2004年2月13日。世界が待ち望んだ押井守監督の最新作『イノセンス』の公開を記念して、六本木ヒルズ森タワー52階が一大クラブイベントフロアに変貌する。イベントの名は“イノセンス公開記念「六本木ヒルズ朝まで文化祭」”だ。いったい何をするんだ? そんな疑問を持った編集部では企画発案者のひとりである森ビル矢部俊男氏にインタビューを敢行し、そのイベントの中身や企画意図について尋ねた。
六本木ヒルズのほぼ中央に聳え立つ森タワー。冬晴れの美しい日、このタワー内にあるオフィスからは果てしなく広がる東京の風景が一望できる。そんな気持ちの良い眺めを楽しみながら、押井監督とつながりの深いといわれる人物、矢部氏に押井監督と知り合うことになった経緯を伺った。

僕が押井さんの作品に出会ったのは『機動警察パトレイバー2』(※以下『パト2』)だったんです。元々都市計画や建築の仕事をしていたのですが、この作品が“東京ってこんな見方もあるんだ”という目線をがらっと変える見方を与えてくれたんです。

ちょうど六本木ヒルズを造っている最中でもあり、東京の都市計画の一端を模型でシミュレーションしていたんですよ(※編集部注:上の写真左を参照。一見では模型とはわからないリアルさ!!!)。その模型に押井さんが興味を持たれて、お会いすることになったんです。それが知り合うきっかけだったのですが、話してみるとお互い共通の趣味があったりして、その後は一緒に映像を作ったり、(さらにいろんな)話をしたりという感じですね。


『パト2』の中で描かれている東京の風景と、東京シティビューの夜景が似ていると話す矢部さん。確かに押井作品に描かれる東京の街はリアルで、そこにある匂いや風までが伝わってくるような気さえする。しかし、このふたりの出会いがどのようにして、押井作品とクラブイベントのコラボレート企画へと発展していったのだろうか?

そもそも森アーツセンターは「文化都心」六本木ヒルズの中核施設であり、文化活動を提供する、“アイデアが生まれるカルチャー・コンプレックスの場所”というコンセプトがあります。アートだからとか建築だからなどの概念に囚われずにやっていこうというコンセプトです。

また、夜景を楽しみながらクラブイベントをやりたいというのは、この東京シティビューの当初からの希望であったのですが、ただそこに見合うようなソフトウェアがなかなか見つからなかった。そんなところに相応しいコンテンツが現れた。それが『イノセンス』だったという訳です。この作品だからやる、いや、やりたい! と思えるイベントなんです。

今回のイベントの主旨はもちろん押井さんの作品と彼の持つ独特の世界観に触れてもらいたい、そしてその余韻に浸ってもらいたいということですが、それらに触れたひとりひとりが“メイド・イン・ジャパン”の威力を体験し、「ぬくぬくした日本に甘んじてるんではなく頑張ろう!」と触発されるきっかけになって欲しいんですよ。

『イノセンス』のテーマのうち、ひとつは恋愛ですし、今まで押井さんの作品を知らなかった女性の方や若い世代の方に特にその世界観や美しさを感じ、そして新しい文化を作り出していってほしいですね。いま、東京で一番近未来都市に近い場所、六本木ヒルズでその夜景を楽しみながら押井さんの作る世界観と作品、そして音楽の融合を体験できるのは今回、この1回だけなんですから。
『イノセンス』は、予告編や場面写真を見てもわかるとおり、実に色彩豊かに美しい情景が期待できる作品だ。誰よりも早く作品を鑑賞する喜び。そしてその余韻に浸りながら楽しむ夜景と押井監督をはじめとする様々なクリエイターのセンスを間近に感じる…。そんな贅沢なイベントは2月13日金曜日の夜、森タワー52階、東京シティビューにて開催される。

最後に見所は? という問いかけをすると、ニコニコと“内緒なんです…”と言われてしまった編集部。これはもう自分が体感するしかないのだ! ということを肝に銘じて森タワーを仰ぎ見るのだった…。
矢部 俊男 (やべ としお)
1962年3月2日 東京都生まれ
東海大学工学部土木科卒業後、大手道路会社に就職。一級土木施工管理技士、一級建築施工管理技士、一級建築士の資格を取得する。
建築コンサルタントの会社を経て、98年森ビルに入社。模型や映像などの企画制作を手がけ、都市計画に携わる。

東京静脈
定価:\3,000(税別)
監修/押井守・音楽/川井憲次・監督/野田真外
2003年春に六本木ヒルズのオープニングイベント「世界都市展」にて上映された作品。「普段見ることのない角度から見た都市・東京」をコンセプトに、都心を流れる神田川からの視点で知られざる《東京》の一面を切り取る。高速道路の下を、雑踏のなかを、鉄道高架の横を、《東京》の臓腑の内部をひっそり静かに流れる「静脈」〜血流の視線となってゆるやかにたゆたう静かな映像に、川井憲次の情緒的な旋律が重なり 合って不思議な静けさを湛える。監修は「攻殻機動隊」等で知られる映画監督の押井守が担当。 販売・問合せ/有限会社グラナーテ
(C)GRANATEN/MORI BUILDING
 
東京スキャナー
定価:\3,000(税別)
監修/押井守
“東京をスキャンする”をテーマにし、ほぼ全編ハイビジョン空撮の異色作。旧約聖書のソドムとゴモラをモチーフに神が上空に降りてきて東京の町を見下ろす、という神の視点で描かれている。しかし、同時にそれは偵察機による恐ろしいほど鮮明な映像世界でもあるという。自分の知らないところで上空から覗かれているかも知れないと思うと、恐怖を覚えずにはいられない異色作。
TOKYO SCANNER(C)2003 Mori Building Co.,Ltd. All Rights Reserved.
六本木ヒルズ内にて販売中
 
(C)2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD
Image Copyright (C) 2003 cafegroove inc. All Rights Reserved.