友達にモルトウィスキーが大好きな男がいて、そいつがモルトを語るとあまりにうまそうで試してみるのだが、ピート臭がはなにツーンとくるだけで、その真髄を知ることができない。他人が絶賛するものの良さがわからないのは人生損をしている気がして、妙に悔しいのだ。私は遺伝的にお酒が弱い。奈良漬でベロンベロンになる母を持つ女なんです。
最近の"悔しい"はワインである。これは落ち葉の香りですね、プラムとイチゴの酸味がありますよなんて言われれば、ふんふん確かにそんな味と香りがしますねとは思うけれど、家でひとりで飲みたいとまでは思わない。一番のきっかけは"グルジアのジャック・タチ"ことオタール・イオセリアーニ監督の『素敵な歌と舟はゆく』だ。舞台はパリ郊外のお屋敷で、奥さんは慈善活動に夢中の社交家、だんなはそんなの一切興味なしのハッピーな飲んだくれ。ぼろをまとってそのへんの路上生活者と歌うたいながら1日中ワインをがぶがぶ飲んでいて、奥さんに責められてもへらへらっとしている。そしてラストにはわずらわしい日常よサヨナラ〜とばかりに、屋敷の裏の川から船出してしまうのだ。舟に積み込んだのは山盛りのワインボトルだけ。陽気でユルくてスーダラ。それが私の中でワインと直結した瞬間である。あとこの映画が好きになった理由は、コウノトリが出てくること。見たことある? すっげーデカくてビックラよ、子供くらいならマジで運べちゃうんだから。
霊長類ヒト科最強映画ライター
渥美志保