中原由梨
(映画配給会社/20代最終戦)
■心が還るモノ 【THINGS】
冷蔵庫
私は必要に迫られて、
今まで何度か引越しをした。
引越しというのは、ある種の整理整頓術のひとつだ。
自分にとって要るもの/要らないものがハッキリするしね。
大量のゴミ捨ても許されるチャンスでもあるしね。
整理できなかった諸々も一度に整理できるしね。
引っ越す度に少しづつ身も心も軽くなる気がするから好き。
まぁどうせすぐ別のモノを身につけて重くなっちゃうんだけど。
そんな中でも、どうしても捨てられないものがあった。
いつ買い換えても捨ててもいいと思ってて
特に愛着もないモノなんだけど、なぜか捨てられない。
福岡に行く時に大型電化製品は全部売ったりあげたりしたんだけど、
この子だけは持っていった。
それは冷蔵庫だ。
この冷蔵庫をじっと見てると、東京に来たばかりの19歳の春に
「とにかく電化製品は秋葉原!」と思い込んで
ドキドキしながら買いに行った自分が見える。
あてもなく上京し、周りには友達も知人も全くいなくて
誰にも頼る事もできなくてホームシックになって。
新宿の紀伊国屋書店で「どこに行っても書店って同じ風景だなぁ」
ってなぜか安心したそんな自分が見える。
んやー、若かったよ!
見た目が、というより気持ちが。
あの頃の私は、今よりもギラギラしてドキドキして貪欲で
そしてとっても無鉄砲で小心者でした。
秋葉原でこの子を購入してから
まるで引越す時のように、色んなものを身につけ捨てていく様子を
この冷蔵庫だけはずーーーっと見てた。
だから今は、もうある種の相棒のような気がして
というより自分が投影されている気がして、
捨てるという選択肢なんてありえないと思う。
とはいえ、いつもはそんな事全く意識してない。
だけど時々冷蔵庫をじっと見ては19歳の時の自分に思いを馳せる。
そして「ちっちゃくまとまるには早いなぁ」と
めんたいロックスピリット(?)的なものを思い出す。
形あるモノはいつか必ず壊れる。それは絶対に絶対に壊れる。
だからこそ、形がある間は出来るだけ愛してあげたい。
まぁ気持ちだけ、だけかもしんないけどね(笑)。