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【MOVIEブログ】2018ベルリン映画祭 Day2

16日、金曜日。6時半にばっちりと目覚める。4時間睡眠でも平気なのは、欧州出張恒例の時差ボケマジックだ。昨夜は雪がぱらついて冷えたけれど、今朝はきれいな青空が広がっている。気温も高めで5度くらいかな? とても気持ちのいい朝。

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『Damsel』
(c)Strophic Productions Limited 『Damsel』
  • 『Damsel』
16日、金曜日。6時半にばっちりと目覚める。4時間睡眠でも平気なのは、欧州出張恒例の時差ボケマジックだ。昨夜は雪がぱらついて冷えたけれど、今朝はきれいな青空が広がっている。気温も高めで5度くらいかな? とても気持ちのいい朝。

ルーティーンをこなしてメイン会場に向かい、コンペ作品のマスコミ試写に並ぶ。朝9時の回はマーケットパスでも大抵は入れるのだけど、人気作品のときはプレス関係者だけで入場が打ち切られることもあり、なかなか油断できないのだ。

無事に入場できて見たのは、パラグアイの『The Heiresses』。幸せに暮らしていた中年の女性カップルが経済的危機に陥り、片方が借金トラブルに巻き込まれて投獄されてしまう。残されたヒロインはひょんなことから近隣の老女たちのタクシー代わりを務めるようになり、そこで気になる女性に出会う…。

フィルムの質感を残した色調に南米のアート作品の美しさを味わうことが出来るのだけど、いささか単調だったか。ヒロインの心情に寄り添うのはいいのだけれど、終始それだけになってしまい、単調になってしまった。もうひとつサブプロットがあれば、抑揚がついてもっとよくなったはず。設定は十分に面白かったはずなので、残念。

続けて10時45分から「パノラマ部門」の『Shut Up and Play the Piano』という作品へ。天才鬼才と称されるカナダ出身のミュージシャン、チリー・ゴンザレスのキャリアと素顔に迫るドキュメンタリー。そしてこれが痛快な傑作だった!

祖父にピアノを教わり、青年期にロックバンドを組み、ベルリンに移り住んでパンクとラップのハードなパフォーマンス活動を経て、ピアノに改めて向き合い、ソロピアノのアルバムを発表し、そしてフルオーケストラと破天荒なライブを行ったり、ダフトパンクとコラボしたり、起伏に富んだキャリアはまさに驚愕。エキセントリックで感動的なパフォーマンスも十分にフィーチャーされ、もう大興奮の面白さ!

本当に最近は音楽ドキュメンタリーに秀作が多い。音楽ドキュと食べ物関連ドキュは各国の映画祭でも特集が組まれているので、トーキョーでも検討してみたい…。

12時半にいったんホテルに戻って所用を済ませてから、会場脇にあるショッピング・モールに向かい、地下奥にある中華バイキングで昼食。ここは広くて意外に空いているので使いやすいのだ。おまけに机が大きいので、パソコンを広げて仕事が出来たりする。中華プレートを頂いてから、せっかくなのでパソコン開いてブログを少し書いてみる。

14時にシネコン会場に戻り、メキシコの映画機関が主催する新作のプレゼンテーション企画に参加する。6本の新作メキシコ映画のクリップが上映され、監督やプロデューサーがプレゼンしていく。いずれも5月から夏にかけて完成する作品なので、秋の東京国際映画祭に招待するにはタイミングとしては最適だ。さて、ご縁が出来る作品があるだろうか?

15時半にマーケット会場に行き、1件ミーティング。2件目がキャンセルになったので、上映に戻ることにする。

16時半から、「フォーラム部門」のルーマニアのコルネイユ・ポルンボイユ監督新作『Infinite Football』へ。ポルンボイユ監督は僕が偏愛する監督のひとりで、くせ者揃いのルーマニア映画界においても一際異彩を放つ存在だ。形而上的社会派アート作品からセルフドキュメンタリーまで、毎回異なるタッチで楽しませてくれる。

新作はドキュメンタリーで、役所で固い仕事に就く一方、真剣にサッカーの新しいルールを考案してサッカー協会に打診を入れている男性に焦点を当てる内容。男は監督の友人の兄であるらしいのだけど、いかにして現在のサッカーのルールに違和感を覚えるようになったかというエピソードから、徐々に家族の物語が垣間見えたり、ルーマニア郊外のやりきれない雰囲気が醸し出されたり、とても不思議で絶妙な鑑賞後感を残す。

ポルンボイユ監督は2014年にも『The Second Game』というサッカー関連のドキュメンタリーを作っている。監督の父親はかつてプロサッカーのレフェリーをしており、1988年に大雪の中で行われた試合のビデオを見ながら、監督はそのゲームを担当していた父親と会話をする。つまり、画面にはサッカーの試合だけが映り、そこにふたりの会話が被さってくるというそれだけの内容。しかし、微笑ましい父子の会話から、やがて当時の共産主義政権下の市井の人々の暮らしが垣間見えてくるに至り、作品はただのサッカーの解説映画から逸脱していく…。ああ、いつかポルンボイユ監督をきちんと紹介したい!

上映後に監督のQ&Aがあったのだけど、次の予定があるので後ろ髪を引かれながら移動。

18時にエジンバラ国際映画祭がカクテル・パーティーを催していたので、顔を出してディレクターのマーク・アダムズさんにご挨拶。まだ夜は長いのでビールは我慢して、(ウーロン茶がないので)コーラ片手に20分ほど滞在。

メイン会場に移動して、19時からコンペの『Damsel』(写真)。ディヴィッド&ネイサン・ゼルナー兄弟監督に伴われ、ロバート・パティンソンとミア・ワシコウスカが颯爽と登場して拍手喝采。

そして作品が予想以上に(失礼)よかった!西部開拓時代、荒涼たる大地の中の小さな町で青年が牧師を雇い、故郷に住む恋人にプロポーズをする旅に出る。道中、実は恋人が誘拐されていると青年は牧師に告白し、犯人を殺して恋人を奪還する手伝いをするように頼むが…。ここから物語はまさに思わぬ方向に転がり、見る者をどんどんと裏切って楽しませてくれる。

凄惨なリアリズムではなく、かといって古典的西部劇とも異なり、ユーモラスで端正なタッチがとても新鮮だ。ロバート・パティンソンがとてもよくて、彼の作品の中では今回の役が一番僕は好きかもしれない。軽妙でいて底知れないキャラクターを絶妙に演じてとても上手い。そしてブラックな側面が強い物語に対し、大画面に広がる絶景は爽やかな空気をまとっている。ゼルナー兄弟監督、なかなかのセンスの持ち主だ!

いやあ、これはよかったなあ、と喜びながら会場を出て、21時半。スターバックスでコーヒーとフォカッチャの簡素な夕食を済ませ、パソコン開いて少し叩いてから、22時半の上映へ。

パノラマ部門の作品を見たのだけど、これがとても退屈で苦痛な作品だったので、感想は割愛。『Damsel』で愉快になった気分に水をかけられてしまったけど、まあこればっかりはしょうがない。とはいえ、0時半に打ちひしがれながらホテルに向かう足取りの重さといったら…。

最後は辛かったものの、全体としては充実した1日を過ごし、ブログをつらつらと書いて今夜も2時。ダウンです。
《矢田部吉彦》

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