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押井監督の新たなる第一歩を担う『イノセンス』は、今、着々と公開に向けて準備が進められている。日本のみならず、海外でも旋風を巻き起こすのか。「新作に期待されているのは、また面白い映像を見せてくれるだろうということ」と話す。押井、宮崎、大友。海外で高評価されている3人だが、群を抜いているのは押井守だという。理由は『攻殻機動隊』。「その何が評価されたかというと、内容もさることながらその映像表現なんですよね。映画は時間と空間です。スクリーンに映された2次元の世界をどうやって3次元に見せるかが勝負。それは奥行きをどうやって作るかなんです。押井の作品は空間、つまり建物や背景が歪んでいる。これは日本アニメのものすごい特徴なんです。米国人が作るものは現実に忠実だけれど、日本のアニメはどこかが誇張してあって、話の展開に応じて都合よく自在に歪められる。それが外国では新鮮に映ったんです。ウォシャウスキー兄弟は『マトリックス』を作る際、『攻殻機動隊』を参考にしたと公言しているけれど、それは空間が捻じれて見えるように、セットを歪めて作ったということ。かつて浮世絵が空間の作り方で印象派に影響を与えた。似たようなことが現代にも起きたんですね」。
「実は日本のアニメーションって海外で本当に評価されているのか疑問」と語る鈴木氏。だが、押井監督への評価は揺るぎないものだという。「日本アニメの熱狂的なファンは欧米で十数万人いるといわれる。だから、ビデオやDVDの売り上げも動員も普通は十数万の枠は超えない。それが現状。でも、『攻殻機動隊』のビデオは100万以上売れたわけです。つまり、押井作品はアニメの枠を超えている。米国の映画祭なんかに行くと、押井さんは神様のように迎えられます。他の作家など足もとにも及ばないですよ」。
海外で熱狂的に受け入れられているにも関わらず、残念ながら現時点では押井作品が日本で一般に浸透しているとは言い難い。「日本だと注目を浴びるにはヒット作が必要。それなしに認知はされない。だから『イノセンス』は日本での押井さんの評判を変える作品になると思う」。現在、日本で一般の人たちが足を運ぶアニメ映画といえば、ジブリ作品やディズニー作品といった非常に限られた作品のみ。この現状についても鋭く分析する。「自業自得っていうのもありますね。マニアをあてにして作る人もいるから」。マニア向けというのは好きではないと話す。理由は実写だろうが、アニメだろうが面白いものは面白いから。「ではその時代に受け入れられる面白さとは何なのか、ということを考えますね。ただ、今はすごく難しい時代でわからなくなってきているけれど」。
「ハリウッドが娯楽映画スタートさせ発達させた。その流れを大きく変えたのがフランスのヌーベルバーグだと思う。娯楽はなしでもいいんじゃないかという流れができた。それを境に、芸術性や社会派を目指すものと、娯楽とが分かれていってしまった。でもきっと、新しい才能が出てくればこんな流れも常識も変わると思う。若い人には新しいことにどんどん挑戦してもらいたい。オレが歴史を変えるぞってね。僕はもう年だから(笑)」。
新しい才能の出現を期待する鈴木氏。だが、大人が楽しめるアニメーション作品の地位確立にひと役買った彼が、すでに日本映画の流れを大きく変えたことは言うまでもない。そんな彼に、今後の活躍を、そしてさらなる革命を起こしてもらいたい、そう願う映画ファンは多い。その期待感を一番良く理解しているのは、きっと鈴木敏夫自身に違いない。
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鈴木敏夫プロフィール
1948年愛知県生まれ。慶應義塾大学卒業後、徳間書店に入社。「月刊アニメージュ」の創刊にかかわり、後に編集長を務める。1985年スタジオジブリ設立に参加。数々のジブリ作品プロデュースを手がける。2003年には『千と千尋の神隠し』でアカデミー賞長編アニメ部門賞を受賞。スタジオジブリ事業本部長。 |
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| 取材:牧口じゅん 撮影:菜 |
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