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もしサム・ライミが監督していなかったら、『スパイダーマン』は全く違う作品になっていただろう。ディープなファンは“全然違う”と批難し、一般大衆には“オタクの世界”とそっぽを向かれ、「そこそこヒット」はしたろうが、世界的大ヒットにはならなかったに違いない。サム・ライミが大成功した秘密は何か?
もちろん、それは「愛」である。


ティム・バートン
ガリガリの骸骨が、自分のしゃれこうべを首から取り外して弄ぶ――『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』のジャックの話じゃなく、サム・ライミの『死霊のはらわた』シリーズの1シーンだ。ティム・バートンとサム・ライミは感性がすごく似ていると思う。恐怖と笑いのバランスとか、ストップモーションアニメとか、アメコミへの偏愛ぶりとか。調べたらサム・ライミは1959年生まれで、ティム・バートンは1958年生まれ。同じ時代に同じものを見てたんだな〜と妙に納得するが、もちろん違いもある。
わかりやすいのは、もう一組の50年代生まれ監督、コーエン兄弟との関係だ。『死霊のはらわた』の製作に参加し、2人の作品『未来は今』ではサム・ライミが脚本執筆している。ディズニーのアニメーターだったティム・バートンは彼らと接点がなかったのかもしれないが、そうでなかったとしてもサム・ライミみたいに仲良くならない気がする。ティム・バートンの感性は、なんというか、ちょっとサミシくてどこか女っぽい。一方、サム・ライミはコーエン兄弟に近い。つまり暗さを描いてなおスコンと抜けた明るさがある。男の子っぽいのだ。
コーエン兄弟

『スパイダーマン2』でいちばん楽しかったのは、マシンのアームに体を乗っ取られたドック・オクが、担ぎ込まれた病院で大暴れするシーンだ。『ダークマン』が病院で目覚めるシーンに似てるし(そもそもロングコートに中折れ帽のドック・オクは、ダークマンそのもの)、『死霊のはらわた』よろしくチェーンソーが踊りまくる。恐怖シーンを壁に映った影で見せるのもクラシック・ホラー(ティム・バートンの短編『フランケン・ウィニー』にも似てる)みたいで、サム・ライミの趣味が全開だ。前作『スパイダーマン』で来日したときは「自分が監督に決まって怖くなった」と言っていたけれど、今度は思いっきり自由に撮れたんじゃないかな〜と思う。

インタビューでは「スパイダーマンの次に好きなヒーローは?」と質問したときのことをよく覚えている。「いろいろあるけど、DCコミックの『シャドー』かな」と彼は答えた。インタビュー前にアメコミを猛勉強した私は「あ〜、二丁拳銃の」と答えると「えっ! キミ、『シャドー』を知ってるの!?」と目をキラッキラ輝かせて身を乗り出した。何百億ドルもの予算で超大作を作った映画監督のくせして、そーゆー話になるとぜんぜん男の子。なんてカワイイ人! と、私はその場でファンになってしまった。ちなみに見た目は文系でシャイなラッセル・クロウ、しかも“クマちゃんのぬいぐるみ”って感じで、これまた妙にカワイイ。「僕は子供のヒーローになりたいから、タバコを吸ってる写真は撮らないでね」と言ったのも、メチャメチャ印象的だった。そうそう、ピーター・パーカー、あんな感じの男の子(40過ぎだけど)なのである。

文:渥美志保

 
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