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【インタビュー】ジェシカ・チャステイン、ステレオタイプな“女性像”は「映画で壊していかなきゃ」

最もパワフルな存在である女優ジェシカ・チャステイン。彼女が自ら製作、主演を務めた『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のプロモーションのため初来日。世界を虜にしてしまう彼女の魅力を余すことなく披露してくれたインタビューをたっぷりお届けします。

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『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』ジェシカ・チャステイン インタビュー(撮影: Roy Rochlin)
『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』ジェシカ・チャステイン インタビュー(撮影: Roy Rochlin)
  • 『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』ジェシカ・チャステイン インタビュー(撮影: Roy Rochlin)
  • 『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(c)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.
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いま、世界で最も輝いていて、最もパワフルな存在である女優ジェシカ・チャステイン。彼女が自ら製作、主演を務めた『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のプロモーションのため、初来日。インタビューを通して見えてきたのは、キュートな笑顔を生み出すウィットに富んだ陽気な一面と、名声のためでなく強い使命感をもって女優という仕事に向き合う真摯なプロの顔。限られた時間にもかかわらず、世界を虜にしてしまう彼女の魅力を余すことなく披露してくれたインタビューをたっぷりお届けします。

ジェシカの最新作『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』はポーランドで実在した女性の物語。第二次世界大戦中、ドイツ占領下のワルシャワにおいて、経営する動物園で多くのユダヤ人を匿い、自らも過酷な状況の中で成長していくヒロインを演じています。

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(c)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.
「アントニーナと私の共通点は、動物への愛ね。全ての生きとし生けるものが奇跡だと思っているところも。彼女の共感力が素晴らしいの。映画のヒーローといえば武器を持って戦うものだけれど、アントニーナは命を救うため愛をツールにして戦うヒロインなのよ」

舞台となっている1930~40年代といえば、女性の立場がまだまだ弱かった時代。

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(c)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.
「夫婦の力学も興味深く描かれているわ。冒頭、夫にとってアントニーナは子どものような存在で、夫が全ての選択をしているの。好きなシーンは、中盤で夫婦が喧嘩するところ。夫が“ただ家の中にいて遊んでいる君には僕が外で経験していることなどわからないだろう”と言う。それに対して彼女は“あなたこそ、私がここで何を経験しているかわからないでしょう!”と言い返す。そうやって、平等な立場になっていく。2人の関係性がどのように変化したかを描くのはとても大切なことだったの。関わる人々が平等であればあるだけ、愛は強くなると思っているから」

演じたアントニーナは、女性らしい正義感にあふれた独特のヒロイズムを持った存在として描かれています。それは、これまで彼女が演じてきたヒロインたちに共通する女性像。

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(c)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.
「役を選ぶときは、自分が見ている世界をしっかり体現しているキャラクターを選ぶの。演じるのは、男性が多い業界で働く女性の役が多いけれど、実社会でもそういうケースが多いでしょ。『ゼロ・ダーク・サーティ』で演じた役とアントニーナはずいぶん違うけれど、2人とも映画でよく見る女性像とは正反対。そういう現代的な感覚や視点で役選びをすることはとても重要なの。女性はこうあるべきだというステレオタイプは、ある意味で映画のせいでできたものだと思うの。だから映画で壊していかなきゃと思っているのよ」

いまハリウッドでは、これまでセクシャル・ハラスメントの被害に遭いつつ、仕事を失うことを恐れて耐えてきた女性たちが声を上げ始めています。

「まだハリウッドでは変化を感じていないわね。多くの男性が権力のある地位にいるから。ただ、ハリウッドの女性たちは自分たちが力を持ち始めていると感じているわ。たくさんの女性たちが支援し合おうとしているし、ひとつになることが恒久的な変化に繋がると信じているから」

女優として一番の原動力となっているのは、「いままで語られてない物語を語ること。女性が自分を投影できるキャラを生みだすこと。キャリアを使って社会貢献をすること。ステレオタイプをなくして女性を支援すること。女性たちを父権社会と戦えるようインスパイアすること」と語るジェシカ。スクリーンの外でもSNSなどを通して、女性をサポートする発言を積極的に発信しています。

「業界に入ったときは声を上げるのが恥ずかしかった。でも『ゼロ・ダーク・サーティ』の公開後、ほかの女性キャストと私との間でいさかいがあったという記事がアメリカ国内でいくつか出たの。それは事実ではなかった。2人ともオスカーにノミネートされていたのよ。でも、この架空のストーリーのおかげで映画業界における歴史を思い出したの。いかにメディアやスタジオが、女優たちが団結しないようにして虐待の被害者にしてしまうかという歴史をね。だから“これは嘘よ!”とフェイスブックに乗せたの。最初はメディアを否定するようなことを言って、気難しい女優だというレッテルを貼られるのは怖かったわ。でもその後、意見を表明することによって、スタジオもメディアも女性を分断するためになど私を利用できないと認識してもらえたと気づいた。自分自身の人生をコントロールできていると感じられたわ」

それ以降、ほかの女優、女性たちの支援のために声を上げ続けていると言います。

「女性同士いがみ合うのは当然だと思うのは、間違った考えだと思うの。『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』は女優が多く出ていた作品だけれど、最高の現場経験だった。若い女性たちにも、女友だちがいていいんだと思いながら大人になってほしい。それに、分断しようとしている人はいるけれど、ひとつになった方が私たちはより強くなれるのよ!」

 ジェシカの信念を反映し、女性たちへの強いメッセージが感じられる作品ですが、もちろん、世界の全ての人に向けた愛のあるメッセージも。それは、人が危機的状況においても、他者に対してでさえどこまで勇敢で、強く、愛情深くいられるかを伝えるもの。と同時に、誰にでも自分なりに強くなることはできると教えてくれています。

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』(c)2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.
「アントニーナはありきたりの女性だった。でも、彼女は人の予想を超えて、見知らぬ人たちに扉を開けたの。映画を通して、ほかの人の人生に自分が変革をもたらせると気づいてもらえたら嬉しい。将軍でも、有名な俳優でもなく、政治的リーダーである必要もない。アントニーナは普通の女性で、愛と思いやりで人を救ったんです。そこにとてもインスピレーションを受けたわ」

もちろん、女優であることで発言力が高いということも分かっていると言います。

「でも、それは誰もが持てる力だとも思っている。2017年に生きていて素晴らしいと思うのは、SNSという自分の意見を発信できるプラットフォームを誰もが持てるということ。いま、映画業界で起きていることの大きな一因はSNSよ。女性がひとつになって、こういった話が出たときにうやむやにさせない。皆が声を上げ続けるから、報道され続ける。かつては、メディアはこういった話を無視し続けてきた。だから、女性たちが声を上げ続けられるいまの時代にも強いインスピレーションを受けているのよ」

作品プロモーションのため取材を受ける場合、デリケートな社会問題についての質問を受けたがらないセレブリティもいる中、堂々と積極的に映画業界の闇と向きあい、戦っているジェシカ。本音で心の内を明かしてくれるその姿は、彼女自身が演じてきた強く、愛情深く、同性たちが心から共感できる女性像と重なります。そして、男性社会の中で当たり前に生きられない女性たちがまだまだ多くいる現実に光を当てようとする凛とした姿は、同じ女性としてとてもたくましく、そしてまぶしく映りました。

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』ジェシカ・チャステイン インタビュー(撮影: Roy Rochlin)
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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