極寒のロシア。貧しい孤児院で暮らす、親に捨てられた子供たち。孤児院を抜け出した6歳の少年・ワーニャは、幸運にもイタリア人夫妻の養子に選ばれる。その幸せを素直に喜んでいたある日、かつて孤児院にいた友達の母親が突然現れたことで、ワーニャの心は大きく揺らぐ。「一度でいいから、お母さんに会いたい――」。わき上がった思いを胸に、ワーニャは孤児院を脱出する…。
アンドレイ・クラフチュク
2005年のベルリン国際映画祭少年映画部門でグランプリに輝いた『この道は母へとつづく』は、孤児院で育った6歳の少年が「母に会いたい」──ただそれだけの想いから自分の人生を変えようとする、ロシア発のヒューマンドラマだ。母を捜して…的な物語は珍しいわけではないが、ロシアの社会問題を見据えていること、実話がもとになっていること、そして何よりも主人公・ワーニャ役に抜擢された子役、コーリャ・スピリドノフの演技がいい。「もしかしたら会えるかもしれない」というかすかな希望が、「絶対に会える!」という力強さに変わっていくその心情を見事に演じきっている。
秋本番! 人によって、食欲の秋とか、芸術の秋とか、スポーツの秋とかいろいろですが、そのしっとりとした雰囲気のせいか、人恋しい秋というのもあり。秋の夜長。片恋の人は想いが募り、好きな人すらいない場合はむしょうに寂しさがこみ上げたりして。もちろん、遠くに暮らす家族たちの声が聴きたくなることもあるでしょう。