべきだったのだと分かった、と話すゲストも多く、繊細な作品の監督ほど東京の観客の集中力に感謝している。これは本当に嬉しいし、誇らしくなる。

30回としての映画祭がどうだったのか。僕なりに客観的な総括を書けるかどうか、これから一休みして考えてみるつもりだけど、ともかく5月あたりから走り続けて約半年。鼻カゼひとつひくことなく元気に乗り切れたことを映画の神さまに感謝しつつ、映画祭にたくさん足を運んでくれて、Q&Aを始め数々の局面を盛り上げてくれたお客さんに心の底から感謝です。今年も充実した時間を過ごすことが出来ました。観客の皆さんの胸に響いた作品が1本でも多くあったことを願ってやみません。そして、深夜更新のこのヨロヨロブログにも連日付き合って下さってありがとうございました!

ともかく、今年も終わりました。おつかれさまでした!
《矢田部吉彦》

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