原発事故の二週間後、一人の男性が自ら命を絶つ。農作物出荷停止の報を受けた翌朝のことだった。遺された母と子は、放射能に汚された土地で農業を続けている。第一原発から65?の福島県須賀川市。それでも、その地で生きているのだ。そんな母子の話を聞くために、東京から若者たちが訪れる。ほとんどが初めて福島に足を踏み入れる学生たちだ。彼らは、母子の言葉に涙する。それは、マスコミでは決して報道されることのない、福島の、生の声だった。父の死、放射線量の高い中での農作業、除染とは言えない除染、「原発事故で死んだ人はいない」という政治家の心ない言葉への怒り、補償をめぐる東電との闘い…。
井上淳一