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ベニチオ・デル・トロ「チェ・ゲバラから誠実に努力することの大切さを教わった」

ベニチオ・デル・トロが観客に与えるインパクトは凄まじい。『ユージュアル・サスペクツ』('95)、『トラフィック』('00)、『21グラム』('03)、『シン・シティ』('05)──どれも助演として名を連ねている作品だが、タイトルを聞けば、どんな役だったのか、どんな演技を見せてくれたのか容易に記憶が甦ってくる。それは彼の俳優としての実力が確かなものであることはもちろん、徹底した役作りゆえ。そんなデル・トロが約7年のリサーチ、25kgの減量を経て新たに挑んだのは、死してなお正義のアイコンとして愛され続けている革命家、チェ・ゲバラだ。

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『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳別れの手紙』 ベニチオ・デル・トロ photo:Shunichi Sato
『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳別れの手紙』 ベニチオ・デル・トロ photo:Shunichi Sato
  • 『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳別れの手紙』 ベニチオ・デル・トロ photo:Shunichi Sato
  • 『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳 別れの手紙』 ベニチオ・デル・トロ photo:Shunichi Sato
  • 『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳 別れの手紙』 ベニチオ・デル・トロ photo:Shunichi Sato
  • これぞゲバラ! photo:Shunichi Sato
  • 今回プロデュースをも手がけたことがひとつの転機となったと明かす photo:Shunichi Sato
  • 25kgもの減量を経て20世紀最大のカリスマを演じきった photo:Shunichi Sato
ベニチオ・デル・トロが観客に与えるインパクトは凄まじい。『ユージュアル・サスペクツ』('95)、『トラフィック』('00)、『21グラム』('03)、『シン・シティ』('05)──どれも助演として名を連ねている作品だが、タイトルを聞けば、どんな役だったのか、どんな演技を見せてくれたのか容易に記憶が甦ってくる。それは彼の俳優としての実力が確かなものであることはもちろん、徹底した役作りゆえ。そんなデル・トロが約7年のリサーチ、25kgの減量を経て新たに挑んだのは、死してなお正義のアイコンとして愛され続けている革命家、チェ・ゲバラだ。

「チェになることは不可能。でもやるだけやってみよう、と」

Part1『チェ 28歳の革命』、Part2『チェ 39歳別れの手紙』の2部作の監督を手がけるのは、『トラフィック』でデル・トロにアカデミー賞助演男優賞をもたらした、盟友スティーヴン・ソダーバーグ。だが、『チェ』2部作の企画は『トラフィック』以前のものだという。しかも、デル・トロはプロデューサーを兼ねるという熱の入れよう。当然、そこには実在の人物を演じるプレッシャー、製作者としての責任があったはず。
「どうやってチェ・ゲバラの知識を吸収するか…その方法はいくらでもあったと思うんだ。僕はチェ自身が残した自伝や日記を始め、チェに関するあらゆる書物を読んだ。また、貴重だったのはチェと同じ時を過ごした人たちがまだ生存しているということだった。彼らにも話を聞いたよ。証言してくれる人にアポを取って、会いに行って、話を聞いて──そして、自分たちの聞いたものを脚本家に伝えたんだ。それはとてもクリエイティブな作業だった」。

チェは砂糖なしのコーヒーを好んだ、手先が器用で繕いものも自分でこなす男だったなど、細かな情報も確証を得ているというのだから驚きだ。
「全て忠実だよ。最終的に4時間半にまとめたけれど、編集前は6〜7時間はあったと思う。リサーチで特に印象的だったこと? そうだな、チェが喘息を患っていたことかな。彼と一緒に過ごした戦士から聞いた話なんだけれど、喘息がひどいときはチェを横にして呼吸を楽にしてあげたらしいんだ」。もちろん、そのシーンもしっかりと映画に取り入れられている。だが、興味深いのはリサーチで得たあらゆる情報の使い方だ。
「自分の中に詰め込んだ後に一旦、捨てた。そうすることで“このシーンには何が必要か?”と集中することが出来たんだ。けれど、確信が持てずに迷いが生まれたときもある。そのとき僕を奮い立たせてくれたのは、共演者やスタッフががんばっている姿、彼らの真剣に取り組んでいる姿に後押しされたんだよ」。

そして、「実在したチェになることは不可能なんだ。それに恐れをなした」と、穏やかに言い放つデル・トロ。その言葉からは、20世紀最大のカリスマと言われたチェ・ゲバラを演じることが、どれだけ難しいことなのかが垣間見える。
「あるとき、ソダーバーグ監督が僕の目に恐れが宿っているのを感じて言葉をかけてくれた。『チェを演じ切ることは無理だけれど、やるだけやってみよう』と。それはとてもゲバラ的アプローチだと思った。というのは、例えばメキシコの山中でゲリラ戦の訓練をしていたとき、チェは喘息がひどくて山を登り切ることができなかった。でも、登ろうと努力した。そんな彼の姿から“誠実な気持ちで努力することが大切だ”と教わったんだ。だから、自分もやるだけやってみよう、と」。デル・トロのあらゆる努力は、2008年度カンヌ国際映画祭、主演男優賞を受賞したことで実を結んだ。

撮影中はビートルズ、ブルース・スプリングスティーンを聞いていた!

もう一つ、デル・トロの役作りに欠かせないアイテムがある。それは音楽だ。普段、撮影前の役作りのときには、決まって音楽を聴いているそうだが、今回は?
「撮影中に聞いていたのは、ブルース・スプリングスティーンの『マジック』、ザ・クラッシュの『サンディニスタ!』、ビートルズの『ホワイト・アルバム(ザ・ビートルズ)』、映画『ユージュアル・サスペクツ』絡みでマヌ・チャオとかも聴いた。それから、シルビオ・ロドリゲスの曲で『Fusil Contra Fusil』(訳:武器vs武器)”という曲があって、Part1のエンディングで使われているんだ。彼はキューバのボブ・ディランと形容できるアーティストなんじゃないかな。あと、今回はPart2を撮った後にPart1を撮ったんだけれど、Part2を撮っている間は全く音楽を聴いていない。それは僕にとって大きな違いだった」。

アルゼンチンで生まれ、旅の途中でフィデル・カストロと出会い、彼と共にキューバに渡り革命を起こし、そしてボリビアで死を遂げたチェ・ゲバラ。『チェ』2部作では、彼の28歳と39歳に焦点をあて、2つの革命を描いているわけだが、最後の質問──ベニチオ・デル・トロ自身にとっての革命(転機)はいつなのか。
「そうだな…生まれた日(1967年2月19日)、俳優になろうと決めた日(19歳のとき)、『チェ』で初めて製作を経験したからこの映画もそのひとつだね! プロデューサー業は今後もやってみたいと思っているんだ」。

あらゆるリサーチを行い、完璧に役柄になりきるロバート・デ・ニーロに因んで、徹底した役作りの過程を“デ・ニーロ・アプローチ”と呼ぶように、チェ・ゲバラを演じたベニチオ・デル・トロもまた伝説級の演技を見せてくれたと言えるのではないだろうか。



主演のベニチオ・デル・トロ。バックの絵はロンドンを拠点に活躍するアーティスト、コンラッド・リーチが描くチェ・ゲバラ。30枚限定でショッピングサイトisolaで販売中。
《text:Rie Shintani / photo:Shunichi Sato》

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