1960年代、“ボク”(オダギリジョー)が3歳の頃。真夜中にオトン(小林薫)が玄関の戸を蹴破って帰ってきた。酔っぱらったオトンはボクにいきなり焼き鳥の串を食わせ、そして…オカン(樹木希林)にホウキで殴られた。故郷の小倉で3人が暮らした短くも幸せな日々の、それが最後の思い出だった。1970年代、中学3年になっていたボクは、寂れた町を出ていきたくなった。大分の美術高校に合格し、一人で下宿生活をすることになった春の日。駅まで見送りにきたオカンがボクに持たせたカバンには、新しい下着と弁当箱と、しわくちゃの一万円札を忍ばせた封筒が入れてあった。列車の中、オカンのおにぎりと漬け物を噛みしめて、15歳のボクは泣いた…。東京タワーの麓で眠りについた、ボクのオカンのちいさな話。母と子、父と子、友情、青春の屈託…いま語りにくく感じづらいことをまっすぐ、そしてリアルに描く。200万部を超えるリリー・フランキーの自伝的小説の映画化。
松岡錠司