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| 斬新な映像表現を最新技術で実現したスペクタクル大作、オールスター・キャストで贈る華やかなミュージカル、巨額の予算を投じた歴史ドラマ、映像化不可能と言われ続けてきた名作小説の映画化…。美男美女が登場し、スケールも壮大、ロマンあふれるドラマが展開、派手な見せ場が数多く、新しい試みがもりもり満載というような、華やかな大作を賞賛する傾向にあるアカデミー賞だが、第77回アカデミー賞で、並みいる競合を抑えて見事作品賞に輝いた『ミリオンダラー・ベイビー』は、賞賛に値する秀作とはいえ、決して典型的なアカデミー好みの作品とは言えない。 |
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ここ数年の作品賞受賞作を見て みると、第76回 『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』 、第75回 『シカゴ』、第73回 『グラディエーター』、第71回 『恋に落ちたシェイクスピア』、第70回 『タイタニック』、第69回 『イングリッシュ・ペイシェント』、第68回 『ブレイブ・ハート』などなど、いかにもな大作がずらりと続く。では、なぜ『ミリオンダラー・ベイビー』は、『アビエイター』 『ネバーランド』 『Ray/レイ』といったアカデミー好きのする競合を抑えることができたのだろう。 まず第1には、当然ながら作品の見事な出来栄えにある。大作を抑えるには、作品自体に人の心を揺り動かすほどの深いテーマと時代性が必要。それらを巧みに取り込みつつ、社会性と娯楽性をバランス良く兼ね備えた作品だからこそ、会員たちを激しく魅了したに違いない。 ちなみに、これまで作品賞を獲得してきた地味系作品の代表格は以下の通り。 |
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このラインナップを見るだけで、『ミリオンダラー・ベイビー』がオスカー地味系作品の系譜の一部となっていることがおわかりだろう。
2番目の理由としては、今回の作品賞候補が、『アビエイター』 『Ray/レイ』 『ネバーランド』そして『サイドウェイ』そして『ミリオンダラー・ベイビー』と、いずれもテイストは違うものの、すべてが人間ドラマ系のものばかりだったということだ。そして、5作品中、3作が実在の人物を主人公にしたもの。このように似た作品が揃う場合は、監督の手腕や、演出の技が見比べやすくなるのだ。
もちろん、いずれの作品もノミネートされた時点で、その素晴らしさが実証されてはいるのだが、結果的に投票権を持った会員たちは素直に「好み」を主張できる。実在の人物の物語でもなく、華やかでもないが、心に染み入る物語を確かな演出で際立たせたという意味で傑出していたのが、『ミリオンダラー・ベイビー』だったということなのだろう。
前年のイーストウッド監督作 『ミスティック・リバー』も高い評価を得ていたのだが、対抗馬である 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』に圧倒された結果となったのは、誰もが知るところ。興行的にも大成功し話題も独占していたこの超大作のおかげで、同時期に公開した映画の関係者たちの多くは受賞をあきらめていたに違いない。
第3の理由として考えられるのは、アカデミーはクリント・イーストウッドが好きだということ。俳優としても輝かしい功績を残している彼のように、業界への貢献度が高く、仲間から尊敬を集める人物は、アカデミー賞ではとても有力なのだ。なぜなら、アカデミー賞を決めるのは投票権を持つ会員たちであり、会員の多くは、俳優、監督、プロデューサー、脚本家ら、実際に映画を制作している映画人、つまり同業者たちだからだ。その上、イーストウッドは、フィルムメーカーとしての才能も傑出している。となれば、アカデミーのお気に入りとなるのは当然のこと。監督業に乗り出してから22年、監督作品16本目にして『許されざる者』で監督として初めて第65回アカデミー賞に絡んだ後は、第76回に『ミスティック・リバー』が作品賞、監督賞にノミネート。『ミリオンダラー・ベイビー』では、2度目の作品賞、監督賞の受賞となる。 |
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| 実は、俳優としても高い評価を受けている人物が、監督としてアカデミー賞を受賞するケースはこれまでにもいくつかある。『普通の人々』のロバート・レッドフォードに始まり、『レッズ』のウォーレン・ベイティ、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』のケヴィン・コスナーらがそうだ。オスカー受賞についてさまざまな要因を語ったものの、彼らの作品を並べてみれば、まずは作品の魅力が一番の受賞理由なのだと一目瞭然。となれば、『ミリオンダラー・ベイビー』だって同じこと。実際に劇場に足を運んでみれば、きっとそう断言する理由がわかるはず! |
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