「やっぱりワインは美味しいな」「いろんなスタイルがあるんだな」と感じて頂けるはず
浜田
さてワイン業界に話を移すと『モンドヴィーノ』はかなり議論を巻き起こしていますよね。取り方によってはワインビジネスの裏側を赤裸々に描いている部分もありますし。大谷社長は中立的な立場でご覧になってどう思われましたか?

大谷
前評判や批評があまりワイン業界にとっては良い評判ではなく書かれていた感があり、心配しました。ですから、きっとかなり多くのワイン業界の人がこの映画を観ていると思います。
この映画に登場するロバート・モンダヴィもミッシェル・ロランも、非常に素晴らしい作り手です。実際に美味しいワインを多く作り出しています。もちろん昔からの伝統との兼ね合いなどもありますが、モンダヴィも1966年から自分で始めて、何度も改域して今のスタイルになりました。そういう意味からすると良いワインを作っていることは事実なのです。
実際に作品を観て頂いて、内容を理解して頂ければ、「やっぱりワインは美味しいな」「いろんなスタイルがあるんだな」と感じて頂けると思います。ワインは飲んで美味しいし、もちろん身体にも良いものですから、きちっと捉えて観て頂ければ良いんじゃないかなと。

浜田
ハンバーガーもそうですが、いろんな世界で流通に受ける商品は叩かれますね。「とはいえワインってやっぱり美味しい」ということが、この映画は言いたかったんじゃないかなと思いますね。

大谷
クレタ島にある紀元前4000年の蒸留所に行ったことがあります。それよりもっと以前にエジプトなどでワインが作られていたという話もありますから、ワインは非常に歴史の長いものです。 ミッシェル・ロランなど様々な醸造家、ロバート・パーカーなど様々な批評家がいますが、やはり美味しいものは美味しい。その時代にあった流れを紹介され、生来のスタイルが良いと言う方もいれば、このワインが美味しいという方もいるでしょう。やはり批評家の声を基にして自分の舌で判断するのがワインの楽しさ。他人が何と言っても自分が美味しければいいわけですから、その辺りもご理解頂けるかなと思います。

浜田
作品では、古き良き物/新しき良き物。そして旧世界/新世界という描き方もされています。どちらが良いという話ではありませんが、この映画をご覧になって、そういった部分をどう比較されましたか?

大谷
清酒もそうですが、昔からの良さを残して伝統を守っているところもあれば、例えば飲みやすさを重視したワイン作り、ステンレスタンクを使う、それを融合して美味しいワイン作るなどもあります。今回DVD-BOXとしてご紹介させて頂いた古いワインのほかにも、シャプティエのパーセレールなど若くても美味しく飲めるワインもあります。なかなか難しいですね。

浜田
飲み手としてはどうですか?

酒匂

飲み手としては単純に美味しいワインを安く頂ければいちばん嬉しいなと思います。(笑)
映画を観ても分かりますが、いろいろな作り手が世界中にいて、いろいろなワインが世界中にあり、いろいろな葡萄の種類がある…自分の知識は本当にごく僅かで、だからこそ余計に“あれも飲みたい”“これも飲みたい”と。飲むたびに新鮮な感動があることは、ワインの素晴らしいところだと思います。
私もミッシェル・ロランが作ったワインはとても好きですが、それがすべてではない。かといって自然派がすべて良いかというとそうでもない。ワインを作られている方々が皆さん努力して、新しい製造方法に挑戦したり、そういったストーリーを聞くとすごく感動します。そして飲ませて頂くとさらにそれが口の中で蘇る。そのときの感動というのは、やっぱりワインの本当の素晴らしさですね。そこが私にとっては魅力的で、毎回毎回違ったワインを飲んでみたいなと思っています。

大谷
ワインは葡萄の良さから来ていますが、作り手の力で、樽の問題や醸造技術によっても良くなります。僕としても美味しいワインを安く飲めるのがいちばんですね。(笑)
以前、500円のワインを販売して日本のワイン文化の底辺を広げることが出来ました。安くても美味しいワインを飲んで頂ければ、それをもとにしていろんな楽しみを知って頂ければと思います。ワインには様々なスタイルがありますし、伝統も大事ですがたくさんの要素もあります。ワインはほぼ世界中の国々で生産することが出来て、また多くの国で楽しむことが出来るのです。

酒匂

どんな生産農家も、日々努力を怠ると美味しいものが出来ないということですよね。

大谷
あとは自然ですね。天気が悪ければ良い葡萄が育たない、すると美味しいワインが出来ない。

酒匂

そこがまたワインの魅力ですよね。同じ醸造家で同じところであっても、年度によって味わいがまた違う。ここにちょうど私の生まれ年、1961年がありますが、実際に目の前にするとどうしても手に入れたい、一度飲んでみたいと思ってしまう。そういう楽しみ方はワイン独特のもので、奥が深いなと思います。

浜田
作品のなかでいちばん印象的だったのは、例えばいま1945年のワインを空けてもこのワインに関わった方々は既に亡くなっているということ。そして昔のワインは20年後、30年後をあらかじめ視野に入れて作っているという、ヨーロッパ的な作り方が良いところだと思います。とても感銘を受けますね。

大谷
ボルドーもやはり非常に保ちますが、以前ブルゴーニュに行ったときには1929年のワインを飲ませてもらいました。ちょうど世界恐慌の時だな、などと思いながら頂きました。それなりに飲めますよね。

浜田
今回の『モンドヴィーノ』DVD-BOXではスーパー・ヴィンテージを4本揃えています。こんなところ(撮影場所)に置いていてはいけないほど貴重なワインですね。それと対極的に新しいワインがあって、今すぐに空けても香り豊かなものもある。ワインの楽しみ方は両方あって良いのではと思います。500円ワインから始めて、いつか1万円位のワインを食卓に並べてみる。

酒匂

映画のなかでもグローバリゼーションが取り上げられていますが、“ワイン=高価で誰もが飲めないもの”というイメージは崩れてきているかなと。安くて美味しいワインもたくさんありますし、それを毎日でも楽しみたいという志向は、日本人も変わってきたなと思います。それをバックアップしているのがカリフォルニアの醸造家であり、アメリカやチリ、アルゼンチンなど新世界と呼ばれている国々で盛んにワインが作られていること。かつては無かったことですが、それらがワイン世界を豊かなものにしているんだなということが、映画を観ても分かりますね。

浜田
ワインの作り手の現状はどう変化してきているのでしょうか?

大谷
やはり研究されていますよね。3〜4年前にはオーストラリアのワインの作り手が東欧へ行って修行したり、ロランも世界中を回って指導しています。そういった「努力して良い物を作ろう」というバックボーンの上に成り立っていますね。


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