※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

彼らが本気で編むときは、

この画像は保存できません

INTERVIEW生田斗真

俳優・生田斗真の演技の幅広さに驚かされる。『彼らが本気で編むときは、』で彼が演じるのは、トランスジェンダーの女性リンコ。見た目はどこからどう見ても格好いい生田さんだが、女性らしい美しさとなるとハードルは上がる。荻上直子監督からは「リンコをきちんと女性として見せたい」と言われ、生田さんは外見も中身も美しいリンコとなり、この映画のなかで生きた。

「リンコ役の話をもらったときは、うわぁ大変な役がきたなって思いましたけど、同時にどうやって演じようか考えていて…だから僕のなかで“やらない”という選択肢はなかった。たじろぎはしたけれど迷いはなかった。それに大変だなぁと思う作品こそ火事場の馬鹿力が出るものなんですよね」。

役作りとしては“知る”ことから始まった。LGBTといっても人それぞれ。テレビで活躍するオネエ系の人たちもいれば、容姿や声はそのままの人もいる、性別適合手術をして全身変えている人もいる。そういった(何人かの)人たちに話を聞きながら生田さんがリンコを演じるために取り入れたのは、髪型や衣装のこだわりはもちろん、女性としての仕草や居方。声のトーンも「こんなに声を研究したのは初めてですね」というほど、悩んで、試して、あのリンコの声にたどり着いた。

「仕草や居方については日本的なことも参考にしました。舞踊とか歌舞伎の女形にヒントがたくさんあって、どこか古風な女性を目指したというか…。編み物をすることも大きかったです。ただ僕は本当に無器用だし編み物をやったことはなかったので、早い段階から先生に教えてもらったんです。最初、あまりにもできなくて愕然としましたね。手はつるし、できないから楽しくないし(苦笑)、毎日家で練習しました。荻上監督はワンカットで撮影することが多いというのを耳にしていたので、セリフを言いながら、演じながら、手元を見ずに自然と編める──そのくらいできるようにならなきゃいけないと思って。最終的にはとても速く編めるようになりました(笑)」。

リンコが編んでいるのはある形をしたもので、それを彼女は「アタシの煩悩」だと言う。悔しいことがあるたびに煩悩を編み、ある数に達したときに叶えたいことがあった。リンコはそんなふうに悔しさや怒りを編み物に込めているが、生田さんは?

「僕も日々のなかで溜息をつきたいときはありますよ。でも、プライベートで怒りを感じることはあまりないですね。あったとしても持ち越さない。お酒を飲んでやり過ごします(笑)」。

また「生田斗真とリンコのスイッチのオンオフは急には無理だ…」と、この映画の撮影中はなるべくスカートを履くようにしたり、ほかの仕事が入らない限りネイルもしたままで生活していたと明かす。そうすることで新たな発見もあった。

「理にかなっていると思いました。ネイルの色が剥がれないように気をつけていると手の動きが丁寧になるんです。たとえばコップの持ち方とか。リンコを演じるにはこういうことを日常化していかなければならないんだなと。最初はどうしたら女性に見えるか身体の動きばかりを気にしていたけれど、ある日、荻上監督から“現場に入るときからリンコちゃんでいてください”って。スタッフが“この女性を綺麗に撮りたい! と思わせたいので、絶対に生田斗真で入ってこないでください”と。そこからは、現場に入るときからリンコでいるようにしたというか、静か(おしとやか)にしていました(笑)。あと、トモの前では男が出ないように、男を感じさせないようにしていましたね」

トモはリンコの恋人マキオ(桐谷健太)の姪。母親が家出してしまったため、叔父であるマキオの家で暮らすことになる。最初はリンコがトランスジェンダーの女性であることに戸惑いつつも徐々に仲良くなり、まるで母と娘のような関係になっていく。そのなかで生田さん自身もリンコを通して自分のなかの母性を感じた。

「自分のなかの母性と出会う瞬間が…あったんですよね。トモとマキオとリンコの3人が川の字になるシーンで、トモが寂しくてリンコの布団に入ってきて(リンコの)おっぱいをもみもみして、リンコはトモを抱きしめる。何とも言えない不思議な気持ちになりました。なんだ、この感情は…と。愛おしくて胸が苦しくて、これが母性なのか…と。ほかにもトモの同級生カイの母親(小池栄子)とスーパーでばったり会って、差別的なことを言われるんですが、その帰り道にトモの方から手を握ってくれるシーンは涙が出てくるほど嬉しかった。トモにとってリンコは叔父さんの家にいる変わった人だったのに、どんどん心を開いてくれて頼ってくれるようになる。嬉しかったですね」。何をもって家族というのか、家族の定義を考えさせてくれる映画でもある。

そんな荻上監督作は「ワンカットで撮ることが多い」と生田さんが言うように、クライマックスに印象的な長回しシーンがある。荻上監督が好きだという橋口亮輔監督作『ハッシュ!』のラストシーンへのオマージュとも言える描き方だ。

「長回しで、しかも引きで撮るというのは、僕としては久々。その緊張感がドキドキしていいなぁと。荻上監督はカメラの横で演技を見てくれる監督で、そういうタイプの監督と仕事をするのは『人間失格』の荒戸源次郎監督以来。荻上監督は俳優の演技を生で見ないと芝居の善し悪しが分からないからカメラの横にいるのだと言っていましたけど、それが長回しとなると役者としてはより緊張感が増します。クライマックスのそのシーンは積み上げてきた積木を崩す瞬間でもあって──引きで撮る、全体の画で見せる、なんて格好いいんだろう! 男前だなって。僕だったら全員の寄りの画が欲しくなると思うのに(笑)。ものすごく映画らしい現場でした」。
text:Rie Shintani

映画『彼らが本気で編むときは、』

優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコ(生田斗真)と、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ(桐谷健太)。そんなカップルの前に現れた、愛を知らない孤独な少女トモ(柿原りんか)。桜の季節に出会った3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日。小学生のトモは、母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、いつものように叔父であるマキオの家に向かう。ただ以前と違うのは、マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。リンコの美味しい手料理や母親が決して与えてくれなかった家庭のぬくもりとトモへの愛情…。最初は戸惑うトモだったが、リンコのやさしさに閉ざした心を少しずつ開いていくのだった。本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、自分らしさと本当の幸せを教えてくれた。嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3人が本気で編んだ先にあるものは…。

脚本・監督:荻上直子
キャスト: 生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子
オフィシャルサイト:http://kareamu.com/
© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

2017年映画界で活躍した“女性監督”総ふり返り! 来年注目の女性監督作品は? 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

2017年映画界で活躍した“女性監督”総ふり返り! 来年注目の女性監督作品は?

「女性の年」ともいわれた2017年、世界中で大ヒットした『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』でカンヌ監督賞に輝いたソフィア・コッポラ、『光』で日本人監督最多

生田斗真&桐谷健太、2人仲良く『ラ・ラ・ランド』ごっこ 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真&桐谷健太、2人仲良く『ラ・ラ・ランド』ごっこ

体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーを題材にした『彼らが本気で編むときは、』の大ヒット御礼舞台挨拶が3月7日(火)、都内で行われ、生田斗真、桐谷健太、荻上直子監督が出席した…

生田斗真、ベルリンから凱旋!女性を演じきり「頑張って良かった」 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真、ベルリンから凱旋!女性を演じきり「頑張って良かった」

俳優の生田斗真が2月25日(土)、都内で行われた主演作『彼らが本気で編むときは、』の初日舞台挨拶に、共演した桐谷健太、柿原りんか、荻上直子監督とともに出席した…

【今週末公開の注目作】『ラ・ラ・ランド』『素晴らしきかな、人生』ほか 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

【今週末公開の注目作】『ラ・ラ・ランド』『素晴らしきかな、人生』ほか

豪華キャストが集結! すべての人に捧げる今年一番の人生賛歌ムービーや、“夢追う2人の恋の物語”に思わずうっとり!『セッション』の監督が贈る最新話題作など、注目作が目白押しの今週末の作品

【インタビュー】生田斗真 女性として生きる――母性と出会う瞬間「愛おしくて苦しくて」 画像

【インタビュー】生田斗真 女性として生きる――母性と出会う瞬間「愛おしくて苦しくて」

俳優・生田斗真の演技の幅広さに驚かされる。『彼らが本気で編むときは、』で彼が演じるのは、トランスジェンダーの女性リンコ。見た目はどこからどう見ても格好いい生田さんだが…

生田斗真&荻上監督、『彼らが本気で編むときは、』から“当たり前”のLGBTを語る 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真&荻上監督、『彼らが本気で編むときは、』から“当たり前”のLGBTを語る

生田斗真がトランスジェンダーの女性を演じ、「第67回ベルリン国際映画祭」でも絶賛を受けている『彼らが本気で編むときは、』。本作のメガホンをとった映画監督・荻上直子と、主演の生田さん、生田さん演じる

生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』ベルリンで快挙!最高峰のLGBT賞を受賞 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』ベルリンで快挙!最高峰のLGBT賞を受賞

生田斗真、桐谷健太、荻上直子監督が組み、“本気”の熱情を見せた意欲作『彼らが本気で編むときは、』。現在開催中の第67回ベルリン国際映画祭においてパノラマ部門、ジェネレーション部門の2部門に選ばれる快挙

生田斗真、ベルリン国際映画祭に参加!英語で挨拶「本当に光栄」 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真、ベルリン国際映画祭に参加!英語で挨拶「本当に光栄」

「第67回ベルリン国際映画祭」にてパノラマ部門、ジェネレーション部門の2部門に選出された『彼らが本気で編むときは、』が、この度現地時間2月15日(水)にプレミア上

生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』荻上監督がつくり出す世界観に注目 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』荻上監督がつくり出す世界観に注目

生田斗真を主演に桐谷健太、ミムラ、田中美佐子、門脇麦ら豪華キャストを迎えた5年ぶりの最新作『彼らが本気で編むときは、』が、まもなく2月25日(土)より全国公開される荻上直子監督。荻上作品といえば、『かもめ食堂』

桐谷健太&神木隆之介&菅田将暉&佐々木蔵之介、最強の“メガネ男子”は誰!? 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

桐谷健太&神木隆之介&菅田将暉&佐々木蔵之介、最強の“メガネ男子”は誰!?

『シン・ゴジラ』『君の名は。』など、歴史的大ヒットが生まれた昨年の日本映画界。2017年は『3月のライオン』や『銀魂』といった大人気漫画の実写化作品から、『かもめ食堂』『めがね』などで知られる荻上直子監督による

生田斗真、女性役に手応え「母性あふれ出た」 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真、女性役に手応え「母性あふれ出た」

俳優の生田斗真が1月18日(水)、都内で行われた主演作『彼らが本気で編むときは、』の完成披露試写会に出席。体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーを題材にした本作で女性を演じ「自分の中から、母性があふれ出た」と手応えを示した…

映画で知るLGBT… 『ストーンウォール』『彼らが本気で編むときは、』ほか連続公開 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

映画で知るLGBT… 『ストーンウォール』『彼らが本気で編むときは、』ほか連続公開

年末から2月にかけて、さまざまな視点からLGBT (レズビアン/ゲイ/バイセクシャル/トランスジェンダー)について描いた作品が続々と公開される。LGBTをテーマにした映画は近年増加し、『キャロル』や『チョコレートドーナツ』

【ご招待】生田斗真&荻上監督登壇『彼らが本気で編むときは、』試写会に15組30名様 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

【ご招待】生田斗真&荻上監督登壇『彼らが本気で編むときは、』試写会に15組30名様

〆切り:12月21日(水)

生田斗真扮する“リンコ”が公開!桐谷健太と愛を編む『彼らが本気で編むときは、』予告編 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真扮する“リンコ”が公開!桐谷健太と愛を編む『彼らが本気で編むときは、』予告編

生田斗真演じるトランスジェンダーの女性を主人公に、『かもめ食堂』『めがね』などの荻上直子監督が5年ぶりに手がける最新作『彼らが本気で編むときは、』。このほど、「ゴスペラーズ」による「True Colors」にのせ、劇中のシーンが初めて明かされる予告編

「ゴスペラーズ」、生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』のイメージソングに 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

「ゴスペラーズ」、生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』のイメージソングに

主演の生田斗真が、トランスジェンダーの元男性役を務める映画『彼らが本気で編むときは、 』。この度、本作のイメージソングを「ゴスペラーズ」が担当することが明らかになった。

生田斗真、“元男性”リンコの姿が公開! 『彼らが本気で編むときは、』 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真、“元男性”リンコの姿が公開! 『彼らが本気で編むときは、』

『かもめ食堂』『めがね』などを手掛け、その世界観から女性に圧倒的人気を持つ荻上直子監督がメガホンをとり、生田斗真主演で贈る『彼らが本気で編むときは、』。

田中美佐子&門脇麦、生田斗真を支える存在に『彼らが本気で編むときは、』キャスト発表 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

田中美佐子&門脇麦、生田斗真を支える存在に『彼らが本気で編むときは、』キャスト発表

生田斗真がトランスジェンダーの女性役、桐谷健太がそのパートナー役を演じることでも話題の、『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子監督作『彼らが本気で編むときは、』。このほど、本作にミムラ、田中美佐子、小池栄子、りりィ、門脇麦

生田斗真、女性役を熱演!『かもめ食堂』荻上直子監督最新作で新境地に挑む 画像
シネマカフェ編集部
シネマカフェ編集部

生田斗真、女性役を熱演!『かもめ食堂』荻上直子監督最新作で新境地に挑む

『かもめ食堂』『めがね』などを手掛ける荻上直子監督の5年ぶりとなる最新作『彼らが本気で編むときは、』が製作決定、来年公開決定したことが分かった。

    Page 1 of 1
    page top