福島第一原発から約12キロ離れた、福島県双葉郡富岡町。3.11以後、町に残された動物を保護し育てるため、故郷・富岡町に残る事を決めた松村直登。寡黙な父と2人、いまも避難指示解除準備区域の自宅に留まっている。庭に実った瑞々しい茄子を2人で収穫する半谷夫妻。「水と土で生きてるんだ。」と穏やかに語る農作業中の半谷さんの背後にはフレコンバックが積まれ、除染作業が淡々と行われている。3.11以後の国や行政、そして故郷に戻る者、戻らない者の間に生まれる葛藤。淡々と進んでいく日常生活の中で、彼らが自然体で紡ぐ言葉の中に“ある日”を境に、かつての故郷を失った人間たちのいまとこれからが見えてくる。
ジル・ローラン