これまで恐怖の象徴として、または紳士的に色香を放つ危ういセクシャルなイメージとして描かれてきた“ドラキュラ”。そんなドラキュラをテーマとした作品『ドラキュラZERO』が今秋公開される。
本作で描かれるドラキュラは、もちろん恐怖の側面もあり、主演を『ホビット 竜に奪われた王国』などで知られる色男ルーク・エヴァンスが演じているので色香も持ち合わせている。しかし、最も印象的なのは“悪にして、英雄”という2つの顔だ。
そもそもドラキュラの物語は、ファンタジーの産物ではなく、15世紀半ばにトランシルヴァニア地方を納めた君主ヴラド・ドラキュラのお話。つまり、実在した英雄の物語だ。
彼の国は、当時驚異的な力で次々と隣国を征服していったオスマン帝国から侵略を受けることとなる。帝国に忠誠を誓う証として、国民を、そして愛する息子を皇帝に差し出せ、と命が下る。賢い君主ならば…苦悶の表情を浮かべながら、いざ息子を引き渡す瞬間。彼は我に返る――「愛する者を守りたい」と。
もちろん皇帝は憤慨し、早々に軍隊が差し向けられる。ヴラドは幼少期から鍛え上げられ、“串刺し公”と恐れられた戦士だったが、相手は数千・数万倍の兵力を誇る大国。もちろん多勢に無勢だ。たった一人でも大軍勢に勝てる力が必要だ…その時、彼の脳裏によぎったのは、山奥の洞窟に巣食う闇の力を持つ者の存在。
そうして彼の血を啜り、悪魔の契約を交わしたヴラド。100人の男にも匹敵する力と、闇を切り裂かんばかりに駆け抜ける強靭な肉体を手に入れたが、その代償は思った以上に大きかった。まず、日光を浴びると体が蒸発してしまう、そして最も彼を苦しめるのは血への渇望だ。守るべき妻や国民たちの首筋に波打つ血管を見るたび、激しい“渇き”が彼を襲い続けるのだ。
そして女子向けポイントを挙げるならば、「飲みたいけど…ダメ!」という葛藤と苦悶、この矛盾を繰り返すルークの表情はまさに絶品。しかし、最大の見どころとなるのは、どこまで「英雄(理性)が悪(本能)を抑えていられるか?」だろう。
「英雄であるために、悪に身を落とした」というこの矛盾。国民を守るために自ら前線で戦う君主の顔、息子を抱きしめる父としての顔、妻を愛する夫としての顔、その一方で、裏側には血に飢えた悪魔の顔が潜んでいる。悪に身を浸しながら高潔な魂を貫く、ヴラドの激闘・決断に注目してほしい。
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劇場公開日 2014年10月31日
©2013 Untitled Rick Howard Company LLC All rights reserved. Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
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